会社という組織で働く場合、管理職はどの部署においても必要不可欠な存在です。
しかし、管理職そのものの定義や意味、一般職との違いなど、あまり意識したことがない方も多いのではないでしょうか?
今回は、会社における管理職の定義や役割に加え、管理職に必要な5つの心得、管理職の向き・不向きについて解説します。
管理職とは何か?意味や定義について
管理職を知るためには、管理職の意味や定義、役割、一般職の違いを理解する必要があります。
管理職は単なる「部署の一番偉い人」ではなく、業務を遂行するために重要な役割を担っているのです。
管理職の定義と意味
管理職の定義とは、組織の各部署が主体的に業務を進めるために、「決裁権」を持つ役職のことを指します。
従業員の人数が多くなると、業務を各部署で分担することが最も合理的な方法です。
そのため、一般的な会社では、日常的かつ小規模な仕事などは、ある一定の範囲で部署内の独自の判断を許可する「権限委譲」を管理者に与えています。
つまり、仕事によって責任と権限が任せられ、独自に判断を下すことが管理職の重要な役割でもあるのです。
課長や部長(ミドルマネジメント)が管理職にあたり、一歩手前の係長や主任(ロワーマネジメント)は管理職の機能の一部を担当することが一般的です。
ただし、会社によっては、決裁権の範囲や基準が異なるため、どの範囲まで権限委譲されているかを理解しておく必要があります。
また、労働組合に加入できない役員(取締役、理事、人事権を持つ上級管理者など)を、管理職と呼ぶケースもあるようです。
管理職の役割について
独自の判断を下すだけでなく、管理職は以下の役割を果たす必要があります。
・部下の管理や育成
管理職は部下の仕事を管理、育成するという重要な役割が求められます。
部下のモチベーションを管理するための𠮟咤激励や、精神状態や健康面に気を配ることも管理職の仕事です。
また、部下の成長を見据え、適切な仕事を与えて育成することも求められます。
・部署内の全体把握や管理
部署内の全体像を把握することは、進捗の遅れやミスを防ぐために必要不可欠です。
部下は怒られることを恐れ、ミスを隠蔽したり報連相が遅れて取り返しのつかない事態になったりすることも珍しくありません。
部下の仕事の進捗に目を光らせることに加え、人員配置を変えるといったミスを回避するフォローも必要な仕事です。
・会社全体を把握
管理職は経営者側に立ち、会社全体の利益を上げることも考える必要があります。
会社側に意見が言える立場になるため、自分の部署だけでなく、会社全体を把握することが重要です。
管理職と一般職との違い
管理職と一般職の大きな違いは、求められる「責任」にあります。
管理職では、自身が権限を持つ部署において、部下の従業員に与えた役割を果たせるように管理し、組織として成果を上げる「成果責任」の義務を果たす必要があります。
一方、一般職は上司の指示された業務を遂行する「業務遂行責任」と、労力と時間を提供して役割を果たし、対価を得ることが一般職の役割です。
どちらも同じ会社の従業員ですが、経営者側に立って仕事を「管理」するため、管理職と呼ばれることも定義の1つといえるでしょう。
管理職の5つの心得を確認しよう
管理職の仕事を遂行するためには、以下の5つの心得を身に付けることが大切です。
仕事を管理
管理職は仕事の進捗状況を把握、管理するだけではなく、部下に仕事の指示を出すことも重要な任務です。
しかし、すべての仕事に管理職が関わるのではなく、部下だけで仕事が進められるように管理職が指導することが必要になります。
部下から上がってきた報告書などに目を通し、上司に提出できるかどうか、厳しくチェックしましょう。
また、仕事の危機管理も管理職に必要な仕事です。
トラブルが起こったときの対処法を常に考えておくことで、実際に問題が起きてもスムーズに解決できます。
もしもミスが起こった場合は、管理職は部下のミスを叱るだけでなく、「自分が責任を持つ」という姿勢を持つことが重要です。
自分の自信を管理
管理職は、自分の自信も管理する必要があります。
なぜなら、管理職として自信が持てないと、部下に指示ができず、部下に軽く見られてしまうからです。
管理する立場は部下に手本を示す必要があるので、威厳のある行動することが大切です。
とはいえ、いつも怒鳴っている管理職は職場が委縮する上に、管理職が不在になるとだらけることがあるので注意しましょう。
一方、自信がありすぎる管理職は部下に腕を見せつけ、管理職が主役、部下が脇役になるケースがあります。
結果的に部下の自信をなくしてしまうので、自信を出しすぎず、ときには部下に負けることも必要でしょう。
部下を管理
部下を管理するためには、部下の性格や能力を把握することでしょう。
個々の能力にあった仕事を割り振ることができるため、仕事の効率化が期待できます。
そのためには、部下とのコミュニケーションを図ることに加え、部下が話しかけやすい職場環境を整えることも大切です。
また、部下が仕事で成果を出したときは人前で褒めることで、モチベーションの向上につながります。
ミスの報告があった場合は、ミスを叱る前に報告があったことを褒めるとより効果的です。
「ミスをしたら報告をすることが大切」、という意識を根付かせることで、報連相が滞りなくできる職場環境になります。
ただし、ミスをしても叱らないようでは部下が成長しないため、感情的にならず、失敗した事実を叱ることを心がけましょう。
チーム外の人間関係の管理
課長や部長などの管理職は、部署内の部下だけでなく、部下の部下といったチーム外の人間関係も知っておくことも必要です。
部下を評価する権限を持っている場合、知らない部下の適切な評価ができません。
評価の差が生じることで部下のモチベーションの低下につながる恐れがあるので、関係のあるメンバー全員を知ることを心がけましょう。
経営理念の管理
経営者と部下の中間に位置する管理職は、経営者側の意思を部下に伝え、理解させる使命があります。
そして、組織が示す方針を達成するために、部下を同じ方向を向かせ、統率することが必要です。
たとえ受け入れがたい方針だったとしても、部下を納得させ、士気を高めることも管理職にとって重要な心得といえます。
管理職に向いている人、向いていない人の特徴について
管理職に必要な心得をもとに、求められる役割を果たせるかどうかは、管理職の「適性」の有無が影響します。そこで、管理職に向いている人・向いていない人は、以下の特徴があります。
向いている人
管理職に向いている人は、次のような特徴があります。
・自分の行動や助言で相手が成長し、頑張って結果を出すことに喜びを感じる
・成長することに対してモチベーションが高い
・目標を浸透させ、明確な実行手段を伝えて部下を導くリーダーシップ能力がある
・5年、10年先を見据え、今何をすべきかを考えられる
・部下に愛情を持ち、一人ひとりに細やかな気配りができる
・良好な人間関係を築くために、必要なコミュニケーションが取れる
部下をマネジメントする管理職において、部下を成長させ、成果を出してもらうことに喜びを感じる人は、最も管理職に向いているといえます。
また、リーダーシップ能力は部下を引っ張るタイプの管理職、一人ひとりに気配りできる人は、部下の意見を調整して業務を進めるタイプの適性があるでしょう。
誰とでもコミュニケーションが取れる人は、部下を知ることや部下に方針を伝えることに役立ちます。
向いていない人
管理職に向いていない人は、「無責任な人・仕事を一人でやりたい人・対外折衝が苦手な人」でしょう。
管理職は最終責任を取ることが仕事であり、部下の不安を解消させることが必要です。責任は取りたくない、ミスを部下に責任転嫁する、判断を部下に丸投げするなど、無責任な人は管理職の適性はありません。
また、仕事を教えるのが面倒で、一人でやった方が早いと考える人は管理職に向いていません。
部下の育成ができない上に、自分自身の仕事量が増え、管理職本来の仕事に手が回らなくなります。
管理職の仕事を職の仕事をするには、自部署だけでなく、ほかの部署との協力体制を取らなければなりません。
対外折衝ができない人は、自分の部署に閉じこもり、ほかの部署に要望を伝えられないケースがあります。
結果的に部下が働きやすい環境が作れないため、管理職に向いているとはいえないでしょう。
まとめ
管理職の定義は、決裁権を持つことであり、一定の範囲で独自の判断をすることができる役職のことです。
管理職の役割は多岐にわたりますが、どの場面においても心得を身に付けていると業務を遂行しやすくなるでしょう。
また、自分自身で管理職に向いていないと思い込んでいる人も少なくありませんが、実際に管理職に就くとやりがいを持って仕事ができる方もたくさんいます。
管理職のチャンスが巡ってきた場合は、向いていないからと断らず、思い切って挑戦する価値はあるのではないでしょうか?