BRIDAL
COLUMN#6

ウェディングプランナーの必須スキルその②「提案力」とは

前回は、ウェディングプランナーに必要な『傾聴力』についてお話をしました。
ウェディングプランナーだけではなく、その他の営業職も含め、良い成績を収めている人程、自分が話すよりもお客様の話を聞くことに力を注いでいると言われています。とはいうものの、成績が良いウェディングプランナーは決して『傾聴力』だけが優れている訳ではないもの事実です。

お客様の想いを汲み取った上で、それをどのような形で提案していくかという『提案力』も欠かすことのできない能力であり、その点においてもスキルが高いのが事実です。お客様のお話を耳と目と心で聴くことが出来て、お客様の視点で物事を捉え、初めてそのお客様に合ったピンポイントなご提案ができるのです。実は、その部分がかなり重要なポイントになってきます。
今回は、その『提案力』について、具体例を交えながら詳しくお話をしていこうと思います。

Aさんは、入社3年目の中堅プランナーです。日頃は、施行のプランニング業務を中心に、施行担当者として仕事を任されています。
ある土曜日、1組のカップルの第2回目打合せに入りました。通常、会場における一般的な打合せスケジュールとしては、以下のようなイメージです。

初回打合せ(約4~3か月前)
  • 今後のスケジュールのご案内
  • 各種パンフレット類お渡し
  • 招待状のご案内
  • 衣装のご案内(ドレスショップへ試着予約)
第2回目打合せ
  • 挙式、披露宴の進行内容ご提案
  • 1日のスケジュールのご説明
第3回目打合せ
  • プランナー及び各担当者との打合せ(司会者・装花・音響など)
  • メイクリハーサル
最終打合せ(約1か月~2週間前)
  • 最終的な進行内容の確認
  • お見積り内容やそれに関わる数量の最終確認

一般的な打合せ準備スケジュールをご覧いただきましたが、早い会場では半年前から、遅い会場でも3~4か月前から本格的な打合せに入ります。
Aさんが所属している会場では、お客様のご成約業務までは新規担当者、上記にあるような初回打合せからは施行担当者が行います。Aさんは、今、自分が担当している複数組全てのお客様へ、会場で大人気の演出をご提案しています。お勧めする理由としては、『今流行で大人気』だからです。では、『今流行で大人気』のものが、全てのお客様にも当てはまるでしょうか?決してそうではありませんよね。

例えば、あなたが黒パンプスを買いに行くシーンをイメージしてみてください。あなたが、靴屋さんに足を踏み入れると、黒パンプスがずらっと並んでいます。さぁて、どういったものが良いかなと思って、色々見ていると、その姿をキャッチした店員さんが『こちら人気ありますよー!良かったらお試しになりますか?』と近づいてきました。
あなたの心の内はというと、『あれ?私、どういうパンプスを探しているか何も言ってないけど・・・』
まさに、そんな状況です。
黒パンプスを探している目的は、人により様々です。就活用に歩き易いものとか、冠婚葬祭用に1足持っていたいベーシックなものをとか、パーティ用にキラキラした華やかなものをとか。黒パンプス1つをとっても、人それぞれの用途があるはずです。
この事例から何がお伝えしたいかと言うと、厳しい言葉で言いますが、目的を聞いてもいないのに提案するなということなんです。お客様がどういったものを求めているのか、予算はいくら位なのか、何に使用する予定なのか、必要最低限でもそういったことを確認しなければ、ご提案はできないはずです。お客様の求めていること【目的】がわからないのに、自分から提案をすることほど、身勝手なことはありません。

皆さんも経験上、この対応はないなと思うお店ってあると思います。いくら商品が良くても、値段がお手頃であったとしても、私はその店員さんからモノを買おうとはしません。イコール、そのお店でそれ以降に買い物をすることはありません。私の場合は、職業柄、目についてしまう部分が多いのかもしませんね。
ウェディングプランナーという職業は、究極のサービス業です。結婚式当日の数時間で数百万という高額商品をご提案し、かつ当日にならないと目に見える形にならない無形商材を扱っている、ウェディングのスペシャリストです。それは、新規担当者も施行担当者もどちらも同様に価値がありますし、誇れる仕事だと思っています。

ウェディングプランナーのAさんの話に戻りますが、Aさんは、打合せを通して、お客様が求めること【目的】を汲み取った上でご提案すべきでしたね。『この演出を披露宴のこのタイミングで入れたら、お二人のパーティイメージにより近づけますし、ゲストの皆様にも喜んでいただけるんじゃないでしょうか?そういう点から、私はこの演出をお二人にご提案させていただきます。』と提案するべきでした。お客様に提案しても、それがお客様の心に響かなかったら何の意味もない提案になってしまいます。これは、『提案力』スキルが低い証拠です。お客様と打合せをし、何かご提案する時は、自分がお客様の立場だったら、という風に考えてみたらいかがでしょうか?

お客様のお話を傾聴し、的確にお客様のニーズを捉えること、そして、そのお客様に合ったご提案を差し上げること。当たり前のこと過ぎて見過ごされがちになりそうですが、それを大切に考えられるウェディングプランナーは、予想外に大きく成長することを私は間近で見てきました。
私もまだまだ勉強することだらけですが・・・さぁ、皆さんもウェディングの真のプロフェッショナルになるために、一緒に頑張りましょうね!

次回は『結婚式に欠かせないプロフェッショナルとは~司会者編~』についてお話しします。お楽しみに。


PROFILE
山本 優貴Yuki Yamamoto 山本 優貴

ゲストハウスやプロデュース会社のウエディングプランナー及び責任者、その後に婚礼システム会社での法人営業を経てフリーランスに転身。
現在は、ブライダル系専門学校での講師やセミナー講師、また式場にて経営管理サポートや自身もフリープランナーとして大好きな結婚式に携わっている。
仕事をする中で、2度の産休・育休を経験し、「ママでも諦めない!」をモットーに、大好きなブライダルの仕事と子育てを上手く両立できるよう、業界内の働き方の多様性を目指し、日々奮闘中!

2014年度 BIA主催ザ マスターオブブライダルコーディネーターコンテストにおいて見事グランプリ獲得。

※全国のブライダル業界に従事する方々から、知識・経験・品格を兼ね備えたコーディネーターを選出するコンテスト