ここ数年「一億総活躍社会の実現に向けて」を目標とする『働き方改革」に関するニュースが各方面で取り沙汰されるようになり、2019年4月1日から働き方改革関連法が順次施行されて行きます。そのなかに「労働時間法制の見直し」というのがあり「働き過ぎを防ぐことで、働く方々の健康を守り、多様な『ワーク・ライフ・バランス』を実現できるようにします」との記述があります。労働基準法も改正され、時間外労働をさせるためには労使協定『36(サブロク)協定』の締結や労働基準監督署長への届け出が必要になりました。
エンジニアの勤務実態
成長著しいIT業界は高収入と引き換えに長時間労働を強いられることが多く、仕事と生活が両立しにくい現実に直面しています。心身ともに疲れ果てた結果、離職者が後を絶たず、企業側も退職→求人の繰り返しという悪循環に陥っているのも事実。退職の理由は人それぞれとして、人生をより豊かなものにするためにフリーランスへと転向するエンジニアも数多く存在します。フリーランスも働き方も大きく分けると企業に出向して働く「常駐型」と、自宅で作業する「在宅型」の二通りで、流行のリモートワークは後者に含まれます。今回、話を訊いたキャリア10年のエンジニアは複数の企業で働いている「常駐型」で、以前勤めていた会社を1年前に円満退社しました。
「人間関係に不満はなくて、どっちかと言うと収入面とやりたくない仕事をしたくない。フリーランスは仕事を断ることもできるじゃないですか。収入面で言えばサラリーマンは昇給が決まっているので、一気に上がるということはないですよね。そうなるための近道として、フリーの方が圧倒的に可能性が高いと言えます。あと、人生一度きりなので、サラリーマンじゃない人生を一度送ってみたいというのがずっとどこかにありましたね」
フリーランスとして各方面から引っ張りだこのエンジニアのように誰もが成功するとは限りませんが、失敗したからといってそれで人生が終わるわけではありません。IT業界はスキルが物を言う世界なので、一回挑戦して駄目だった場合は元のサラリーマンに戻ればいいわけです。ましてやどこも人手不足。そう考えるとフリーランスになるためのリスクは低く、「自分が好きな人生を送るために必要な収入が得られない方がよっぽどリスクです」と、言えます。
フリーランスの壁
フリーランスを始めるに当たって、当面の問題は収入です。クラウドソーシングを活用する、数社と契約してアルバイト的に週数回のペースで勤務するというように、今のIT業界は仕事を得る手段が数多くあります。「気持ち的に正社員じゃないということで自由を感じているし、いくつか掛け持ちしている会社も出勤日や時間をこちらから提示したものなんですよ。そういう意味では恵まれた環境にいると思います」と、起業するための準備を着々と進めています。それどころか、多くのフリーランスが頭をかかえる確定申告も、大いに楽しんでいます。
「確定申告はネットでも調べることができますけど、本を一冊買って読みました。それも初めてのことなので、僕的には楽しくて。これは経費にできるなというか、経営者ごっこというか。仕事も含め、またできることが増えた、また新しい知識が増えたという感覚です」
セルフプロデュース力よりもセルフマネージメント力
セルフプロデュースとは自己演出のことで、自分を知り、その魅力を世に知らしめることです。フリーランスで活動するうえでは伝えたいもののひとつで、関連する講座を受講したり書籍を読んだりと学ぶ方法はいろいろ。名前を売るという点では自分が培ってきた技術をSNSやブログで発信するのもひとつのやり方です。誰が見ているかわからないくらい気持ちを引き締めて取り組む必要があります。ただ、ブログにせよ企業に売り込むにしろ、自分を取り繕ってもいい結果は生まれません。
「フリーランスって無理しない生き方のはずなのに、セルフプロデュースに囚われるあまり実力以上のもとのを見せようとして、クライアントから求められた時に動揺するのは自由でない気がする。自分が得意なのはこれですよと正直に伝えて、マッチした仕事で働く方がいいです」
フリーランスで一番大事なのはクライアントが提示した納期を守ること。それができなければ一発で信用を失い、仕事そのものが危うくなってしまいます。納期を守るためにも自分の実力に見合うスケジュールを組むようにして、セルフマネージメント力=自己管理能力を身に着けなくてはなりません。心身の健康管理もそのひとつで、必要以上にストレスをため込まない、回りの人に流されないことが必要です。」
まとめ
高収入のためにフリーランスに転向する人もいれば、野心を秘めつつもマイペースで仕事をしたいという人もいます。自分の好きな生き方を追求できるフリーランスはある意味、もっとも人間らしい働き方かもしれません。会社に所属するだけでなく、フリーランスという働き方を選択肢に加えて、自分らしい働き方への可能性を広げてみてはいかがでしょうか。