サーバントリーダーは、これまで企業や組織で配置されていた、強いリーダーシップを発揮してチームを先導する支配型リーダーとは異なります。
現在、サーバントリーダーへの注目が高まってきていますが、サーバントリーダーを配置することで、なぜ部下のモチベーションが上がったり企業が成長したりするのか、疑問を抱く人も多いのではないでしょうか。
ここでは、サーバントリーダーとは何かといった基本的な解説をはじめ、支配型リーダーとサーバントリーダーの役割の違いや、サーバントリーダーの特性について解説します。
サーバントリーダーとは?
サーバントリーダーの特徴や魅力、従来の支配型リーダーとサーバントリーダーとの役割の違いについてご紹介します。
サーバントリーダーの特徴や魅力
サーバントリーダーの「サーバント」は、召使や使用人といった意味があります。いずれもリーダーとは異なる意味ですが、「サーバント+リーダー」とつなげることで支援型・奉仕型リーダーという意味になるのです。
つまり、強いリーダーシップが求められる支援型リーダーではなく、部下をサポートして集団に奉仕するリーダーという意味で使用されています。
集団のモチベーションを維持しながら向上心を持って業務に取り組み、組織力を向上させて目標達成を目指すことがサーバントリーダーの役割です。
ただし、サーバントリーダーは、部下に従順な優しいリーダーというわけではありません。部下が誤った行動をとったり、的外れな目標を立てたりした場合には、指摘・指導して改善させることも重要です。
支配型リーダーとサーバントリーダーの役割の違い
サーバントリーダーは、部下とのコミュニケーションを大切にして、奉仕、サポートすることが特徴です。どのように立ち振る舞えばチームメンバー個々の能力が活かされるのかを検討します。
サーバントリーダーは支援型・奉仕型リーダーであり、カリスマ性や強力なリーダーシップが重要視される支配型リーダーとは異なります。
サーバントリーダーが現代に求められている理由
これまでの日本の一般的なリーダーシップスタイルは、支配型リーダーシップでした。
しかし、職場の環境が変化し、多様な価値観を持つさまざまな人材による組織形成が進んでいる現代においては、支配型リーダーシップとは大きく異なるサーバントリーダーシップを採用する企業が増加傾向にあります。
このような社会の変化などをふまえながら、現代の社会でサーバントリーダーが求められている理由について詳しく解説します。
働き方改革による変化
働き方改革の施行をはじめ、少子高齢化による労働人口の減少に対応するためにも、現代では個人の働き方に対する価値観を重視しながら組織づくりをしていく必要があります。
多様な人材を採用する経営方針の基で個々の価値を発揮させるためには、組織に属する人間同士のコミュニケーションと信頼関係の構築が重要となります。
多様性のある価値観を重視しながらも組織として目標を達成することが求められるなかで、部下の価値観(能力や考え方)を重要視するサーバントリーダーシップが注目されています。
デジタル化
これまでは、上司が合理的で的確な命令や指示を出し、部下が命令どおりに行動することで成果を挙げられました。そのため、上司の経験を基にした支配型リーダーシップが多くのケースで重要視されていたのです。
しかし、現代では業務のデジタル化が進み、従来人間が行なっていた業務を機会が担うことも多くなりなりました。結果として、機械には創造できないアイデアを生み出すことが、企業の従業員に求められています。
サーバントリーダーはチームメンバー個々の能力を引き出し、彼(彼女)らが持つ知識を用いて、デジタル化が進んでもカバーできないイノベーションを創造できます。デジタル化が進む現代においては、サーバントリーダーの存在が重要になるといえるでしょう。
サーバントリーダーが持っている10の特性
企業で活躍しているサーバントリーダーには、いくつかの特性があります。日本サーバントリーダーシップ協会が提示する10の特性についてチェックしてみましょう。
傾聴
部下が何を望んでいるのかを理解するために、しっかり話を聞くことができる。
共感
部下の立場に立って考え、どれほど仕事ができる人間でも完璧ではないことを念頭に、相手を受け入れる気持ちを持つことができる。
癒やし
部下をリラックスさせて本来持つ能力を発揮させるとともに、チームメンバーが互いにサポートし合える関係を作ることができる。
気づき
業務や目標、部下の行動など細かなことに気づき、部下にも気づかせることができる。
説得
上司として支配するのではなく、部下が自然と自分の意見を聞き入れるように促すことができる。
概念化
個人目標やチームを明確に示し、部下に理解させることができる。
先見力
これまでの経験と現在起こっていることから未来を予測することができる。
執事役
自身の利益ではなく、部下の利益を喜ぶことができる。
人々の成長に関わる
個々が持つ能力を把握し、成長できるように促すことができる。
コミュニティづくり
チームメンバーが成長できるコミュニティをつくることができる。
サーバントリーダーとして部下をサポートするためにも、生産性の高い組織形成を実現するためにも、サーバントリーダーはこれらの特性を理解・実践してチームをまとめる必要があります。
まとめ
サーバントリーダーは、旧来のカリスマ性や強い先導力で部下を引っ張る支配型リーダーではなく、部下一人ひとりの話に耳を傾けながら、部下を支えてチームに奉仕する、支援型・奉仕型リーダーです。
部下の成長や目標達成に対する主体的な行動を支援し、部下から信頼を得ることで組織として主体的に協力してもらえる状況を作り出すのが、サーバントリーダーの特徴です。
働き方や価値観の異なる多様な人材を育成し、革新的なイノベーションを創造するような組織づくりを行ううえでも、サーバントリーダーはこれからの組織運営にとって重要な役割を担っています。