日本語の教え方には、直接法と間接法の2種類があります。日本語教育に携わる方のなかには、「なるべく効率的に日本語を学んでもらうためには、どちらの方法で教えるべきなのだろう」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、日本語教育における直接法と間接法について、それぞれの概要とメリット・デメリットをわかりやすくお伝えします。日本語教育の方法を考える際に、ぜひ本記事をお役立てください。
直接法による日本語の教え方の特徴とメリット・デメリット
日本語教育における「直接法」とは、日本語のみを用いて授業をする方法です。文法事項の解説なども含めて、学習者の母語ではなく、授業のすべてを日本語でおこないます。「ダイレクトメソッド」や「直接教授法」と呼ばれることもあります。
直接法は、母語を学ぶときと同じように、日本語をたくさん聞いてたくさん学ぶことによってスキルを習得していこうという考え方に基づいています。
直接法による日本語教育では、教材やジェスチャーなどをうまく活用するのが一般的です。「絵カード」というイラストの描かれた教材や、実物(「みかん」を教えるために本物のみかんを用いるなど)がよく使われます。文法事項の解説では、実際にその文法を使う場面を授業のなかで再現するケースも見られます。
直接法のメリット
直接法では日本語で授業をおこなうため、教師側には、外国語に自信がない教師でも教えられるというメリットがあります。最低限、日常生活を送れるレベルの現地語能力があれば、日本語を教えられるのです。
学習者側のメリットとしては、リスニングとスピーキングの力が身につきやすいことが挙げられます。授業のなかで日本語を聞き、話す機会が多いからです。
また、わからない言葉があっても、知っている日本語をもとに類推しながら考える習慣がつくでしょう。読み書きよりも、会話のなかで言語を学ぶ方法なので、楽しみながら日本語を身につけられるのも魅力です。
直接法のデメリット
初学者など、学習者側のレベルがまだ低い場合、教師の説明をBGMのようになんとなく聞き流してしまうことがあります。外国語だけで外国語を学ぶのには、ある程度の能力と意欲が必要です。
また、文法事項の説明などでわからない日本語が出てきたときに、誤解したまま覚えてしまう可能性もあるでしょう。
間接法による日本語の教え方の特徴とメリット・デメリット
「間接法」とは、日本語以外の言語を使って、間接的に日本語を教える方法です。たとえば、日本の学校で一般的におこなわれている、「日本語で実施される英語の授業」も間接法です。
間接法では、学習者の母語や、クラス全員が理解できる共通言語などを用います。海外で日本語を教える場合には、その土地の言語を用いるケースが多いです。
間接法のメリット
間接法では、学習者が理解できる言語で授業がおこなわれるため、文法などの説明を正確に理解しやすいのがメリットです。間接法は、短時間で効率的に日本語を理解できる方法だといえます。
間接法での日本語教育ができるということは、教師側も授業で使う言語に精通しているということです。したがって、生徒の質問に対して即座に答えることが可能であり、ストレスなく日本語を学べる環境を提供できるでしょう。直接法に比べて、まだレベルの低い学習者が教師の説明を聞き流してしまうリスクも低くなります。
間接法のデメリット
日本語学習の目標は「日本語で考えて日本語を使うこと」だという考え方があります。間接法では「母語で考えて頭のなかで日本語に訳す」という習慣がついてしまい、日本語で考える能力を身につけにくいというデメリットがあります。
また、間接法の授業では会話よりも読み書きが重視されがちなので、実際の暮らしで使うような日本語会話のスキルが向上しづらいことがあります。類推の習慣も、直接法と比較すると身につきにくいでしょう。
まとめ
日本語を教える方法には、日本語を用いて授業をおこなう直接法と、生徒の母語など日本語以外の言葉で授業をおこなう間接法があります。
直接法には、聞く力や話す力、類推能力が身につきやすいというメリットがあります。教える側としても、現地語に関する高い能力を求められないので、仕事の幅を広げやすいでしょう。ただし、学習者のレベルによっては、教師の説明がBGMのように聞こえてしまい、あまり学習効果が上がらないこともあります。
間接法のメリットは、文法事項や読解時の説明を正確に理解しやすく、短時間で効率的にストレスなく日本語を学べるということです。
ただし、日本語で考えて日本語を話す習慣がつきづらかったり、実際の生活で使う日本語会話のスキルが向上しづらかったりすることもあります。類推の習慣も、直接法に比べると身につきにくいでしょう。
どちらの方法にもメリットとデメリットがあります。学習者のニーズに合わせて適切な方法を選べるよう、直接法にも間接法にも対応できる日本語教師を目指しましょう。