日本語や日本文化に興味を持つ外国人に、「日本語を教えたい!」という夢を持つ方も多いでしょう。現在のところ日本語教師という資格はないのですが、ゆくゆくは日本語教師の公的資格ができることを知っていましたか?ここでは、これまでの日本語教師に必要な資格と、公的資格ができる理由、公的資格のメリットと問題点について解説します。
日本語教師の資格に公的資格はある?これまでの日本語教師資格とは?
日本語教師になるために、より信頼性の高い国家資格・公的資格を取得したいという方も多いでしょう。
日本語教師資格に国家資格や公的資格があるのかどうか、また、日本語教師に必要な条件や資格にはどのようなものがあるのかについて見ていきましょう。
日本語教師の資格に公的資格や国家資格はあるのか?
実は、日本語教師は教員免許が必要ないうえに、日本語教師として仕事をするための国家資格もないのです。そのため、社内や近所の外国人に日本語を教えることもできます。
ただし、日本で日本語を学ぶ外国人のほとんどは、民間の「日本語学校」に通っています。日本語教師になるための最短ルートは、日本語学校に採用されることを目標にするのが一番でしょう。公的資格がないといっても、日本語学校に採用されるためには、学校側が求めるスキルや資格を取得するのが必要なのですね。
日本語教師にはどのような条件(資格)が必要なのか?
日本語教師の国家資格がない代わりに、2017年より入国管理法が定める「日本語教育機関の告示基準」が改定されたのです。この規定は、日本語教師は3つの条件のどれかを満たすとしています。
・大学、大学院で日本語教育主専攻、または副専攻を修了
・日本語教育能力試験に合格する
・各種学校等で420時間以上の日本語教師養成講座を修了
大学などで専門的な日本語教育を学んでいれば、すぐに日本語教師になれるでしょう。ですが、それ以外の方は、日本語教育能力検定の受検か日本語教師養成講座を修了する必要があります。
日本語教育能力検定とは?
日本語教育能力検定は、「日本語教育に携わるために必要な基礎知識・能力を検定する」という資格になります。国家資格ではないものの、日本語教師資格の中でも知名度や評価は高く、この試験に合格すると、「日本語教育の副専攻を修了するのと同等の知識」を証明することができるのです!
日本語教師養成講座とは?
日本語教師養成講座は、文化庁が示す「日本語教師養育の標準的な教育内容」に沿った講座のことです。届け出をした専門学校で受講できる講座で、留学生を受け入れる日本語学校の教員になる要件になっています。
「日本語の知識・日本語の教え方」という、実践的な内容を勉強できることもあって、現在活躍している日本語教師のほとんどがこの講座を修了しているようですね。
日本語教師の公的資格(国家資格)が誕生するのか?
今は「民間資格」だけで日本語教師になれるのですが、政府は日本語教師の「公的資格」の創設が議論されているのです。
なぜそのような議論が起きたのかというと、人手不足解消のために外国人労働者を受け入れる動きが関係しています。日本語という言葉の壁を低くするために、日本語教師の質を上げて、早く日本語を身に付けてもらおうという考えがあるのでしょう。
政府は19年度に資格制度の具体的な設計を話し合い、20年度以降からのスタートを目指しています。今の時点で検討されているのは、日本語教育能力検定の活用と教育実習、大学卒や養成講座を修了した人に公的資格試験の一部を免除する、といった内容です。とはいえ、公的資格の試験内容といった具体的なアナウンスはまだ出ていないので、今後の動きが気になるところですね!
日本語教師の公的資格(国家資格)ができることのメリット・問題点とは
日本語教師の公的資格が創設されたら、どのようなメリットがあるのでしょうか?また、公的資格ができることで、考えられる問題点についても見ていきましょう。
日本語教師の公的資格(国家資格)ができることのメリット
一番のメリットといえば、外国人労働者の受け入れ体制を整えられることでしょう。
日本語教育が充実することで、外国人が早く日本語を覚えられ、日本での仕事がしやすくなります。
日本での日常生活においても日本語でのコミュニケーションが取りやすくなるため、長く日本に滞在する外国人も増えることが予想されます。
また、これまで公的資格がなかったことで、日本語教師の教育スキルにばらつきがあることが問題となっていました。特に、地域の日本語教室ではボランティアが教えていることが多いため、公的資格ができることで教育の質が向上し、日本語教育の水準を上げられるのはメリットといえるでしょう。
そして、日本語教師は給与が安いので、日本語教師自体が少ないのが現状です。公的資格ができることによって日本語教師の質が上がることで待遇も良くなり、新たな日本語教師の人材が増えるかもしれません。
日本語教師の公的資格(国家資格)ができることの問題点
日本語教師養成講座を専門学校で教えるには、要件が厳しいこともあって、届け出ている専門学校の数が少ないという問題点があります。費用も50万円以上と高いので、勉強してから働いても給料が安く、勉強しても「割に合わない」と感じるケースも…。
そして、日本語教育能力検定は難易度が高い試験なので、合格率が約20%と実に低いのです。そもそも日本語教師が少ないのに、資格を難しくしているのでは本末転倒ですよね。公的資格がスタートする前に、資格試験の難易度について考えなければ、さらに人材が不足する可能性が問題点といえるでしょう。
まとめ
日本語教師は公的資格がないため、今は民間資格で対応している状態なのです。しかし、外国人労働者の受け入れ拡大にともなって、政府が打ち出したのが日本語教師の公的資格創設なのです。日本語教師の立場が確立されると、待遇改善や、外国人に適切な日本語教育を提供できるのはメリットといえますね。しかし、民間資格ですら難易度が高いのに、講習の費用も高くては、日本語教師が不足するのも当然でしょう。公的資格を本格的に導入するには、試験内容と難易度がどうなるかがカギといえます。