- 1. ■日本語教師の国家資格化の概要
- 1. 現状はまだ国家資格化の検討をおこなっている段階
- 2. 2019年12月13日まで文化庁のホームぺージで意見を募集していた
- 3. 2020年3月に審議会の報告がある予定
- 2. 日本語教師を国家資格化する背景
- 1. 資格や養成についてバラツキがあるため
- 2. 日本語教師の質を上げるため
- 3. 日本語教師の量を確保するため
- 4. 多様化により日本語教育が必要な分野や層が拡大
- 3. 公認日本語教師になるためには
- 1. 試験で合格する
- 2. 教育実習の履修
- 3. 学士
- 4. すでに日本語教師として働いている人はどうなる?
- 1. 現状の資格が反故されることはない
- 2. これまでの資格や養成講座の受講は無駄にならない
- 5. まとめ
仕事のために日本へ在留する外国人の増加にともない、現在日本語教師の国家資格化が検討されていることをご存じでしょうか。日本語教師が国家資格となった場合、現在の状況とどのような変化があるのか、また、すでに日本語教師として働いている人にどのような影響があるのかも気になるところです。
ここでは、日本語教師の国家資格化に関する概要やその背景にくわえ、公認日本語教師となるための条件などについて解説しています。
■日本語教師の国家資格化の概要
まずは、国家資格化の現状について解説します。2020年1月現在の情報であるため、最新の動向については今後変わる可能性もありますが、おおむね以下のような内容となっています。
現状はまだ国家資格化の検討をおこなっている段階
日本語教師の国家資格化については、2020年1月現在まだ検討をおこなっている段階で、いつ国家資格化するのか、どのような形になるのかは決まっていないのが現状です。
2019年12月13日まで文化庁のホームぺージで意見を募集していた
文化庁では、日本語教師の国家資格化について、2019年12月13日まで意見を募集していました。現在日本語教師として働いている人や日本語教師を養成している団体、日本語教師を雇用している企業など、立場を問わず幅広い意見をホームページ上で募り、日本語教師の地位向上や既存の試験を活用する方法についても検討している模様です。
2020年3月に審議会の報告がある予定
文化庁によると、2020年3月頃に文化審議会の報告がまとまる予定であり、2020年の春頃には現在よりもより踏み込んだ内容の発表があるのではないかと予想されます。
現時点ではまだはっきりしたことは決まっていないとはいえ、日本語教師を国家資格化しようとする動きが起こっているのには、何らかの背景があると考えられます。
日本語教師を国家資格化する背景
文化庁では、日本語教師の国家資格化を進める背景として、以下のような点を挙げています。
資格や養成についてバラツキがあるため
日本語教師の資質や能力については、現在もさまざまな資格試験があるとはいえ、現状はっきりと正しく証明できるものがないといえます。
大学や民間での養成課程や研修の質も均一でなく、同じ資格を持っていても、日本語を教える専門的な能力は個人によってバラツキがあります。このバラツキを解消する目的で、国家資格化を進めようとしているのです。
日本語教師の質を上げるため
日本語教師の能力にバラツキがある中で、在留外国人の数は増え続けています。日本語を学びたいと考えている外国人を一定数受け入れ、国内で業務に従事してもらうためには、日本語教師の質の向上が必要です。
日本語教師の国家資格化で、資格を持つ日本語教師の質がより客観的に明確化すれば、企業なども日本語教育をより導入しやすくなると考えられています。
日本語教師の量を確保するため
日本語教師の個々の能力が明確とはいえない現状では、日本語教師を目指して専門的な教育を受けた人も思うように活躍できていない可能性があります。
企業の日本語教育導入を拡大すると同時に、高い専門性を持ちながら、日本語教育の技術を眠らせている潜在的な人財を掘り起こす目的もあるのです。
多様化により日本語教育が必要な分野や層が拡大
国家資格に合格できる、質の高い日本語教師を増やすためには、日本語教育を教えられる教師も必要となってきます。簡単な接客や工場作業だけでなく、今後外国人が日本で活躍する業種は多様化する見込みです。
多様な業種に対応するための日本語教育や、専門性のある日本語を教えられる教師の需要が高まることを考えると、国家資格を持つ日本語教師の輩出は急務であるといえるでしょう。
公認日本語教師になるためには
国家資格となる日本語教師は「公認日本語教師(仮)」と呼ばれています。
現在検討中のため確定ではありませんが、公認日本語教師になるために必要となる条件については、文化庁HPにて掲載されている2019年12月23日付資料「日本語教育能力の判定に関する報告(案)」にて確認できます。
以下の図は、上記資料より、公認日本語教師(仮)の取得に関する仕組みのイメージを抜粋したものです。
引用元:「日本語教育能力の判定に関する報告(案)」13ページより
上図を含む文化庁の資料をもとに、資格の登録要件について以下でまとめました。なお、それぞれについてより詳しく知りたい方は、文化庁の資料にも目を通しておきましょう。
試験で合格する
公認日本語教師(仮)を取得するための要件の一つとして、「日本語教育能力を判定する試験」に合格する必要があると考えられているようです。公認日本語教師になるための試験の内容は、上記で挙げた資料内で確認できます。
また、試験内容以外にも、受験回数を複数設定する予定であることや、全国6地域以上が望ましいとされていること、オンラインによる試験なども検討されているようです。
教育実習の履修
大学の場合、日本語教師養成課程において、教育実習(1単位以上)を履修して修了する必要がある、としています。また、文化庁届出受理日本語教師養成研修実施機関(ヒューマンアカデミーなど)の場合は、教育実習(45単位時間以上)を履修して修了することが条件と考えられているようです。
学士
公認日本語教師の資格取得要件として、学士を必須とすることも検討されています。これは、教育職となる日本語教師が海外でも活躍するためには、国際基準の観点からも学士が必要と考えているためです。
このほかにも、年齢、国籍、母語は要件に入っておらず、有効期限は10年とすることなどさまざまな検討が進められています。
すでに日本語教師として働いている人はどうなる?
上記のような要件が定められた場合、現在資格をすでに持っている人にはどのような影響があるのでしょうか。
現状の資格が反故されることはない
検討中のため、確定した情報ではありませんが、現状の資格が反故にされることはないと予想されます。
先ほどの文化庁の資料でも「公認日本語教師」以外の日本語教育人材が求められる場で日本語を教えることを妨げるものではない」と明記しているのが確認できます。
これまでの資格や養成講座の受講は無駄にならない
公認日本語教師の国家資格試験が作られたとしても、外国人に日本語を教えるために必要な知識が変わってしまうわけではないでしょう。したがって、これまでの資格や養成講座で学んだ内容と大きくことなる可能性は低く、すでに学んだ知識について無駄になることはないと考えられます。
まとめ
日本語教師の国家資格化は、2020年1月現在まだ検討中の段階となっていますが、在留外国人の増加と業種の多様化、日本語教師の質の向上、潜在的な人材確保や企業の日本語教育導入を促進するといった目的から急務であると考えられ、2020年3月頃には審議会での意見がまとまる予定です。
公認日本語教師になるには、試験に合格する以外に4年制大学卒業以上であること、教育実習の履修が必要となることといった要件が追加される見込みですが、すでに養成講座などで学んだ知識が無駄になることはないようです。現在日本語教師として勤務中、または勉強中の人にとっては将来的に活躍の場が広がり、更なるステップアップとなると捉えるとよいでしょう。