日本各地では、地域の風習に基づいて様々な祭りが開かれています。屋台のイカ焼きにリンゴ飴・金魚すくいや花火、神輿担ぎや踊りなど、祭り独特の空気感はまさに夏そのもの。
しかし、なぜ祭りを行うのかという原点に注目してみると、日本人ですらしっかりと理解している人は少ないのではないでしょうか?
そこで今回は、日本の祭りに関する解説をはじめ、日本の三大祭りも含めて解説します。
日本の祭りとは?
現在における日本での祭りとは「美味しいものを食べて花火を眺めるもの」と考えている人も多いですが、大昔は神々をお祀り(おまつり)する神聖な行事でした。
日本での祭りが始まったのは、大昔から伝わる「岩戸隠れ」の神話にあると考えられています。
岩戸隠れとは、太陽の神である天照大神(あまてらすおおかみ)が天の岩戸に隠れてしまうことで国中から光が失われ、それをなんとかしようと考えた八百万の神々が岩戸の前で踊ったり歌ったりの大宴を繰り広げるというお話です。
八百万の神々は、岩戸の奥に隠れてしまった天照大神の気を引いて外へ出そうと、岩戸の前で盛大な宴を行った結果、ついに天照大神は岩戸から顔を出し、国中に光が戻りました。
この「宴」こそが、現在の祭りの起源になっていると言われています。
また、「祭」という言葉の語源は「祀る(まつる)」という動詞で、神様に供え物を献上する意味合いも持っています。
このように、日本の祭りの始まりには、神々が深く関連していると考えられているのです。
以降は、神様へ感謝の気持ちを表すためや祈りを届けるために祭りが行われてきた日本。
古代では五穀豊作や平和などを願い、災いが訪れた際には退散を願うなど、祭りは常に人々の暮らしと密着したものでした。
江戸時代に入る頃には、祭りはより「娯楽化」されて神輿や獅子舞・花火といった派手な演出で庶民を中心に、大衆文化として定着していきました。
明治時代に発令された「神仏分離令」によって一旦祭りが禁止されますが、終戦後には日本の祭りを復興させようとする動きが盛んになり、それ以後は江戸時代に戻ったかのように祭りが行われるようになりました。
「神事→祈祷→娯楽」へと徐々に変化していった日本の祭りですが、日本の祭りの最大の特徴を挙げるとすると「多様性」のひとことです。東北地方では竿燈やなまはげが、四国では阿波踊り、沖縄ではエイサーが、というように、地域によって祭りで行われるイベントや象徴が全く異なるところが面白いですよね。
多様性のある日本の祭りですが、その中でも全国的に共通していることがあります。
それは「神輿」の存在です。
「神様が乗るもの」と考えられている神輿は、多様性のある日本の祭りの中でも一貫して見ることのできる伝統文化と言っても過言ではありません。
多様性の中に見られる一貫性…日本の祭りの歴史、知れば知るほど面白く感じてきませんか?
日本三大祭りとは?
各地で様々な祭りが行われていますが、その中でも「京都の祇園祭」「大阪の天神祭」「東京の神田祭」は歴史が深くて規模も大きく、日本を代表する三大祭りとも呼ばれています。
以下に詳しくご紹介していきましょう。
祇園祭(京都市八坂神社)
869年の清和天皇の時代から続いている祇園祭は、1100年以上も続いている歴史ある祭りです。
祭行事は7月1日〜31日の1ヶ月間に渡って行われ、他の祭りとは比べ物にならないほど多くの行事が日程別に行われます。
祇園祭では、行事の無事を祈願する「吉符入」を筆頭に、長刀鉾の稽古やその披露・八坂神社周辺の巡行・神輿清め・家宝の屏風披露・表千家と裏千家による隔年のご奉仕・石見神楽などなど、数えきれないほどの行事が目白押し!
しかし、1ヶ月にも及ぶ長期間なので、全ての行事に参加することはなかなか難しいものですよね。
そういった場合は、祇園祭の見どころでもある「前祭」「後祭」に注目して足を運んでみるのもいいかもしれません。
前祭の方がより大規模なので、より祇園祭を楽しみたい人にはおすすめです。
天神祭(大阪市大阪天満宮)
7月24日、25日の2日間に渡って開催される天神祭は、平安時代中期から続いている歴史深い祭りです。
25日の本宮船渡御が最大の見どころで、午後6時頃から始まる船渡御を見るために多くの人が駆け付けます。
菅原道真公の御神霊を乗せた御鳳輦船(ごほうれんせん)を中心とした100艘を超える船団が大川を行き交う船の姿はまさに圧巻で、約5千発の花火も空高く打ち上げられます。
また、天神祭独特の踊り「龍おどり」は、軽快な地車囃子(だんじりばやし)のリズムに乗って龍が天に昇る様子を表現したもの。
別名「蛇踊り」とも呼ばれているこの踊りは、天神祭でしか見ることのできない踊りとして注目を集めています。
神田祭(東京都神田明神)
神田明神で行われる神田祭とは、2年に1度ごとの開催で5月中旬に行われます。神田祭の起源については記録文書などがほとんど残っていないため不明ですが、江戸時代には「江戸三大祭り」の中に数えられるほど大規模な祭りになっていたことはわかっています。
神田祭は徳川家縁起の祭りと言われていますが、これは徳川家康が神田大明神に毎日祈願することが天下統一につながったと考えられているため。
以後、神田祭はより一層盛大に行われるようになり、神輿を担いで街を練り歩いたり太鼓のフェスティバルが開催されたりと派手に行われるようになりました。
神幸祭や神輿神宮などの行事では、近くにいるだけで熱気が伝わってくる雰囲気が特徴的です。
夏に行われることが多い日本の祭りですが、5月中旬に行われる神田祭では一足先に祭り気分を味わうことができるでしょう。
まとめ
日本の祭りには地域によって様々な特色がありますが、起源に神々が関係している、神輿が伝統的なシンボルになっていると言う共通点もありました。
特に「日本三大祭り」は大規模なものが多いので、1度は足を運んでみたい日本の伝統的な祭りと言えるのではないでしょうか。