組織の中で長く働いていると、一般職から管理職にキャリアアップすることは一連の流れといえます。しかし、管理職への打診を受けた場合、「管理職に向いているのか?」という疑問を持つ方も多いでしょう。今回は、管理職に向いていない人の特徴と、管理職に向いていないと感じた場合の対処法について解説します。
管理職に向いていない人の7つの特徴
通常業務とは別の能力を求められる管理職は、人によって向き不向きがあるのは確かです。そこで、管理職に向いていない人は、以下の特徴があります。
リーダーシップ能力が足りない人
管理職に向いていない代表的なタイプは、リーダーシップ能力が足りない人でしょう。
管理職に必要なリーダーシップ能力とは、自らが方針や方向性、戦略を示し、部下をひとつに統率することです。具体的な例でいうと、積極的に仕事を生み出す実行力、部下を上手に扱う、部下の感情を見極めた適切なフォロー、などのスキルや行動が求められます。
つまり、組織やチーム全体の状況を把握することが重要であり、自分のことだけで精一杯、という方は、リーダーシップ能力が不足している証拠といえるでしょう。
マネジメント能力が足りない人
マネジメントとは、目標達成のために組織を管理・運営しながら、部下の能力開発や育成を行い、生産性の向上に努めることです。それらを実現するために必要なマネジメント能力とは、問題解決能力やコミュニケーション能力、意思決定力など、さまざまなスキルが必要になります。
つまり、マネジメント能力が足りない人は、適正に合った仕事を部下に与えられず、チームとしてのパフォーマンスが低下し、業績悪化になるリスクも否定できません。
そもそも仕事ができない人
当然ながら、仕事ができない人は管理職の適正がないといっていいでしょう。このタイプが管理職に就いた場合、仕事を部下に振るバランスが上手く取れず、優秀な部下だけに仕事が集まり、そうでない部下との差が生じるケースも少なくありません。
また、変化する状況に応じて判断をする必要がある管理職は、「自分の頭で考えない人」も向いていない特徴の1つです。
チームで仕事をするよりひとりの方が効率の良い人
仕事をひとりですべてやろうとする人は、管理職に向いているとはいえません。このタイプは部下に仕事を振らないことが多く、部下にとって仕事がやりにくい上司の代表的なタイプです。
平社員では通用する方法でも、組織を管理・運営する管理職では能力が足りないと見なされます。
誰に対しても平等に接することができない人
部下に対して平等に接することができない管理職は、お気に入りの部下を「えこひいき」することが少なくありません。たとえば、同じミスをしても他の部下に厳しく指導する一方、お気に入りの部下はミスを見て見ぬふりをするなど、露骨にえこひいきをするケースも見受けられます。
相手によって対応を変える上司は部下の信頼を得られないばかりか、組織全体のパフォーマンスが低下する可能性も高くなります。人間である以上、部下との相性の良し悪しは必ずありますが、ビジネスには関係ないことと理解することが重要です。
感情の起伏が激しい人
管理職は常に冷静を保ち、あらゆる場面でも心の余裕を持つことが大切です。
もしも気分屋で感情の起伏が激しい人が管理職に就いた場合、気に入らないことがあると部下に八つ当たりをするケースも珍しくありません。部下は上司の顔色をうかがいながら仕事をしたり、常にストレスが溜まっていたりと、本来のパフォーマンスを発揮できなくなります。
会社の良くない部分を受け入れきれない人
できる管理職は、会社の良くない部分を理解している方が多いのが特徴です。悪い面を受け入れることは、言い換えれば社内の問題点や課題を認識していることになります。
一方、上の指示に忠実に従う、いわゆる「イエスマン」では、問題点に気付くことすらできません。
女性は管理職に向いていないと言われている?
課長職以上の女性管理職を増やし、全体比率の30%以上を目標とすることを政府が掲げています。しかし、都内企業で管理職に就いている女性の比率は、まだまだ少ないのが現状です。東京都がまとめた男女雇用に関する調査において、2017年度の調査結果は以下の通りです。
・係長…25%
・課長…9.6%
・部長…6.5%
・役員…6.8%
なぜ、このように女性の管理職が少ないのかというと、「女性に任せるべきではない」という風潮が未だに根強いことが背景にあります。課長職以上の管理職に昇進するとなると、出世に対する嫉妬や能力に関する不満などのしがらみが生まれるものです。そのため、「昇進を打診されても引き受けない」という女性社員も少なくありません。
この状況を改善するために、東京都では女性管理職を増やす取り組みが行われています。女性管理職が特に少ない中小規模では、他社の先輩女性管理職と交流できる環境作りを推進しています。
また、1年以上の育休を取得した社員(母)が3か月以上働いた場合、企業に対し125万円、父親も育休を取得すると5日で25万円支給する仕組みを始める予定です。育休の代替要員の費用補充と、育児と仕事の両立を支援することを目的としており、男女ともに働きやすい環境作りと、女性のさらなる活躍が期待されています。
管理職に向いていないと感じた時の対処法
管理職に就いたものの、実際に業務をする中で「管理職に向いていないと気付かされる」ケースはよくあることです。しかし、簡単に管理職を降りることは難しいため、以下の対処法を取り入れることをおすすめします。
派遣社員で働く
管理職は基本的に正社員がなる場合が多いため、自社の組織とは別の環境で働く、派遣社員を選ぶことも1つの方法です。会社組織にとらわれない立ち位置なので、マネジメントから遠ざかることができるメリットがあります。
正社員としての立場ではなくなるものの、派遣社員でも職種やスキル次第で、正社員並みの待遇が受けることも可能です。派遣会社への登録は在職中でも可能なので、どのような条件の仕事があるかを相談しておくといいでしょう。
上役に向いていないことを相談する
管理職を降りたいという旨を、会社の上役に相談しておく方法が有効です。会社としては管理職を続けて欲しいのが本心ですが、退職される方が会社にとってマイナスになります。
また、配置転換や降格をすぐに対応できない場合でも、交渉する余地は十分にあります。降格したら一般職で残ることを示唆すれば、会社側も柔軟に対応するでしょう。
ただし、社内が深刻な人手不足の状態にある場合、何としてでも管理職として育てたいという会社もあります。交渉をしても拒否されたり、厳しい処置を受けたりする可能性もあるので、転職先を見つけておくことも有効です。
どうしても難しい場合は転職も視野に入れる
管理職として働くのが困難な場合は、いっそのこと転職するという手段もあります。しかし、企業で働く以上、管理職という職務は必要になるので、自分ができる業務範囲の管理職に転職する方法がおすすめです。
管理職は、人材育成や目標・計画設定など、さまざまな業務がありますが、会社によって範囲や負荷が異なります。向いていないと感じる管理職の業務を自己分析した上で、業務範囲が自分にできることであれば、管理職が務まる可能性は十分あります。
たとえば、部下が多く育成が難しいなら小規模な会社へ、人間関係で苦労した場合は人柄重視など、不得意をカバーするには発想を転換して考えましょう。
まとめ
管理職の業務は、部下の育成や目標設定、組織全体の管理など多岐に亘ります。そのため、誰でもできるような簡単な仕事ではなく、向く人、向かない人がいるのは確かです。今後管理職になる可能性がある方は、向いていない特徴が自分に当てはまるかをチェックしましょう。また、女性の管理職は少ないのは、管理職を受けにくい環境が大きな要因です。男女ともに働きやすい環境作りが進んでいるので、女性管理職は増えることが期待されています。
そして、管理職で働くのが難しい場合、すぐに退職を選ぶのではなく、在職中にやれる対策を行うことが大切です。管理職といっても会社によって求められる業務が異なるので、向いていないと決めつける前に、発想を少し変えてみると解決の糸口が見つかるかもしれません。