目次
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  1. 1. 心理学が誕生する前
  2. 1. 心理学の「長い過去」
  3. 2. 心理学登場前、心は哲学として理解
  4. 2. 心理学の起源
  5. 1. 心理学実験室の誕生、「短い歴史」のスタート
  6. 2. ヴントの実験心理学とは
  7. 3. 現代の心理学
  8. 1. 実験心理学への批判が生んだ発展
  9. 2. 認知心理学の成立
  10. 3. 新たな発展
  11. 4. まとめ

医療分野はもちろん、教育や産業にスポーツ、犯罪・災害など、多種多様な分野で研究や活用が進む心理学。私たちは気付かないうちに、日常生活のなかで心理学の恩恵を受けています。

 

そもそも、現代心理学はどのようなプロセスを経て誕生したのでしょうか?

今回の記事では、古代ギリシャ時代にさかのぼり、心理学の発展の歴史を紹介します。心理学の歴史に興味のある方は、ぜひご一読ください。

心理学が誕生する前

 

ドイツの著名な心理学者であるヘルマン・エビングハウスは、1908年に出版した「Abriss der psychologie(心理学要論)」の冒頭で、心理学に関して「過去は長いが、歴史は短い」という象徴的な言葉を残しています。

 

古来より、人々は心と行動の関係について思うことは多々ありましたが、学問として研究対象になるまでには、相当の時間がかかったようです。

心理学の「長い過去」

心理学が誕生したのは140年ほど前といわれ、学問としてはかなり若い分野となります。しかし、古くから人々の「心」への関心は高く、哲学の一領域として古代ギリシャ時代からさまざまな考察がされてきました。これがエビングハウスのいう「長い過去」にあたります。

心理学登場前、心は哲学として理解

「なぜ愛するのか?」「なぜ怒るのか?」「なぜ喜ぶのか?」「なぜ悲しむのか?」など、人の心についての興味・関心は古くから存在していたのは確実でしょう。ただし、心の概念は、当時は宗教や哲学として理解されていたようです。

 

特に古代ギリシャでは、高名な哲学者ソクラテスの弟子であるプラトンらにより、長きにわたりキリスト教哲学が心理学の役割を果たしていました。

心理学の起源

17世紀に入ると、フランスの著名な哲学者デカルトが「生得説」を提唱しました。生得説は「人の能力・特徴は産まれながら」という考えで、遺伝をはじめとした生得的要因が、個体の発達に強く影響を与えるという説です。

 

生得説は「無意識」の分析につながり、のちの心理学に大きな影響を与えます。

 

心の解明は宗教や哲学からスタートし、長い年月をかけ、心理学という学問が誕生しました。近代に入り、研究や実験を経て心理学がどのように発展したのか、概略を解説します。

心理学実験室の誕生、「短い歴史」のスタート

19世紀に入ると、自然科学が急速に発展していきます。1879年、ドイツの生理学者ヴィルヘルム・マクシミリアン・ヴントがライプツィヒ大学に心理学実験室を開設しました。これをきっかけに、哲学の一領域から「科学」としての心理学が誕生します。

ここから、エビングハウスのいう「短い歴史」がスタートしたのです。

 

心理学実験室を開設したヴントは、実験心理学の父として今も心理学の歴史にその名を残しています。

ヴントの実験心理学とは

ヴントは、実験という方法で心理学を提案した功績者です。具体的には、内観法による反応時間の研究を行いました。

 

彼の実験心理学では、意識・要素(構成主義)・内観を重視しており、それぞれの言葉の意味は次のとおりです。

 

●意識

人が何かを経験するときの「意識」を分析して心を理解する。

 

●要素(構成主義)

意識経験はいくつかの要素で構成されるという考えで、細かい要素を集める。

 

●内観法

実験参加者自身に自己観察で意識内容を話させる手法。参加者自身の感覚に頼る部分があり、客観性に問題が残る。

現代の心理学

 

心理学はドイツで誕生しましたが、その後どのような過程を経て現在の心理学にいたったのでしょうか?

 

実験心理学への批判から認知心理学の成立までの流れを解説します。

実験心理学への批判が生んだ発展

20世紀になると、ヴントの実験心理学は意識を対象としていること、その意識を要素に分けて考えることなどが批判の対象となっていきます。

 

ヴントの実験心理学の批判の論点は以下の3つです。

この批判は、やがてゲシュタルト心理学・精神分析学・行動主義心理学を生み出し、心理学は次のステップを踏み出します。批判の対象としての実験心理学があったからこそ次の段階へ進めたわけで、ヴントが功労者であることに変わりありません。

 

●ウェルトハイマーによる「全体性」

人の複雑な行動や心理は要素に分解するのは困難で、全体性や構造を重点にとらえるべきもの。大切なのはあくまでも全体性である。

→ゲシュタルト心理学へ発展

 

●フロイトによる「精神分析」

「意識」以上に重要なのは、豊富な知識が蓄積されている「無意識」の働き。無意識は「思い出したくない観念や感情の集まり」であり、意識と無意識の間は「自我」が調整する。

→精神分析学へ発展

 

●ワトソンによる「行動主義」

「内観」は外部から観察できないうえに、本人の主観・思い込みがまぎれこみがち。客観的に観察できる「行動」だけを研究対象とするべき。

→行動主義心理学へ発展

認知心理学の成立

1950年代に入ると、今度は「やはり行動の裏にある心を考えるべき」という考え方が台頭します。これが認知主義の発祥で、ここから現代心理学の主流となる認知心理学が登場しました。

 

認知心理学とは、思考や記憶、意思決定といった人の認知過程を解明し、人間を理解しようという学問です。現代の認知心理学では、人が意識的および無意識的に行っているさまざまな情報処理の仕組みが、徐々に明らかになってきています。

 

人がどのように対象を見ているのかを明らかにする認知心理学は、人間の心のメカニズムの解明に不可欠の学問です。

新たな発展

医学の進化とともに、心理学は医学のなかの一分野として地位を確立しました。時代とともに心理学の分野はさらに拡大し、犯罪・スポーツ・教育・災害と、さまざまな分野で社会に貢献しています。

まとめ

人類は古くから心の動きに強い関心を持っており、古代ギリシャ時代では、心の概念は哲学・宗教で説明されていました。

 

1879年、ドイツの生理学者ヴントが心理学実験室を開設し、科学としての心理学の歴史がスタートしました。ヴントの主張への批判から、ゲシュタルト心理学・精神分析学・行動主義心理学が生まれ、心理学は次のステップを踏み出します。

 

1950年代には認知心理学が登場し、現代では心理学はさまざまな分野で社会に貢献しています。

 

心理学には、このような歴史があります。心理学がたどってきた歴史を知ることで、心理学への理解も深まるでしょう。