ミャンマーで大学を卒業後、日本語を学ぶために来日したキンさん。
アルバイト先で、毎日予想以上の「面白いこと」と「悲しいこと」に出会いながら、専門学校に進学するための準備をしています。キンさんの最終的な夢は、ミャンマーで日本語通訳の会社を作ること。ただ今、ビッグドリームに前進中!
<インタビューに答えてくれた人>
オン・マー・キンさん
26歳 ミャンマー出身 2018年4月に来日。
日本語の通訳になりたい
キンさんが、日本に来ようと思ったきっかけは?
日本語を勉強して、ミャンマーで通訳の仕事をしたいと思ったからです。
通訳が必要な場所がミャンマーに?
はい、あります。今、日本の会社がミャンマーにいっぱい来ています。もともと通訳になりたいと思っていたのですが、ミャンマーの工場には日本語がわからない人が多いことを知って、日本語の通訳をやりたいと思うようになりました。
ご両親はそんなキンさんの夢については?
応援してくれています。実家は農業で米やゴマ、豆を育ててます。日本に来るまで、わたしも農業を、手伝っていました。農業は疲れるしとっても大変です。だから両親は、農業ではなく、ミャンマーでサラリーマンになるのがいいと言いました。だからわたしは、大学を卒業後、サラリーマンの試験も受けました。でも不合格でした。
そこで父に、「本当は、わたしは日本語を勉強するために、日本に行きたいです」と言いました。父は、「日本語を勉強して何をやるの?」と。わたしは、「今、ミャンマーに日本の会社がたくさんあるから、日本語通訳になってミャンマーで働きます」と言うと、「わかりました」と言って、学費を出してくれました。
スーパー「肉のハナマサ」でお買い物
来日して10ヶ月だそうですが、今はどんな生活をしていますか?
新大久保でミャンマー人の女性3人で住んでいます。日本の家賃は高いですから、インターネットでルームシェアを探しました。家賃9万円3人で割って、3万円ずつ払っています。一人の部屋はありませんが、ベッドは一つずつあります。
買い物は近くの「ハナマサ」で食料品を買って、ミャンマー料理を自分で作って食べています。豚肉やポテト、トマトなどを醤油と唐辛子を入れて炒める料理が得意です。でも食料品は高いデス。私はマンゴーが好きなのですが、ハナマサだと2個で880円くらい。でも好きだから、買っちゃいます。
外食をすることも?
コリアンタウンに焼肉を食べに行ったり、日本の和食屋さんにも行きます。和食は肉どうふが好きです。お肉がやわらかくてとても美味しいです。でも日本食のサシミはリカイできません……。生の魚はミャンマーでは食べません。
日本に来て驚いたことはありますか?
一番驚いたのは、日本の電車です。夜12時を過ぎているのに、いっぱい人がいてびっくりしました。会社はもっと早くに終わっているのに、どうしてこんな時間に人がたくさんいるのだろうと思いました。
ミャンマーでは夜9時くらいになると、電車も車も空いています。ミャンマーでは、女性は夜、外を出歩きません。ワルイ人や泥棒がいて危険だからです。
両親は、わたしが日本で夜に出かけたという話をすると、「そんな時間にどうして外に出るの!」と心配します。でも日本では、夜でも女性がいっぱい町にいるし、警官もいっぱいいます。「ミャンマーと違って日本は安全。町に防犯カメラもいっぱいあります。だから安心してください」といつも言っています。
わたしが外人さんだから……?と悲しくなることも
日本人はどんな印象?
今、コンビニで働いているのですが、アルバイト先の人はすごく優しいです。何かわからない文法や言葉があったらメモしておいて、教えてもらいます。日本語の使い方だけでなく、日本の文化についても教えてくれます。
たとえば、わたしが、忙しくて気持ちを短くしている(短気になる)と、「日本人は仕事をしている時、そんなに気持ちを短くしません。我慢しながら仕事をするうちに、だんだん仕事ができるようになりますよ」と。でも時々はやっぱり我慢できないこともあって、怒ってしまうこともあります(笑)。
たとえば、どんなことで怒っちゃう?
二人でシフトに入っている時、わたしはちゃんとやっていて、もう一人は何もしない。でも、上司には、キンさんがちゃんと働きませんと嘘を言います。
日本人とミャンマー人だと、わたしは日本語がまだ上手にしゃべれないから、多くの人は、日本人の言うことを信じます。わたしは一所懸命やってるのに、外人さんだからいじめるのか!? って思って悲しくて涙が出ることもあります。
でも、ちゃんと見てくれている人もいます。
「キンさんがちゃんとやってるの、わかっているから大丈夫だよ」と言ってもらえると、気持ちがラクになります。
<後編に続く>
インタビュー : さくらいよしえ / イラスト : 溝口イタル