親にとって子どもは、かわいくてとても大切な存在。だからこそ、子育てをする上で、さまざまな悩みを抱えてしまいがちです。
中でも、「子どもがなかなか言うことを聞いてくれない」という悩みを抱える親御さんは少なくないのではないでしょうか。また、「本当は子どもの主体性を尊重したいのに、いつも叱りつけてしまう」という方もいらっしゃるでしょう。親子がスムーズにコミュニケーションを取るのは、案外難しいことなのです。
そこで本記事では、NLPという心理学の手法を取り上げ、子育てに活かす方法をご紹介します。わがままへの対応や才能を伸ばすための手立てなど、今すぐ使える具体的な技法についても解説しますので、お子様とのコミュニケーションにお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
NLPを学ぶ、それは子どもとのコミュニケーションの在り方を見直すということ
NLPとは、「Neuro Linguistic Programing(神経言語プログラミング)」の頭文字を取った言葉です。またの名を「実践心理学」「脳と心の取扱い説明書」と言うNLPは、ごく簡単に言えばコミュニケーションについての学問・スキルで、相手に気づきと変化を与え、望ましい結果へと導くことを目的としています。
1970年代に活躍した偉大な3人のセラピストのコミュニケーションモデルをもとにして考案されました。このスキルは、はじめのうちはカウンセリングやセラピーの場で用いられましたが、次第にビジネスや教育の場面でも活用されるようになり、今となっては、演説のスキル向上などを目的に政治家までもがNLPを学ぶようになりました。
NLPについて、詳しくは以下の記事をご参照ください。
NLPとは何?成り立ちやメリット、生活で生かせる具体例を紹介
NLPは相手に変化を与え、ある結果へと導くスキルですが、それは相手を意のままに操って言うことを聞かせる技術ではありません。あくまでも、コミュニケーションの相手が持つ世界観を尊重するための技術なのです。
したがってNLPを教育に活かす際にも、子どもの世界を尊重することが大前提です。NLPは親としての在り方を見直すためのスキルなのであり、子どもをコントロールするテクニックではありません。
たとえば、子どもが言うことを聞かないときに、聞き分けがないといって子どもを怒るのではなく、「自分のコミュニケーションの在り方に問題があったのではないか?」と内省するのがNLPのやり方です。「言うことを聞かない」という相手の反応こそが自らのコミュニケーションの成果だと自覚して、改善していくのです。
またNLPでは、相手が否定的な言動を取ったとき、その表面的な否定性の中に、相手の肯定的意図を見いだすことも重要視します。たとえば、何度言い聞かせても子どもが乱暴な言葉を使ってしまうときには、「この子は乱暴な言葉を使うことで、何を得ようとしているのだろう?」と考えます。そして、「違う手段を用いて、この子が得たいものを得させてやることはできないだろうか?」という視点で子どもと向き合うのです。
こういった考え方を基本として子どもと向き合うことで、よりスムーズなコミュニケーションを取ることができます。そして、親子双方においてストレスの少ないやりとりができるようになるのです。
NLPのコミュニケーション技法を子育てに活かす
それではここで、先述のようなNLPの考え方をもとにした具体的な技法をご紹介します。子育てにおける3つのシチュエーションを想定して、子どもへの対応を考えていきましょう。
子どもがわがままを言ってきたら?
先ほどご紹介した「肯定的意図」の考え方を活かします。子どもが否定的な言動を取るときには、そこに何か自分にとってのメリットがあるから、そうするのです。
そこでまず、「この子は、どういうメリットを望んでわがままを言っているのだろう?」と考えましょう。もしかすると子どもは、自分を気にかけてほしいのかもしれません。ずっと寂しい気持ちを抱えていて、「叱られる」という形でも良いから、親とコミュニケーションを取りたいのかもしれません。または、周囲からの注目を集めたいけれど、何をすれば良いのかわからず、とりあえずわがままを言ってみたという可能性もあります。
肯定的意図は、子どもひとりひとりによって異なります。その子なりの意図を汲み取ろうと努めてみてください。このとき、「どうしてわがままを言ったの?」と問いただすのではなく、「本当はどうしたかったの?」と尋ねるほうが効果的です。このように親が向き合ってくれるというだけで、子どもの心はずいぶん満たされるはずです。
子どもに○○○をしてもらいたかったら?
「道路ではゆっくり歩いてほしいが、いつも走り回る」など、「子どもに◯◯◯をしてほしいが、なかなかやってくれない」ということはよくあります。このような場合、「歩かないとケガするよ」などと、つい否定的な言葉で行動の動機づけをおこなってしまうことがありますが、これはあまり効果的ではありません。
そこでおすすめしたいのが、肯定的な言葉による動機づけです。上述のケースであれば、「歩いても間に合うから、ゆっくり行こうね」などと語りかけてみましょう。「〜してみよう」という言葉は子どもにとって受け入れやすく、行動が変わることが期待できます。
「真面目に勉強をしてほしいのに、ゲームばかりする」という場合はどうでしょう。このような願望を抱いているときには、ご自分の生活を振り返ってみましょう。親自身は、普段の生活の中で勉強をしていますか? また、その姿を子どもに見せているでしょうか? 子どもだけに行動の変容を求めるのではなく、まずは親自らが変わることによって、子どもの行動や態度にも変化が望めます。
子どもの才能を伸ばしたかったら?
子どもの才能を伸ばしてあげたいと願う場合、まずは、子どもがすでに持っている長所に目を向けましょう。親のほうから何かを強制するのではなく、あくまでも子どもの自主性や世界観を尊重しようと努めてみてください。「親が子どもを変化させるのではなく、子どもの主体的な変化を親が受容するのだ」と捉えることで、子どもの良いところや才能に気づけるようになるでしょう。
まとめ
NLPの考え方は、コミュニケーションを円滑にするのに役立ちます。はじめはカウンセリングやセラピーの現場で生まれましたが、子育てのさまざまな場面で活用することができる考え方です。
今回ご紹介した技法のほかにも、NLPにはコミュニケーションをスムーズにするためのスキルがたくさんあります。NLPを体系的に学び、さまざまなコミュニケーションスキルを身につけて、子どもが生き生きと主体的に輝くための子育てを実践してみませんか?