組織で働きはじめると、必ずといって良いほど言及されるのが「マネジメント能力」です。管理職や経営者にマネジメント能力が必須となるのはもちろんですが、広告、貿易、旅行、不動産や人材紹介といった仲介業や流通業では、管理職でなくとも早期からマネジメントの力が問われる場面は多いでしょう。
ここでは、マネジメント能力とは何か、能力が高い人の特徴などにくわえ、マネジメント能力を向上させるためにできるおすすめの方法について3つピックアップしています。
「マネジメント能力の磨き方がわからない」「マネジメントの力をつけて、業務効率化や生産性向上にもつなげたい」と考えている方におすすめの内容となっています。
マネジメント能力とは
「マネジメント能力」の「マネジメント(management)」は、「経営、管理、取り扱い」などを意味しています。
ビジネスにおいて経営や運営を円滑に進め、組織を統括してプロジェクトを効率よく動かすために必要な能力を「マネジメント能力」と呼びます。
目標達成に向け、社員を統率して動かすという点ではリーダーシップと似ていますが、組織内の人にフォーカスしつつも経営者側に立ち、商品や予算、時間といった人以外の資源もトータルで管理していく点がリーダーシップとは異なります。
冒頭で挙げた仲介業や流通業に限らず、メーカーやIT、金融といった業界でも、異業種との連携をともなう場面は年々増加しています。1つの企業内でも、M&Aなどで組織グループの多角化や、関連会社との協働が発生するケースもあるでしょう。
マネジメント能力の強化は、いまや管理職であるかどうかにかかわらず、社会人として急務の課題だといえます。
マネジメント能力が高い人の特徴
マネジメント能力が高い人の特徴として、以下に記述する3つの高いスキルを持っていることが挙げられます。3つのスキルについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。
アセスメントスキル
アセスメントスキルの”assessment”には、「評価、査定」といった意味があります。
組織をマネジメントするにあたり、チーム内の人材が個々に持つ能力や勤務状況について把握し、どういった環境で最大限のパフォーマンスを引き出せるかを察知するスキルが「アセスメントスキル」です。
コミュニケーション力に長けているがミスが多くいい加減なところのある人、頑固で融通の利かない面はあるが、ダブルチェックや見落としを見つける力がずば抜けている人など、長所と短所は表裏一体であることが多いものです。
残業を嫌がるのは仕事が嫌いなのではなく、何か家庭の事情があるケースもあれば、いつも遅くまで働いていて仕事熱心かと思っていたら、無駄な作業が多かった、というケースもあるでしょう。
周囲からの誤解を解いたり、非効率な業務体制を改善したりする場合にも、アセスメントスキルは必要となります。
1人1人の状況を理解して、現状について正しい評価を下せる人は、マネジメント能力が高いといえるでしょう。
アカウンタビリティ
アカウンタビリティ(accountability)とは、「説明責任」と訳されることの多い英単語です。
同様の単語に、「責任」を意味する”responsibility”がありますが、responsibilityが単に「責任者、担当者」といった立場の人が持つ責任にも使われるのに対して、accountabilityには「何かあった場合に、関係者へ説明する義務」という意味合いがあります。
部下や担当者が進めている案件やプロジェクトについて、各方面へ経緯や状況について詳しく説明をおこない、責任の所在を明らかにするのが「アカウンタビリティ」です。
特にミスやトラブルが起きた際に重要となるスキルで、アカウンタビリティを担える上司がいるかどうかは、組織内の安心感やトラブルの拡大、隠ぺい防止などにもつながります。
「何かあったときに頼れる存在」「ピンチをチャンスに変えてくれる人」「あの人がいれば大丈夫」そんな評価が得られているかどうかも、マネジメント能力の高さをはかるうえで重要なポイントです。
コーチング
コーチングも、マネジメントにおいて非常に重要なスキルです。
コーチング(coaching)は指導やコーチとしてのスキルを意味するものですが、自分が知っている知識や能力についてただ伝授するだけでは、コーチングスキルが高いとはいえません。
個々の能力や状況に合わせて、フォローアップも含めて力を伸ばし、目標達成を実現してはじめてコーチングスキルがあるといえます。
組織をマネジメントする立場にある者は、部下の成長も含めて管理していかなければなりません。いくらマネジメントスキルが高くても、指示がなければ動かない組織では、成長が停滞してしまうからです。
人材の成長は、そのまま組織の成長となります。
マネジメント能力の高い人は、個々の能力を伸ばすコーチングができるのはもちろんのこと、最終的に1人でも多くの社員がマネジメントスキルを上げられるよう、将来的なビジョンも含めてコーチングできるスキルを持っているのです。
マネジメント業務を長く続けていれば、上記3つのスキルについて一定程度のスキルは身についている、という人が多いでしょう。
ただ、「どれもできていないとはいわないが、高いスキルがあるとまではいえない」、「3つのうち1~2つは自信があるが、スキルとして弱いものもある」と感じる場合、どのようにしてスキルアップすれば良いのでしょうか。
マネジメント能力を向上させる方法3選
マネジメント能力が高い人の特徴として、上記で挙げたスキルを向上させ、相対的にマネジメント能力もアップするために、おすすめできる3つの方法を以下にご紹介します。
いかなるときでも冷静に考える
部下の大きなミスが発覚したときや指導に反発したとき、何度言っても態度を改めないときなど、チームで仕事をしていると、感情的になりそうな場面に直面することがあります。
あるいは、クライアントや上司から無理な要望があったり、理解のない言葉を投げかけられたりするケースもあるでしょう。
そんなときでも、冷静に対処するように努めることがマネジメント能力の向上には大切です。
自分の感情のままに叱りつけたり、焦って実現の難しいスケジュールを組んでしまったりすることのないよう、ひと呼吸置いて考えるクセをつけるようにしましょう。
優先事項を常に明確にする
いくつかの業務について同時進行で進めなければならない場合、「あれもこれもしなければ」と思えば思うほど空回りしがちです。やるべきことを1つ1つ洗い出し、「何をいつまでに、どこまで終わらせるべきか」について整理することが大切です。
物事には、必ず優先順位があります。処理や対応に必要な時間も含めて順序を明確にすることで、余裕のないときでも落ち着いて指示を出せるようになります。
他人のスケジュール把握する
業務の計画や自分自身のスケジュールはもちろんですが、他者のスケジュールについて把握するのも、マネジメント能力の向上に役立ちます。
いつ誰の手が空いているか、今忙しいのは誰か、忙しくなる時期に任せられる社員は何名いるのか、といったことが把握できていれば、冷静に優先事項を考えて練った計画もスムーズに実行できるようになるでしょう。
まとめ
マネジメント能力とはビジネスにおける管理、統率能力をさし、近年の会社組織では、業種や役職を問わず必要とされるスキルとなっています。
マネジメント能力の高い人は「アセスメントスキル」、「アカウンタビリティ」、「コーチング」の3つのスキルが高い特徴があり、能力向上には冷静な判断と優先順位の整理にくわえ、他者のスケジュールに目配りするといった方法が有効です。
マネジメント能力は一朝一夕に培われるものではありませんが、スキルの向上を意識して行動することにより、昨日よりも今日、今日よりも明日の自分がブラッシュアップされ、それが組織内にも良い影響を与えていくのです。