目次
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  1. 1. 臨床心理士と公認心理師の違い
  2. 1. 民間資格か国家資格か
  3. 2. 仕事内容
  4. 2. 臨床心理士・公認心理師を取得するには
  5. 1. 臨床心理士になるには
  6. 2. 公認心理師になるには
  7. 3. 臨床心理士と公認心理師、どちらを目指すべき?
  8. 4. まとめ

公認心理師法にもとづき、2017年9月、心理職における初の国家資格である「公認心理師」が誕生しました。これまで長きに渡って信頼性が高いとされてきたのは、民間資格の「臨床心理士」です。公認心理師の登場によって、どちらの資格の取得を目指すべきなのか、迷っている方も多いのではないでしょうか。

 

そこでこの記事では、臨床心理士と公認心理師をさまざまな面で比較して、その違いを解説します。資格選びに迷っておられる方は、ぜひ参考にしてください。

臨床心理士と公認心理師の違い

 

ここでは臨床心理士と公認心理師の違いを解説します。

民間資格か国家資格か

まず大きな違いとして、それぞれの資格を認定しているのが民間団体か国か、というものがあります。

 

臨床心理士は、公益財団法人の「日本臨床心理士資格認定協会」が認定している民間資格です。1988年以来、2018年4月1日の時点で計34,504名が臨床心理士として認定を受けました。臨床心理士には5年ごとの更新義務があり、2018年同日時点で臨床心理士の資格を持っているのは32,354名です。

いっぽう公認心理師は、2015年に成立して2017年に施行された「公認心理師法」にもとづく国家資格です。2018年に第1回の試験が行われたばかりの、まだ新しい資格です。

仕事内容

臨床心理士と公認心理師とで、仕事内容は異なるのでしょうか。それぞれの資格認定団体が、資格保有者に求めている内容を確認してみましょう。

 

【臨床心理士に求められる専門行為】

1.種々の心理テスト等を用いての心理査定技法や面接査定に精通していること

2.一定の水準で臨床心理学的にかかわる面接援助技法を適用して、その的確な対応・処置能力を持っていること

3.地域の心の健康活動にかかわる人的援助システムのコーディネーティングやコンサルテーションにかかわる能力を保持していること

4.自らの援助技法や査定技法を含めた多様な心理臨床実践に関する研究・調査とその発表等についての資質の涵養が要請されること

 

出典:臨床心理士とは | 公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会

 

【公認心理師が行う業務】

保健医療、福祉、教育その他の分野において、専門的知識及び技術を持って、次に掲げる行為をする

1.心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。

2.心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。

3.心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。

4.心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。

 

出典:公認心理師法第2条

 

以上の文言から、臨床心理士と公認心理師とで、扱う業務の内容が大きく異なることはなさそうです。

 

ただし心理療法以外の業務に関しては、臨床心理士は「心理臨床実践に関する研究・調査とその発表」、公認心理師は「心の健康に関する情報の発信・提供」にそれぞれ主眼が置かれていると読むこともできます。

また、臨床心理士が個別面接による心理療法が主であるのに対して、公認心理師はチームでの援助、連携を前提としていると言われることもあります。

臨床心理士・公認心理師を取得するには

 

次に、それぞれの資格を取得するために必要となる条件を解説します。

臨床心理士になるには

【受験資格】

日本臨床心理士資格認定協会では、以下のような受験資格を定めています。

 

・指定大学院(1種・2種)を修了し、所定の条件を満たす

・臨床心理士養成に関する専門職大学院を修了する

・諸外国で指定大学院と同等以上の教育を受け、修了後、日本国内で2年以上の心理臨床経験を積む

・医師免許を取得し、取得後、2年以上の心理臨床経験を積む

など

 

【試験概要】

例として、2018年に行われた第2回の試験をご紹介します。

 

試験日:一次試験は2018年10月13日、二次試験は同年11月23~25日

合格発表日:2018年12月中旬

実施方法:一次試験はマークシート100問+論文記述問題1問、二次試験は面接

受験者数:2,214人

合格者数:1,408人

合格率:63.6%

公認心理師になるには

【受験資格】

公認心理師資格の試験を受けるには、以下3つのいずれかを満たす必要があります。

 

・4年制大学で「指定の科目」を履修し、かつ、大学院で「指定の科目」を履修する

・4年制大学で「指定の科目」を履修し、卒業後に「特定の施設」で2年以上の実務経験を積む

・外国の大学で心理に関する科目を修め、かつ、外国の大学院で心理に関する科目を修了する

 

臨床心理士と異なり、学士課程においても心理学科目を履修することが求められているのが特徴です。

 

【試験概要】

例として、2019年に行われた第2回の試験をご紹介します。

 

試験日:2019年8月4日

合格発表日:2019年9月13日

実施方法:全問マークシートで150~200問程度

合格基準:全体の正答率60%以上

受験者数:1万6,949人

合格者数:7,864人

合格率:46.4%

臨床心理士と公認心理師、どちらを目指すべき?

臨床心理士は、数ある心理職関連資格の中でも信頼性の高い資格とされています。したがって、たとえばカウンセラーとして就職活動を行う際にも、臨床心理士資格を持っていることは有利に働いてきました。

 

今回、公認心理師という国家資格が誕生したことにより、臨床心理士資格の優位性がどうなるのかはまだ予測がつきません。現在のところ、どちらの資格を持っていても同じような業務に携わることになるだろうという声が多く聞かれますが、中には、今後、公的機関を中心に公認心理師資格が求められるようになるのではないかという意見もあります。

 

今後、学士課程から6年間にわたって心理学を学べる環境にある場合は、両方の資格を取得するという選択肢もあります。大学院の中には、臨床心理士と公認心理師の両方に対応できるカリキュラムを組んでいるところもあるのです。

 

また逆に、数年が経過して両資格の立ち位置がはっきりしてくると、片方の資格への対応をやめる大学院も出てくるかもしれません。しっかりと情報収集を行いながら進学先を選びましょう。

まとめ

臨床心理士と公認心理師との間には、「民間資格か国家資格か」という違いに加えて、仕事内容として想定されているものの違いや、取得に向けての条件における違いがあります。

 

公認心理師は誕生して間もない資格なので、「どの程度仕事につながるのか」に関するはっきりしたデータはありません。しかし今後、公的機関を中心として公認心理師資格の取得が求められる可能性は否定できません。

臨床心理士と公認心理師の両方の取得を目指せる大学・大学院もありますので、心理職を目指している方は、選択肢のひとつとして検討することをおすすめします。