自宅で手軽にリラックス効果を得る方法として人気のアロマセラピー。実は、このアロマセラピーには、「リラックス」以外にもさまざまな効果があります。
この記事では、アロマセラピーに期待できるさまざまな効果や、それらの効果がもたらされる仕組みを解説します。また、ご家庭でアロマセラピーを実践する方法や、エッセンシャルオイル(精油)の選び方もご紹介します。アロマセラピーに挑戦してみたいという方は、ぜひ参考になさってください。
アロマセラピーとは?
はじめに、「アロマセラピー」の定義とその歴史を確認しておきましょう。
アロマセラピーとは
アロマセラピーは、日本語では「芳香療法」と訳されます。アロマセラピーとは植物の香りを用いて心身の健康を促す療法のことで、中でも特に、エッセンシャルオイルを用いる療法のことを指すのが一般的です。
アロマセラピーの普及・調査・研究に努める「公益社団法人日本アロマ環境協会」では、アロマセラピーを「植物から抽出した香り成分である『精油(エッセンシャルオイル)』を使って、美と健康に役立てていく自然療法」と定義しています。
広義には、スパイスの香りで食欲をかきたてたり、コーヒーの香りで目を覚ましたりすることも「アロマセラピー」に含まれることがありますが、この記事では、エッセンシャルオイルを用いる狭義のアロマセラピーについて解説します。
アロマセラピーの歴史
植物の香りを生活に取り入れ、健康に役立てるということそのものは、世界の至るところで、古くから行われてきました。日本でも、香りの強い植物を「香薬」と呼び、薬の原料に用いていた歴史があります。
心身の治療を目的としたアロマセラピーの研究は、20世紀初頭、フランスで始まったと言われています。「アロマセラピー」という言葉も、このときに生まれました。薬が不足していた第二次世界大戦中には、エッセンシャルオイルが治療薬として広く用いられました。
アロマセラピーの研究が進んだ現代では、さまざまな場面でアロマの力が活用されるようになりました。健康増進やリラクゼーションだけでなく、美容、介護、医療の現場でも、アロマセラピーが用いられています。
アロマセラピーの効果と仕組み
次に、アロマセラピーが私たちの心身にもたらす効果を見ていきましょう。また、アロマセラピーがそれらの効果をもたらす仕組みについても解説します。
アロマセラピーの効果
アロマセラピーは、私たちの心と身体にさまざまな効果をもたらします。用いるエッセンシャルオイルによっても異なりますが、アロマセラピーで得られる主な効果には、次のようなものがあります。
- 昂ぶった神経が静まり、リラックスできる
- 消化が促進され、食欲が湧く
- 免疫の働きが強まり、活性化される
- 睡眠の質がよくなる
- ホルモンバランスが整う
- 健康で美しい肌を保てる
- 肩こりが緩和される
- 認知症予防効果が見込める
ご覧の通り、アロマセラピーは、精神面・身体面の両方に効果があります。また、現在起きているトラブルを解決するだけでなく、将来のトラブル予防として使うこともできます。アロマセラピーには、非常に幅広い効果があるのです。
アロマセラピーの仕組み
アロマセラピーで用いるエッセンシャルオイルがどのように効果をもたらすのか、私たちの体内での働きを見てみましょう。
まず、エッセンシャルオイル内の香り分子が鼻腔を通り、鼻の中で受け取られた香り情報が電気信号となって脳に送られます。脳の中枢部である大脳辺縁系が香りの情報を判断し、感情や記憶を呼び起こします。さらに香りの情報は、自律神経系や内分泌系をつかさどる視床下部や下垂体に伝わり、ホルモンの分泌が促されます。これによって、リラックス効果や幸福感、痛みを緩和する効果などがもたらされます。
香り分子は、そのほとんどが呼気とともに吐き出されてしまいますが、中には肺に到達する分子もあります。その結果、香り分子は体液や血液の中に取り込まれ、血流などの体液循環に乗って全身を循環します。エッセンシャルオイルに含まれる分子は非常に小さいので、身体のすみずみまで浸透して、さまざまな器官に働きかけてくれます。アロマセラピーにおいてマッサージを併用すると効果的なのは、血行を促進することで、香り分子の働きをさらに促すからです。
効果的なアロマセラピーの実施方法
それでは、実際にご家庭でアロマセラピーを実施する方法や、エッセンシャルオイルの選び方をご紹介します。
アロマセラピーのやり方
ご家庭でアロマセラピーを行う方法はいくつかあります。ここでは、3つの方法をご紹介しましょう。
【お部屋に香りを広げる】
エッセンシャルオイルの成分をお部屋に広げて、香りを楽しみ、心身のバランスを整える方法です。「芳香浴法」と呼ばれるこの方法のうち、最もお手軽なのは、ティッシュやハンカチにエッセンシャルオイルを1〜2滴垂らし、枕元やデスクに置くというものです。
また、エッセンシャルオイルの香りを拡散する器具「アロマディフューザー」を使ってもよいでしょう。さまざまなアロマディフューザーが販売されており、中には加湿器機能やタイマー機能が付いたものもあります。お部屋の広さや使用シーン、デザインなど、自分に合ったものを選びましょう。
【お風呂にオイルを入れる】
お風呂タイムにアロマでリラックスする方法もあります。お風呂に適温のお湯をはり、そこにエッセンシャルオイルを数滴垂らして浸かるというものです。
エッセンシャルオイルの量は、全身浴であれば1〜5滴、半身浴や足湯など部分的に浸かる場合は1〜3滴を目安にしてください。お肌に刺激や異常を感じた場合は、すぐに水かお湯で洗い流すようにしましょう。
【アロママッサージを行う】
少し手間はかかりますが、ご自宅でアロママッサージを行うこともできます。血行が促進されることで、さらなる効果が期待できる方法です。
エッセンシャルオイルは、そのままではマッサージオイルとして使えないため、希釈する必要があります。ホホバオイルやスイートアーモンドオイルなどの植物性オイルをベースに、エッセンシャルオイルを濃度1%以下になるように混ぜて、マッサージオイルを作ります。このマッサージオイルを手のひらにつけて、身体をマッサージしましょう。オイルを直接肌に付ける方法なので、敏感肌の方は、事前にパッチテストを行うと安心でしょう。
エッセンシャルオイル(精油)の種類と選び方
エッセンシャルオイルにはたくさんの種類があります。ここでは、香りの特徴にしたがって7つのタイプに区分してご紹介します。それぞれのタイプに異なる特徴がありますので、気分や体調に合わせて選ぶのがおすすめです。
【フローラル系】
花から抽出したオイル。長持ちする香りが多く、幅広いシーンに活用できます。優しい香りの中でリラックスしたいときに使うのがおすすめです。
(カモミール、ジャスミン、ネロリ、ラベンダーなど)
【シトラス系】
柑橘系の果皮から抽出したオイル。親しみのある香りが多く、初心者にも使いやすいです。明るく前向きな気持ちになりたいときに用いるとよいでしょう。
(オレンジ・スイート、グレープフルーツ、マンダリン、レモングラスなど)
【ハーバル系】
ハーブの花や葉から抽出したオイル。清涼感があるので、眠気を抑えたいときや、すっきりリフレッシュしたいときにおすすめです。
(スペアミント、セージ、ペパーミント、ローズマリーなど)
【ウッディ系】
樹木の皮や葉、小枝から抽出したオイル。森林浴をしているときのような、フレッシュなリラックス感を得たいときに使ってみてください。
(シダーウッド、ジュニパー、ヒノキ、ユーカリなど)
【オリエンタル系】
エキゾチックな香りを持つオイルです。香りの力を借りてムードを高めたいときにおすすめです。
(イランイラン、サンダルウッド、パチュリーなど)
【スパイス系】
スパイスから抽出したオイルです。ピリッとシャープな気分になりたいときに用いるとよいでしょう。
(カルダモン、クローブ、コリアンダー、シナモンなど)
【樹脂系】
木の樹脂から抽出したオイルです。重厚感があり、長持ちするものが多いので、気持ちを落ち着けたいときにぴったりです。
(フランキンセンス、ベンゾイン、ミルラなど)
合成オイルに注意!
アロマセラピーで使う「エッセンシャルオイル(精油)」は、基本的に、100%天然の植物に由来するオイルです。これとは別に、香りだけを天然精油に似せた合成オイルが「アロマオイル」という名前で販売されていることがあります。お部屋で香りを楽しむ分には、合成香料であっても問題ありません。しかし、エッセンシャルオイルの持つ効果・効能を期待するのであれば、天然の植物に由来するオイルを利用する必要があります。
アロマセラピーに植物由来の効果を求める場合は、パッケージの表記をしっかりと確認し、天然植物から作られた製品を購入するようにしてください。日本で100%天然由来のオイルを購入するなら、「エッセンシャルオイル」または「精油」と明記されたものを選ぶようにするとよいでしょう。
まとめ
エッセンシャルオイルを用いて、その成分を美と健康に役立てる療法であるアロマセラピーは、私たちの心と身体にさまざまな効果をもたらしてくれます。
お部屋に香りを広げたり、お風呂にオイルを垂らしたりと、アロマセラピーを簡単に取り組む方法は複数あります。また、植物由来のオイルであるエッセンシャルオイルには、たくさんの種類があります。そのときの気分や体調にあった方法と香りを選んで、毎日の健康な生活に役立てていきましょう。