2025年11月に刊行された『登録日本語教員 養成課程コアカリキュラム 完全攻略ガイド』は、新制度のもとで日本語教師を目指す方や、現場で教える日本語教師の学び直しを支える一冊です。
今回の記事では、長年にわたり日本語教育現場および日本語教師養成に携わり、ご自身も日本語教育能力検定試験合格・登録日本語教員資格を取得し、新制度の動向を実体験として見てこられた講師に、本書を通して感じたことを伺いました。
日本語教員試験の対策教材として、また「これからの日本語教師像」や「学び直しの意味」について、実践と養成の両方を知る立場からの視点が語られています。
■Profile
佐藤 理恵子
養成講座を受講し日本語教師に。国内日本語学校、シンガポール、タイでの日本語教育経験を経て、帰国後に東京大学大学院で修士号を取得。現在は東京都立大学非常勤講師、ヒューマンアカデミー日本語教師養成講座講師など。「やさしい日本語」の普及に関心があります。二児の母。
日本語教師必携の教材『登録日本語教員 養成課程コアカリキュラム 完全攻略ガイド』最速レビュー
2024年に国家資格としての登録日本語教員制度が開始され、日本語教育業界は大きな変革期を迎えています。新制度のもとで日本語教師を目指す方や、試験合格を目指す受験生にとって、「どの教材・テキストを選べばよいか」は最大の悩みどころではないでしょうか。
2025年11月には、翔泳社から『登録日本語教員 養成課程コアカリキュラム 完全攻略ガイド』(ヒューマンアカデミー編)が出版されました。今日は本書を読みながら、これからの社会で期待されている日本語教師の役割について考えてみましょう。
新制度 登録日本語教員を通じて示されている「これからの日本語教師像」
2001年にCEFR(ヨーロッパ共通言語参照枠)が公表され、世界の言語教育は大きく変化しています。CEFRの指針を踏まえ、日本語教育においては2021年に「日本語教育の参照枠」が公表されました。この参照枠では、
1.日本語学習者を社会的な存在として捉える
2.言語を使って「できること」に注目する
3.多様な日本語使用を尊重する
が3つの柱として据えられています。言い換えれば、母語話者のようになることをゴールとする言語教育観を見直し、語彙や文法といった知識の量を増やすだけでなく、学習者が社会の一員として「できること」に着目しようというパラダイムシフトが起こっているわけです。これからの言語教師に求められる役割や日本語教員試験においては、単に知識を伝授することではなく、学習者の自律的な学びを促し、その可能性を拡げられることになっていきます。
『登録日本語教員 養成課程コアカリキュラム 完全攻略ガイド』が登録日本語教員の教材として選ばれる理由
本書はこれから日本語教師を目指す初学者の方にとって分かりやすく、また現職の先生方にとっても学び直しができるものになっています。登録日本語教員実践研修・養成課程コアカリキュラムを網羅しているため、内容は大ボリュームの687ページ。これまで「赤本」として愛用されてきた『日本語教育能力検定試験完全攻略ガイド 第5版』の567ページから大幅にリニューアルされています。日本語教員試験対策講座のメイン教材として十分すぎるボリュームです。
687ページもの内容を理解できるだろうか…と不安になる方もいらっしゃるかもしれませんが、心配はいりません。本書は「文脈」に重点を置いて記述されています。例えば「〇〇という学習観には△△という批判があったから□□という教授法が生まれた」というように、ストーリーを意識しながら理解することができます。一方で、用語には豊富な注釈が付いているので学び直しにもぴったりです。本文を読んで全体の流れを掴んでから、注釈を読んでさらに理解を深める、といった学習法もできるでしょう。また、セクションごとに「学びのポイント」のページがあるため、理解の定着や日本語教員試験直前の要点整理にも最適です。
『日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド』と何が違う?
本書は『日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド 第5版』で扱われていた内容に加え、現代の日本語教育現場で役に立つ情報が追加されています。例えば、ルーブリックやポートフォリオといった新しい評価法、ICTを用いた自律学習や協働学習、コロナ禍以降に急速に普及した遠隔授業とそれに付随する著作権の変化、近年多様性の文脈でよく耳にする「マイクロ・アグレッション」という言葉など、「聞いたことはあるけれど正確に説明できる自信がない」、「学ばなければと思っているけれどつい後回しにしてしまう」用語や概念を改めて確認することができます。
しかしながら、国家資格移行前の制度で学んだことが古い知識というわけでは決してありません。日本語や言語教育に関する体系的な知識は学びの土台になります。また、教師は常に学び直し、自らの教育観を振り返る姿勢が求められます。どのテキストを持っていたとしても、日本語教員試験の対策や最新の教育事情や社会情勢に合わせて知識をアップデートする必要があるのは変わらない、と言えるでしょう。
読者へのメッセージ 一生モノの日本語教員教材として
これまで見てきたように、本書は初学者から現職者まで、幅広い読者に対応しています。これから日本語教師を目指す方にとっては最初の道しるべになり、養成課程で日本語教育を学んでいる方には理解定着の助けになり、さらに現場で教えている日本語教師の方にとっては制度の変化にともなう”学び直し”の指針になるでしょう。日本語教育の道に足を踏み入れた大学生の方も、セカンドキャリアとして日本語教師を視野に入れている方も、職場や地域社会で外国人と関わる機会のある方も、日本語教師を一生の仕事にしたい方も…あらゆる立場の読者に新たな発見や示唆を与えてくれる内容になっています。
さて、この記事の冒頭で触れたCEFRや「日本語教育の参照枠」といった新たな言語教育の指針では、相互理解がうたわれています。一方、母語話者をゴールとし、母語話者のような言語使用を学習者にも求めるといった旧来の言語教育観は、自文化中心主義的であり、異文化の人たちに対する抑圧や同化につながるおそれもあるでしょう。日々めまぐるしく変わる社会情勢の中で、日本語教師が自らの教育観を内省し、アップデートしていくことは、共生につながる第一歩だと信じてやみません。本書がそのきっかけになることを期待しています。
【書籍概要】
『日本語教育教科書 登録日本語教員養成課程コアカリキュラム 完全攻略ガイド』
編:ヒューマンアカデミー株式会社
監著:伊藤 健人、志賀 玲子、田坂 敦子、
著:伊東 祐郎、井上 里鶴、澤田 浩子、寒川 太一、福田 倫子
発売日:2025年11月28日 (金)
定価:3,960円(本体3,600円+税10%)
仕様:B5・688ページ
https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798191393
日本語教師を目指す方へ
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