目次
[ 非表示 ][ open ]
  1. 1. 事例報告
  2. 1. <地域の実践-親子日本語教室の取り組みから>
  3. 2. <来日直後の子どもたちの支援-プレクラスの取り組み>
  4. 3. <外国につながる高校生の「高校~高校卒業後」をめぐって -NPO・地域・高校の取り組みから->
  5. 2. 基調講演
  6. 1. <子どもの日本語教育の向かうところ>
  7. 3. 最後に
  8. 1. <日本語研究会の今後の活動について>

2021年8月22日一般社団法人日本語研究会 オンラインイベントが開催されました。

当日のイベント内容をご紹介いたします。

日本では昭和から平成、そして令和に時代が移りゆく中で海外からの移住者が増え、文化の多様化が進みました。

そんな中で最近特に注目され、その環境が日々改善しつつある「日本語教育」。

日本に移住する外国人が増えるほど、日本での生活や児童の学習環境に対して各自が抱える問題が顕著に現れました。私たちは悩みを抱える外国人の人々に日本語教師として、日本語教育という面からどのようにサポートができるのか。

今回は日本語教育の第一線でご活躍されている4名の方にお話を伺いながら、「子どもの日本語教育にかかわるには?」というテーマを考えていきます。

事例報告

<地域の実践-親子日本語教室の取り組みから>

地球っ子クラブ2000代表、聖心女子大学非常勤講師、さいたま市日本語指導員 髙栁なな枝氏

埼玉県さいたま市で活動している地球っ子クラブ2000は、外国籍の児童や外国にルーツを持つ児童、そしてその家族を支援していくボランティアグループです。

活動型日本語教室として、児童が学校で日本語指導員から学んだことを活かせる「これから」の時期に、地域の外国籍の児童が一同に集まって同じ背景を持った仲間と共に学べる機会を提供することを目的としています。

地球っ子クラブ2000の方針は、「なぜ自分は日本に来たのだろう」というモヤモヤを抱えている児童に対して教科書を勉強させるのではなく、料理体験や野外での虫の観察など実際の体験を通して遊びながら学習させていくというのが1つの柱です。

私たちは様々な体験を通して児童が仲間同士で母語・母文化を含めて互いに認め合い、まずは「認められる場」、いわば生活の土台を作ってあげることが大切だと感じています。

また、外国から日本に移り住んできた児童やその親御さんが親子関係に悩む例も多々みられる中で、児童の家族に対する支援も必要だと考えており、その支援も行っています。

そして地球っ子クラブ2000は、小学校や保育園とも連携し、外国人親子だけが頑張るだけでなく、外国出身で日本語が苦手な保護者への連絡方法への配慮などといった、受け入れ側への意識改革も図っています。

幸せになるために日本に来ている外国人親子にとって「日本語ができたら友達が欲しい!」ではなく、「友達ができることが日本語ができることに繋がる!」といった環境になるよう、私たちは地域に共に生きる住民として支えていきたいと考えています。

<来日直後の子どもたちの支援-プレクラスの取り組み>

大和市教育委員会 日本語教育アドバイザー(プレクラス担当)、NPO法人日本ペルー共生協会 学習支援スタッフ 近藤菜穂子氏

神奈川県大和市では毎年20名ほどの児童が海外から編入し、生活を送っています。

中でも来日したばかりの編入児童は日本語が話せず、学習だけでなく学校生活そのものが困難である例も多く、来日直後の編入児童が支援のないまま学校生活を送らなければならないという状況がかねてより問題視されていました。

そこで大和市では2018年、児童に日本語初期指導を行う「やまとプレクラス」を開設しました。

来日直後の児童は新しい環境への不安や期待、日本語ができないことで今まで出来ていたことが出来なくなってしまうもどかしさなどを抱え、アイデンティティが揺れていることがあります。私たちはそんな児童たちに成功体験や学ぶ楽しさを与えながら、児童自らが学びたいと思う環境を作り、「児童の背景を把握すること(母語・母文化の肯定)」「安心して過ごせる環境作りをすること」「意思疎通に欠かせない日本語を早期の段階で取得すること」で環境に馴染めるようにサポートしています。

その中で私たちは児童の母語を完全に遮断することはしません。例えば、日本語の数字の読み方を教えつつもあえて児童に母語でこの数字はなんて読むのかを尋ねてみて、私たちがその母語を肯定・尊重する姿勢を見せることで、児童の「伝えたい」という意欲を育みます。

また、プレクラス終了後も児童が学校へソフトランディングできるように学校の担任の先生とプレクラス連絡帳で児童の様子を共有したり、私が直接学校に出向き顔合わせをしたりと連携を大切にしています。

<外国につながる高校生の「高校~高校卒業後」をめぐって -NPO・地域・高校の取り組みから->

認定NPO法人 多文化共生教育ネットワークかながわ(副理事長・多文化教育コーディネーター派遣事業代表)、早稲田大学日本語教育研究センター非常勤講師 武一美氏

高校生における日本語教育支援・生活支援について事例報告をしていきます。

私が所属しているNPOは「多文化共生教育ネットワークかながわ(ME-net)」です。

この団体は1995年、外国人家族から地域へ「子供が高校入試をどのように受けて、高校へ入学するべきなのか分からない」という声が挙がり開催した「高校ガイダンス」をきっかけに誕生しました。

現在、神奈川県の高校入試では外国人の募集枠に対して定員内不合格を出さない仕組みを実施しており、日本語が全くしゃべれない子供も高校へ入学できます。

しかし、入学したとしてもその後の高校生活が困難になり中途退学が多いのも現状です。

私たちはこれを受け、2007年に多文化教育コーディネーターの派遣事業を開始することになりました。

生徒の背景把握や学習支援、学校生活支援を通して、適切なコーディネーターを配置しています。特に在留資格は大学進学や就職に大きく関わってくるので、キャリア支援としてそこもサポートし、さらに高校の卒業生などを招いて、現役の学生が同じ背景を持っている身近な先輩の話を聞ける機会を設けていますが、高校生にとってロールモデルはとても重要な存在だと感じています。

私たち大人は外国人高校生が抱える悩みに対して、その状況の解決や改善ができる環境作りにこれからも取り組んでいくことが求められているでしょう。

基調講演

<子どもの日本語教育の向かうところ>

武蔵野大学教授 村澤慶昭氏

これまでの事例報告を踏まえて、私たちは今後どのように「子供の日本語教育」に関わるべきかを考えていきたいと思います。

武蔵野大学にて「しあわせ研究所」というものがあり、私は「外国に繋がる子供たちは幸せか・子供たちを取り巻く人々は幸せか」というテーマで考えてみました。

東京都の江東区では外国人ルーツを持つ方や外国人登録者の方が3万人ほど暮らしています。

これらの人々はかつて、地域に散在していたものの現在では集住化しており、日本語指導が必要な児童生徒が増えました。

私たちはそこをどうやって地域の支援と繋げるかということを考えていて、留学生として日本語を学んだ外国人が、移住してきた外国人の児童・生徒に日本語を教える等の取り組みを行っています。

では、日本語の支援が必要な子供たちは日本語が上手になれば幸せになれるのでしょうか。

ある保育園でのお話です。全く日本語を話せない子供が泣いていて、周りの大人がどれだけ話し掛けても言葉が壁となり原因が特定できませんでした。しかし、日本語が話せる同郷の子を連れてきて聞いてみたら解決したのです。

この例でみられるように子供にとって「言葉」は非常に大きな問題で、私たちはこれに対して「日本語教育」という部分で外国人の児童・生徒に対し、先ほどの事例紹介で先生方にご紹介頂いたように様々な方法でアプローチしていくことが重要になるでしょう。

最後に

<日本語研究会の今後の活動について>

日本語研究会代表理事(関東学院大学教授) 伊藤健人氏

日本語研究会の今後の活動についてご紹介します。

日本語研究会は一般社団法人です。皆様からの参加料・会員費を基に、私たちは言語や文化が異なる人々が互いに尊重し、より良い関係が築ける社会づくりを目指し、その立役者となる日本語教師の支援を行うため、主に「キャリア支援・研究開発及び助成・交流促進」の3つの活動を進めて参ります。

また今後、オンラインでの1時間程度の講演会や、今回のように会員の皆様の実績を発表頂くシンポジウムの開催を予定しています。

特に講演会では「やさしい日本語のニュースを使用して教材を作る方法」や「日本語教師のためのパワーポイント入門」などの細かな話題を取り上げ、会員の皆様へ共有していく予定です。

このように日本語研究会は今後とも目的を持って活動して参りますので、是非会員の皆様の積極的なご参加をお待ちしております。