東京オリンピックの正式種目になった空手は、数ある日本の武道のなかでも特に外国人から注目を集める競技です。しかし、海外の人に説明などをする場合、あまりにも種類が多すぎて、「どんな話をすればいいのかわからなくなること」もあるのではないかと思います。
そこで今回は、空手の2つの種類と、それぞれにおける代表的な流派を詳しく紹介していきたいと思います。
空手には大きく分けて2つの種類がある
空手の種類や流派は、全部で200前後あるという説があります。しかし全世界に普及していて、派生した流派も非常に多い空手の場合、その総数は把握できないというのが実情です。
こうした空手の分類について考えるときには、まず代表的な以下2つの種類から入っていくのがおすすめとなります。
伝統空手(ノンコンタクト空手)
伝統空手とは、直接打撃を避けた寸止め空手の総称です。古流の伝統技術にもとづき試合や稽古をおこなう伝統空手には、以下のような特徴があります。
- 型の練習を重視する
- 哲学や礼節を重視する
- 間合いが早く広い
- ローキックをしない
- 段級位制を採用している
実践空手(フルコンタクト空手)
実践空手は、直接打撃制のルールを採用した空手の総称です。実践空手は、極真空手の創始者である大山倍達によって広められたものです。
- 顔面のような大事な部分以外への蹴りや突きをおこない、そのダメージで勝敗を決める
- 伝統空手より、間合いが短い
- 伝統空手より、コンビネーションが豊富である
伝統空手における代表的な流派
伝統空手で代表的なのは、以下の四大流派です。
松涛館流
全世界に普及していて、最も多くの人に学ばれる流派です。松涛館流の強みは、遠い間合いからの一撃必殺です。技の一つひとつの動作がダイナミックで、技の重みから観戦する側にカッコいい印象を与えやすい特徴があります。
剛柔流
近い間合いからの打撃や掴み投げなどを強みとする流派です。相手に打たれても耐えられる体と、サンチンの呼吸によって内部を鍛えることの2つが訓練の基礎となります。一般的に、守りの空手と呼ばれています。
糸東流
首里手と那覇手両方の流れをくんだ、型が非常に美しい空手です。守りを特に重視するこの流派には、相手の攻撃を受け流してから反撃する特徴があります。そして技術には、突きや蹴りの他に、投げや逆技も含まれています。
和道流
松涛館ならではの空手技術と、本土の柔術が合わさった流派です。柔術の流れをくんでいるため、投技や足技がとても多い傾向があります。また、相手を倒してから関節技に似た攻撃をおこなうところも、和道流の大きな特徴です。
実践空手における代表的な流派
実践空手で有名なのは、以下5つの種類です。
極真会館
創始者の大山倍達が直接打撃を提唱したフルコンタクト空手の本家です。現在は、松井章圭氏が代表を務めています。フルコンタクト空手は、その大半が極真会館から派生したものとなります。毎日の稽古では、型の練習や約束組手の他に、スパーリングもおこなわれます。
新極真会
緑健児氏が代表を務める、創始者の大山倍達が亡くなった後の組織名です。メディア露出が非常に多い特徴があり、世界大会はテレビ放映もされています。この流派の大会は、基本をとても大切にしています。そして、体重や年齢、帯の色で大会が細分化されており、幅広い人が空手を楽しめるところが大きな魅力です。
極真館
元極真会館の最高顧問・盧山初雄によって生まれた団体です。時代の風潮に流されず、武道空手の理念と古流極真精神の両方を正しく継承し、普及や発展させることを使命としています。極真の分裂組織のなかで、手技による顔面攻撃を認めた試合をおこなう唯一の団体でもあります。
正道会館
芦原会館より石井和義が独立して生まれた団体です。掴みを可能としており、より実践に近い特徴があります。正道会館では、上級者だけK-1の指導を受けられます。そしてかつてのK-1日本ヘビー級を引っ張ってきた佐竹雅昭選手も、この流派の出身です。
大道塾
極真空手の顔面なしルールの他、頭突きや投げ、寝技、打撃といった多彩な技を取り入れた流派です。団体の紹介ページには「総合格闘技のパイオニア」とも書かれています。観る側にわかりやすいルールや、高い実践性や安全性が備わっているのも、大道塾の大きな特徴です。頭部には、独自開発した防具を着用します。
まとめ
海外からの注目度も高い空手には、総数をつかみきれないほどの多くの種類があります。
ですから、外国人から日本の武道・空手について質問されたときには、まず古流の伝統技術にもとづく伝統空手と、直接打撃のできる実践空手の2種類があることを教えてあげてください。
そして、より具体的な説明を求められたときには、伝統空手の四大流派と、実践空手のなかでも注目度の高い5つの流派を教えてあげるといいでしょう。