<修了生インタビュー> 新宿校修了生、田久保布美子さんにお話をお伺いしました。
FM局のアナウンサー、コンピュータソフト会社のインストラクター、アパレルでの接客業など様々なキャリアの後、結婚を機に専業主婦に。子どもの小学校入学をきっかけにヒューマンアカデミー日本語教師養成講座に通う。2021年4月より、江戸川区立清新ふたば小学校の「放課後にほんご広場」で日本語教師として活躍中
■人前で話す仕事で気付かなかった日本語の難しさ
—日本語教師を目指したきっかけを教えてください。
前職は百貨店で洋服の販売の仕事に携わっていましたが、ここ10年間ほどは専業主婦をしていました。子どもが小学校に入って時間ができたので、何か仕事をしたいなと思っていました。
日本語教師という仕事は、行きつけのネイルサロンのネイリストさんに勧められて初めて知りました。たまたま、その方がヒューマンアカデミーのネイリスト講座の修了生だったんです。ご主人が外国籍なので、いずれ海外に行くことを考え、ネイリストか日本語教師になろうと思ったのだそうです。私が外国に興味があることも知っていたので、「日本語教師をやってみたら?合うと思いますよ」と勧めてくださり、パンフレットを取り寄せてみました。
そんな折、小学生の息子の担任の先生が家庭訪問でいらっしゃった時に、そのパンフレットを見て「日本語教師の需要が高まっているので、ぜひやってみませんか?区役所の担当者をご紹介しますよ」と言われたんです。そんなタイミングが重なり、日本語教師を目指してみようと一念発起しました。
—ヒューマンアカデミー以外のスクールなどは検討されましたか?
私は20代の頃、㈱FM仙台でアナウンサーの仕事をしていた時に、ヒューマンアカデミーのアナウンスライセンス講座で講師をしていたことがあるんですよ。そんなご縁もあってヒューマンアカデミーの良さを知っていたので、他の学校はまったく考えませんでした。
—すごいご縁ですね!実際に受講されていかがでしたか?
子育てしながらだったので、正直とても大変でした!テスト前などは、子どもが寝てから夜中の3時まで勉強するということもしばしばでしたね。アナウンサーの後、コンピューターソフトのインストラクター、百貨店での接客の仕事を経験し、人と話すことには慣れていると思っていましたが、普段何気なく使っている日本語の難しさを改めて実感。まだこんなに学ぶことがあったんだ!と痛感しました。でも、学んだことは人に教えたくなるようなことばかりでしたね。まだまだ吸収しなければならないことがたくさんあるので、これからも長く楽しみながら働ける仕事だなと思いました。
■日本人の友達ができると、子どもは一気に伸びる
—現在のお仕事はどのような経緯で始められたのですか?
江戸川区で日本語教師の需要があると教えてくださった先生が別の学校に赴任されてしまったので、直接区役所に問い合わせてみました。ちょうど今年度の4月から、外国籍児童の日本語学習を支援する新事業を試験的にスタートするということで、そこで採用していただきました。振り返ると、本当にいいタイミングが重なって今に至っていると思います。
—具体的なお仕事内容を教えてください。
現在は放課後を利用し、子どもたちに生活言語を教える「放課後にほんご広場」を担当しています。全12回の授業で、「わかる」「わからない」や、具合が悪い時やケガをした時の自分の状態など最低限の意思を伝えられるようにしていきます。場面シラバスで「こんな時にどうするか」を考えながら日常会話を身につけ、日本人の友達ができるようになることが目標です。子どもたちって、日本人の友達ができると日本語力がぐんと伸びるんですよ。まったく日本語がわからない子も、1ヵ月くらいでかなり日本語が話せるようになります。そのスイッチがおもしろいです。
■学びに来る子は全体の1割・・・家で気軽に学べる動画を配信
—先ほど、日本語教師の需要が高まっているというお話でしたが、外国籍の児童は増えているのですか?
増えていますね。特に最近では、インターナショナルスクールから普通の小学校への転入が多いです。インターナショナルスクールでは日本の小学校の卒業資格が得られないので、中学受験ができないという理由があるようです。そういった背景から、日本語を教える人材は今とても求められています。例えばヒューマンアカデミーに在学中の受講生が実習として経験できる場に活用できればいいのではと個人的には考えています。
—「放課後にほんご広場」に来る生徒も増えているのでしょうか?
清新ふたば小学校には100人近く外国籍児童がいますが、「放課後にほんご広場」に来ているのはほんの1割程度です。「日本人の小学校に入れているだけでも本人は大変なのに、放課後まで日本語の授業を受けさせるのは可哀想だ」と考えている親御さんが多いようですね。そこで、そんな子どもさんが家で気軽に見て学べるYou Tubeチャンネルを作ろうと思い、「放課後にほんご広場」を10分に凝縮した「にほんご ひろば」というオンライン日本語講座を開設する準備もしています。既にテスト版を作って東京都教育委員会から了承をもらっており、2月にはスタートする予定です。当面は、オンラインでも対面と同じくらいのクオリティで教えられるようスキルアップしていきたいですね。
「にほんご ひろば」
https://www.youtube.com/watch?v=0Hx-jqTuv8U
■子どもの日本語教育は未来がある
—日本語教師として、今後の展望をお聞かせください。
今年から、区立中学校の生徒と、来年度小学校に入学する新一年生に教えることが決まりました。幼稚園児や保育園児に教えるのは初めてですが、とても楽しみです。
余談ですが、仙台時代に一緒にアナウンサーをしていた方が今参議院議員をしていて、外国籍児童にとても興味関心があるそうなんですね。そこで、特定技能外国人に日本語を教えているヒューマンアカデミー時代の友人と一緒にその方を訪ね、これからの日本語教育のために何かできないか画策中です。こうしたご縁を活かしつつ、私は現場で四苦八苦しながら、日本語教育の未来のためにできることから始めたいと考えています。
あと大きな目標としては、いずれ海外、特にフィリピンに行って現地の子どもたちに日本語を教えるのが夢です。
—フィリピンには何かご縁が?
夫の職場にフィリピンからの技能実習生が多いということも理由の1つですが、昔セブ島を旅行した時に、フィリピン人の女性3人組に「日本人ですか?私たち、今日本語を勉強しています。少し話してもいいですか?」と声をかけられたことがあって。日本語教師になろうと決めた時に真っ先に浮かんだのは、その時の彼女達の明るく楽しそうな顔だったんです。フィリピンでも大人は日本語を学ぶ機会がありますが、学ぶ機会の少ない子どもに日本語を教えたいなと。
息子が幼稚園の時、謝恩会で同じ係になったベトナム人のお母さんがいたのですが、その方は日本語も英語も話せなかった。日本語が堪能なお父さんが「本当は妻も娘も日本語学校に通わせたいけど、なかなか難しい」と言っていましたが、少しでもこうした方の力になれる日本語教師になれたらと思っています。
—最後に、田久保さんにとって日本語教師の魅力とは何ですか?
「子どもの日本語教育は未来がある。」それが、私のモチベーションになっています。子どもの吸収力や成長には目を見張るものがあります。どんなに失敗してもトライし続ける前向きさに、いつも感動します。普段、学校での我が子の姿を見ることができない私にとって、子育ての勉強にもなりますし(笑)。トライして、友達に助けてもらって、時には喧嘩して笑い合って、成長していく姿を一緒に見られるのは、子どもの日本語教育ならでは。苦労や労力は大人の日本語教育以上にかかると思いますが、その何倍もの感激があります。
子どもたちには、日本語が上手になってもらいたいのではなく、日本語が使えないことで「できなかった」「仲間に入れなかった」ことがないようになってほしいと願っています。知りたいのにできないといった消化不良を抱えたままの子どもたちって、たくさんいるんですよ。それを1個ずつ消化してあげることで、やっとひとつ前に進めると思うんです。日本語を自分の武器のひとつとして身につけてほしい。その思いをとても大切にしています。