2020年3月の現状では「日本語教師には大卒の資格がなくてもなれる」「日本語教師になるために必要な資格は特にない」と聞きますが、今後文化庁が進める【公認日本語教師】の国家資格化の要件として、大学卒業が資格取得の必須になることから、大学を卒業してから日本語教師を目指すことは大きなメリットになるのではないのでしょうか。
ここでは、まず日本語教師が活躍する場はどういうところなのか、また大卒であることで得られるメリットにくわえ、大学在学中に押さえておくべきポイントなどについて解説しています。
日本語教師の活躍の場
日本語教師が活躍している場にはどんなところがあるのかについて解説します。
日本国内の日本語学校
日本語を学ぼうとしている外国人のために、日本語を教える学校です。非常勤講師としての形態が多く、日本語以外に日本の文化や歴史などを教えたり、さまざまな国籍、年齢の生徒と関わったりするため、日本語教師の道を歩む最初の一歩とする人も多い職場です。
日本国内の大学
日本の大学で、在学している外国人や留学生のために日本語を教える仕事です。日本語学校で働くよりも待遇や収入が良い場合が多いですが、その分採用されるためには一定のレベルが必要とされます。日本語教育能力検定試験だけでなく、大学院などで日本語教育に関する研究などをおこなった実績などが求められるケースもあるでしょう。
ボランティア
ひとくちに「ボランティア」といっても多様な種類があり、地域の日本語教室から、JICAなどが扱う青年海外協力隊の途上国向けボランティア制度までさまざまです。地域の日本語教育は比較的参加のハードルが低く、JICA主催のものは生活費レベルの手当てが支給される代わりに、一定の日本語教育経験やレベルも求められます。
海外の日本語学校
ボランティア以外に、海外の日本語学校で教師の求人を募集している場合もあります。日本語教育のニーズが高いベトナムやミャンマー、中国、タイといったアジアの学校が多い傾向です。
上記の求人では、大学で教師として教える際には大卒以上の資格を条件とするところも多く、海外の日本語学校やボランティアでも、就業先のビザ発給要件として大学卒業以上の学歴が求められるケースが多いようです。
日本語教師の資格取得には大学卒業が必須?
2020年3月現在、日本語教師になるにあたって特に必要な資格はなく、大卒でなくても日本語教師になることはできますが、ここでは大卒で日本語教師になることのメリットについて解説します。求人の条件や現在検討されている日本語教師の国家資格化の流れによっては、今後大卒の資格が必要となる可能性が高まってきているのです。
大卒かどうかで日本語教師へのなり方が異なる
文化庁では、令和元年8月に日本語教師に関する要件の改正がおこなわれ、在留資格に「留学」が付与される留学生を受け入れられる日本語教育機関に属する教員に、それぞれ下記のような要件をさだめています。
・大卒の場合
“学士の学位を有し、かつ、日本語教育に関するものとして適当と認められるものを420単位時間以上受講し、これを修了した者”(告示基準第1条第1項第13号ニ関係より)
上記の要件に該当するのは、短大を除いた大学、または大学院で日本語教育に関する教育課程を履修し、所定の単位を修得したうえでその大学または大学院を卒業(修了)した者、あるいは大学や大学院で日本語教育に関する科目を26単位以上修得して卒業(課程修了)した者となります。
・上記以外の場合
上記によらない場合は、日本語教育能力検定試験に合格しているかどうかが要件の目安となります。
大学や大学院を卒業(修了)しているかどうかで、日本語教師へのなり方が異なってくるといえます。
大卒で日本語教師になることのメリット
大卒で日本語教師になる場合のメリットとしては、広範囲で比較的難易度が高い(合格率2割程度)とされる日本語教育能力検定試験を受けなくても、日本語教師として働ける点が挙げられます。
また、海外で働く場合にも学士以上の学歴が必須である場合が多いため、ビザを取得しやすいメリットもあります。国内外を問わず、日本語教師の求人で「4年制大学卒業」を応募条件にしている企業も少なくないため、大卒から日本語教師を目指した方が就職口の幅も広いといえるでしょう。
通信制大学でも日本語教師を目指せる
学士の資格は、全日制の大学に限定されるものではなく、通信制大学を卒業しても得ることが可能です。家庭の事情などで大学へ通えなかった人や、仕事や育児・介護などで大学へ進学するための時間が確保できない人であっても、日本語教師養成課程を設けている通信教育で大卒の資格を取って日本語教師を目指すことができます。
大学で日本語教師を目指すうえで押さえておきたいこと
現在、学生の方が大学に入って日本語教師を目指そうとする場合に、押さえておくべきポイントについても解説します。
主専攻と副専攻の違い
大学で日本語教育を学ぶにあたり、主専攻とするか、副専攻とするかの違いがあります。「主専攻」が日本語教育をメインに履修していくのに対し、「副専攻」は経済学部や文学部など、他にメインとなる専攻学科に属しつつ、日本語教育に関する科目を既定の時間分履修していく形をとります。
いずれのスタイルであっても就職時に差がつくことはないため、基本的にはどちらを主専攻にしても問題はありません。
就職では新卒が不利になってしまう場合もある
現在日本語教師の需要は高く、業界では即戦力となる人材が求められる傾向にあります。そのため、「日本語教師としての経歴〇年以上」など、職歴や社会経験をある程度持っている人を応募条件としている求人も少なくありません。
また、新卒で海外の求人へ応募しようとする場合、就労ビザの取得が難しいケースもあります。こうした点から、新卒であることが日本語教師の就活で不利となってしまうケースも考えられるのです。
まとめ
日本語教師になるために、必ず必要となる資格は現時点(2020年3月)では特にありませんが、今後、国家資格化を進めている「公認日本語教師」資格の要件で、大卒が必須となる可能性が高まっています。求人の応募条件や海外で働く際のビザ取得などの兼ね合いから、大卒以上を応募条件に掲げる企業は増えてきています。また、中途採用で即戦力を求める求人がメインとなっており、新卒で日本語教師を目指すのが難しい場合もあります。
大卒の資格は通信制の大学でも取得可能で、大学で日本語教育に関する科目を履修していない場合や、ボランティアなどで日本語教育のキャリアを持っているが資格がない、という場合には、日本語教師養成講座を受講することで道が大きく開ける可能性が高まるでしょう。