連日のオーバーワークや人間関係、社風に対する違和感など、職場におけるメンタルヘルス面が問題で体調を崩す方も見られるようになりました。
休職せざるを得ない状態になれば、社員本人の収入減にもつながりますし、会社としても生産向上性の低下だけではなく、良質な人材の確保ができなくなる恐れも出てきます。
メンタルヘルスの管理を行うことについて、国を挙げていろいろな施策が提示されていますが、会社としての取り組み方に関してはまだまだ発展途上という場合も見られます。
ここでは、職場単位で取り組めるメンタルヘルスケアに関してまとめてまいります。
メンタルヘルスケアが職場で必要なケースとは
メンタルヘルスとは精神や心理面での健康を指しています。
私たちは強い緊張にさらされると体に何らかの不調をきたすことがあります。
これが職場など特定の場で起こると、仕事をしなければ収入を得られない事実とのせめぎあいが起こり、メンタル面での疾患にかかってしまう可能性が高まります。
最悪の場合、自死を選ばざるを得ないケースに至ってしまうこともあるほどです。
では、職場で働く人が受けるストレスとはどのようなシチュエーションで起こるのか、ケース別に説明します。
職場での人間関係に悩むケース
OJTなどの指導担当者による、執拗かつ行き過ぎた指導などは、指導を受ける立場としては委縮してしまう傾向にあります。
また、上司の言動は、自己肯定感を低下させてしまうことにもつながります。
これが強いストレスとなり常に周囲の同僚に対しても劣等感を抱いてしまうことが考えられます。
また、第三者間のポスト争いや仕事上のトラブルに巻き込まれてしまい、中立の立場が崩れてしまうことでストレスを受けてしまうケースもあるようです。
職場で仕事上の問題で悩むケース
掲げた目標やノルマが達成できない、要領が悪いため与えられたタスクを消化できない、能力に見合わない業務が多い、というような自分の能力との乖離が生じているケースが考えられます。
また、カスタマーハラスメントに遭いやすいケースもあるかもしれません。
上司と顧客との板挟みになることで過度なまでのストレスを感じてしまうこともあります。
いずれのケースも自分では気づきにくいストレス
人間関係も、仕事面でのケースも「自分が頑張れば、事態は好転する」と誰もが思い込んでしまいます。
そのため、誰にも相談することなく改善を模索し、失敗を繰り返すといった悪循環に陥るケースも少なくありません。
自分でも知らないうちにストレスをため込んでしまい、体に不調をきたしてしまうことが一般的です。
厚生労働省では、職場におけるメンタルヘルス対策が「自殺やうつ病の発症を防ぐことができる重点のひとつ」であると位置づけ、平成22年秋からメンタルヘルス対策の推進を段階的に行っています。
平成27年12月には改正労働安全衛生法の施行によって、従業員数が50名を超える事業所を対象にストレスチェックの導入を義務付けるといった動きも定着しています。
メンタルヘルスケアを職場で取り組む意義 かんたんに解説!
「法律でストレスチェックが義務化されたから、実行しておけばよい」というようにメンタルヘルスを軽くとらえている職場は少ないと思われますが、会社単位でメンタルヘルスケアを怠ることは、結果として会社全体の利益を失う要因となります。
なぜ、メンタルヘルスケアを職場で取り組まなければいけないのかを少しだけ深堀し、わかりやすく解説いたします。
職場での生産性や活力の低下を防止
社員の一人がメンタルヘルスの不調により加療が必要だと診断され、休職することになった場合、職場全体の戦力が一人分減ってしまいます。
その一人分の仕事量をシェアするため、社員へしわ寄せがきてしまいます。
それぞれの社員も自分の仕事を抱えている状態ですので、そのしわ寄せを引き受けることになれば、生産性に影響が出てしまうことでしょう。
また倒れた理由が、職場が起因となるメンタルヘルス不調であることが明らかになった場合、その周囲の人々が活力を失ってしまうことも考えられます。
一人の不調で会社全体が勢いを失ってしまうことも考えられるため、未然に防ぐための「メンタルヘルスケア」が重視されます。
職場での集中力や注意力の低下を防止
メンタルヘルスの不調は、不眠などの症状も生み出します。
また常に落ち着かずソワソワするというような症状も併せて見られる場合があります。
このように集中力や注意力の低下が顕著になれば、事故やトラブルの元です。職種によってはたった一人の軽微なミスが死亡事故を招くこともあります。
社内トラブルはもちろん、一般市民を巻き込んだ大事故になれば、会社としての賠償問題に発展します。
会社側の不適切な対応のために社員の不調が悪化した場合には、労災請求や民事訴訟というような法的対応を迫られる場合もあります。
社員の心身の健康を常に留意し適切に対応していくことは、会社としての使命と解釈してもよいでしょう。
メンタルヘルスケアを職場で実践したい おすすめの対応とは
では、メンタルヘルスケアを職場で実践していく場合、どのような行動を実践することがよいのでしょうか。
会社全体での行動だけではなく、従業員(会社員)という個人レベルでの対処法などもまとめてまいります。
上司に相談しやすい環境づくり
仕事上や家庭での悩み、人間関係の悩みなどを誰かに打ち明けることはとても勇気がいります。また、自分自身の立場を貶めてしまうのではないか?という気持ちにかられることもあるはずです。
上司とフランクに話せるよう、オープンスペースを設けることや、人事評価の一環でもある上司と部下が1対1で話せる場でもある「1on1システム」などを導入し、定期的に上司と面談する機会を設けるといったこともよいでしょう。
また、上司が管理監督者の立場から、部下の勤怠や様子の異変を察知し、周囲と情報を共有することや、部下への声掛け・対処なども大切です。
ただし、管理監督者として上司が行うべき「ラインケア」に関しては、信頼関係の構築がなければ、部下の状況を悪化させてしまうことも考えられるので、メンタルヘルスに関する教育も必要になります。
同僚間での問題点の報告
一人ではなかなか言い出せないことも、職場内での相互支援を軸にした取り組みを行うことで、悩みを軽減することにつながります。
また先述、自分のストレスになかなか気づけないことに触れましたが、同僚からの指摘などで自分の状態に気づけることもあります。
同僚間での信頼関係の構築を進めると、チームワークができあがりますし、職場内でのサポートやフォローがしやすい環境づくりにもつながります。
フランクすぎるのも考え物ですが、同僚同士での話し合いと共有が、社員個人のメンタルヘルスの状況を好転させるカギにもなります。
労働者自身でできるセルフケア
知らずにストレスを蓄積させてしまうと、心身に不調をきたしてしまいます。
医療の手を借りても治癒に時間をかけてしまうこともありますし、入院加療や休職というように心身を休める選択をしても、職場の最前線から離れてしまうことに対し、ふがいなさから自己嫌悪に陥ってしまうことも考えられます。
このような悪循環は療養にも支障をきたすことは、誰もが容易に想像できる事柄です。
早い段階で自分自身が受けているストレスに気づくこと、体の不調がストレスサインであることに気づくべきです。
また、蓄積されたそのストレスをどのように解消していくか自分なりの方法を模索し、実践していくことが必要です。
ストレスと上手に付き合っていくことでメンタルヘルスの不調を防ぐことにもつながりますし、定時退勤日を設けることや、退勤後や休日は仕事から離れるというようなマイルールをつくってみることもよいのではないでしょうか。
まとめ
自分で行うメンタルヘルスケアもありますが、外部からの圧力はセルフケアをもってしても解消できません。
会社全体でメンタルヘルスケアに取り組むことで、メンタルヘルスの不調に伴う休職者などを減らすことができます。
会社で行うべき取り組みについてまとめてまいりましたが、会社全体でメンタルヘルスケアに関する共通知識を得ることも大切です。
これらを理解したうえで行う取り組みは、さらに社員一人一人の心の在り方や職務に対する意識を高めてくれることでしょう。