社会人として長く勤めていると、次第にリーダーとして部下やチームをまとめる機会が増えていきます。なかには「仕事は好きだが、リーダーには向いてない」「人を動かすのが苦手」と考える人もいるでしょう。リーダーに向いてないのに、リーダー的な役割を任されてしまうと、仕事が苦痛で「辞めたい」と感じることがあるかもしれません。
しかし、自分で「リーダーに向いてない」と感じていたとしても、実際には意外とそうでもないケースがあります。ここでは、リーダーの資質や向いていない人の特徴、リーダー向きでない人が取るべき対処法などについてご紹介しています。
一般的に言われているリーダーの資質と向いていない人の特徴
まずは、一般的に「リーダー向き」と考えられる人の資質と、そうでない人の特徴について見てみましょう。
一般的に言われているリーダーの資質
「リーダー」と聞いてまずイメージするのは、どんな場面でも自分の考えをはっきりと表明できる「自己主張の強さ」ではないでしょうか。周囲の人々をまとめ、1つの方向へと誘導するためには、反対意見が多いときでも自分の主張を通さなければならない場合があります。
「できない」「無理がある」といった後ろ向きの考えや、リーダーとして自分の指導に賛同を得てもらうにあたり、それまで培ってきた実務能力や作業の早さ、決断力といった力が求められるのも事実です。
人前でのスピーチにも臆することなく、人を引っ張る情熱や押しの強さ、細かいことにこだわらない器の大きさなども、リーダーとしてよく挙げられる資質といえます。しかし、このような資質を持っている人は、しばしば自己中心的な振る舞いをしたり、人の意見に耳を貸さなかったりとワンマンな行動を取りがちです。
長いものに巻かれるイエスマンばかりであれば活躍できるかもしれませんが、周囲の協力が得られにくく、自分の負担ばかりが増えたり、あるいは横暴な指導についていけない部下が辞めてしまったりする原因にもなりかねません。
リーダーに向いていない人の特徴
一方で、リーダーに向いていない人の特徴として「1人でなんでもやろうとする」という点が挙げられます。意外に感じるかもしれませんが、チーム全体のパフォーマンスを上げるためには、リーダー1人の能力頼りでなく、全員の能力を最大限に引き出す必要があるのです。
そのためには、1人1人の思いや悩みに寄り添うことが重要となります。自己主張が強いばかりで人の話を聞かず、部下の悪い点ばかりを指摘して良い点を褒めない、といった思いやりのない態度を取りがちな人は、一見リーダーに向いているようで、実は向いていないというケースはよくあります。
たとえ自分が「一般的なイメージとしてのリーダー像」に当てはまらなかったとしても、向いていないとすぐに判断するのは早計かもしれません。表面的な振る舞いだけでなく、リーダーとして本当に必要な資質が自分にあるかどうかに着目することが大切です。
組織のリーダーに必要な資質・素質とは
一般的なリーダーの資質とは別に、仕事としてのリーダーや会社組織のリーダーに求められる資質・素質には、以下のような点も重要となります。
部下を信頼し、任せる勇気
組織に属する人材の割合として、「2:6:2」と呼ばれる法則をご存じでしょうか。どのような会社においても、優秀で仕事のできる人は全体の2割であり、6割は平凡で人並みの能力、残りの2割は仕事に対して消極的な人で占められている、といわれるものです。
この法則は、どんなに優秀な人材を集めたとしても、そのなかで2:6:2の割合が生まれてしまうともいわれています。「全員が一丸となり、優秀な成績を出す」という理想は残念ながら実現が難しく、どうしても個人差ができてしまうのです。
しかし、だからといって「この組織は変わらない」と諦めるのは、リーダーの仕事ではありません。たとえ割合が変わらなくても、個々のパフォーマンスを底上げすることは可能だからです。「この人には任せられない」「どうせ失敗するだろう」と決めつけず、信頼して任せることが重要となります。
失敗してもフォローが可能な案件や、最終的に自分が責任を取れる範囲で仕事を割り振り、部下を育てる気持ちで任せる勇気を持つことは、組織のリーダーとして大切です。
頼りない雰囲気が意外に士気を高めるケースも
「尊敬できるリーダー」「完璧なリーダー」ばかりが、組織を成長させるわけではありません。たとえば、三国志の劉備は戦略や指導力に難があるにもかかわらず、どこか放っておけない風情と人情の厚さから、多くの優秀な人材を集めることに成功しています。
一見頼りなく、いわゆる「天然」といわれるような抜けを感じさせる人であっても、それが愛すべきキャラクターとなり、人望や人脈を作る魅力となっている社長も多いのです。
「自分がやらなければ」と気負うのではなく、「あなたの力が必要だ」と周囲に頭を下げ、「この人には自分が必要だ」と周囲に思わせるのも、仕事を成功させるリーダーの素質として見過ごせない能力であるといえるでしょう。
リーダーに向いてないと感じたときの対処法
「それでも自分はリーダーに向いていない」と感じる人は、以下のような対処法を試してみましょう。
積極的にコミュニケーションを図る
信頼関係を築くにしても、相手の力を理解するにしても、まず大切なのはコミュニケーションです。いきなり核心を突く質問を投げるのではなく、日ごろからささいな声かけを積極的に図ることにより、相手も胸の内を話しやすくなります。
「今日は元気だね」「この間の資料、凄く読みやすかったよ」など、ポジティブな声かけを意識しておこなうと良いでしょう。
人の意見に耳を傾ける・相手の気持ちを汲み取る
積極的にコミュニケーションを取ろうとしても、的外れな意見ばかりでは「この人は自分のことを理解していない」と思われてしまいます。その人がどんな点に不安や不満を持っているか、どのような場面でやりがいを感じるのかなど、人の意見に耳を傾けて気持ちを汲み取ることが大切です。
こうした「傾聴」の能力は、聞き役に徹することで徐々に磨かれていきます。相手の気持ちを理解して、はじめて心に響く自己主張が実現できるともいえるでしょう。
1人の時間を大切に過ごす
ここまで見てきたリーダー像からもわかるように、周囲への気配り、目配りといった「人にかける情熱」がリーダーの資質として重要となります。
人に気持ちを傾けるには、自分に心の余裕がなければ難しいものです。仕事を離れたプライベートでは、1人の時間も大切にしてストレスをうまく解消し、自分自身を褒めてあげることも忘れないようにしましょう。
どうしても難しい場合は、上役に相談しよう
部下がリーダーに頼るように、リーダーもまたその上役に頼れることを忘れてはいないでしょうか。会社の社長でさえ、先輩経営者や先代社長、会長などに相談することもあるのです。
リーダーとして行き詰まったり、荷が重いと感じたりする場合には、遠慮せず上司や先輩へ相談し、アドバイスをもらうのも1つの方法です。人を頼ることは、「その人を信頼する」という意思表示にもつながります。相談された上役は「こんなこともできないのか」と感じるより、悩んで自分を頼ってきた嬉しさを大きく感じることでしょう。
まとめ
一般的に自己主張が強く、自信にあふれて有能な人がリーダーとしてイメージされやすいものですが、自分の能力よりも、いかに人を信頼し、頼れるかどうかがリーダーの資質には重要です。積極的にコミュニケーションを取って相手の気持ちを汲み取り、悩んだら上司に相談しながら解決策を探すことで、自身のリーダーとしての能力も向上していくことでしょう。