歌舞伎は、海外からの人気も高い日本を代表する伝統芸能の1つ。日本に住んでいるなら1度は見ておきたいものですが、事前に歌舞伎の入門として、基礎的な知識があるとより楽しく鑑賞できます。
そこで、今回は歌舞伎の基本や起源、歴史を解説しつつ、初めて歌舞伎座で鑑賞する方のためにおすすめの演目や歌舞伎を楽しむポイントなどもご紹介!是非歌舞伎の入門としてお役立てください。
歌舞伎の基本
はじめに、歌舞伎の起源や屋号、ジャンルなどの基本について解説します。
歌舞伎の起源
歌舞伎の起源は今から遡ること約400年前、江戸幕府ができたばかりの頃に、出雲阿国(いずものおくに)と名乗る巫女の一座が京都で催した踊りの舞台からだといわれています。
当時は阿国が男装をして踊る姿が「かぶき(派手で変わっている)者」の踊りとしてもてはやされ、全国的な人気を博したのだとか。現在は女人禁制となっている歌舞伎の舞台ですが、もともとは女性を起源としていたのは興味深いところです。
歌舞伎の屋号
歌舞伎の舞台で「成田屋!」「音羽屋!」といった掛け声が観客席からかかるのを耳にしたことはないでしょうか。これらは「屋号」と呼ばれるもので、歌舞伎役者が個々に受け継ぐ流派のような意味を持っています。
歌舞伎の演目に好きな俳優が登場した際は、俳優の名前ではなく屋号で呼びかけるのが一般的で、屋号の中でも「成田屋」は歴史が長く、歌舞伎界でも一目置かれる存在となっています。
歌舞伎には4つのジャンルがある
ひとくちに「歌舞伎」といっても、その演目にはいくつかの種類があり、それぞれ以下のようなジャンルに分けられます。
・時代物(じだいもの):私たちにとっては歌舞伎の演目はすべて「時代物」といえますが、歌舞伎における「時代物」は、江戸時代に生きていた人にとっての時代劇をさします。江戸時代以前の歴史上の人物や事件について扱っている演目は時代物に分類されます。
・世話物(せわもの):時代物とは逆に、江戸時代の人々にとっての「現代劇」が世話物となります。世話物は、当時の庶民や町人の文化、生活などに根差した演目となっているのが特徴です。
・新歌舞伎:明治時代以降に作られた作品は「新歌舞伎」と呼ばれ、時代物や世話物とはことなるジャンルとして分類されています。
・所作事(しょさごと):おもに長唄などを伴奏にして、舞踊をメインにおこなわれる作品をさします。
「にらみ」や「見得」とは?
歌舞伎で「大見得を切る」と呼ばれることもある「見得」とは、お芝居の際に見せどころとなる、重要な場面で使用する演技法の1つです。歌舞伎特有の技法でもあり、美しく華やかなポーズを取ったまま静止することで、スポットライトなどの照明技術がなかった当時に、観客の注目を集める目的で発達したといわれています。
見得の中でも「にらみ」と呼ばれる技法は、成田屋の屋号を継承する一門だけに伝わるものです。目の焦点を合わせずに、にらむ顔つきを作るようすは壮観で、邪気払いのご利益もあるとされる特別な所作となっています。
初めての歌舞伎鑑賞。おすすめの演目は?
初めて歌舞伎を鑑賞をする際に、初心者でも楽しめるおすすめの演目には以下のようなものがあります。
「時代物」
時代物では、源平合戦が舞台の 「義経千本桜」や、有名な忠臣蔵を舞台にした「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」などがおすすめです。
「世話物」
世話物では、おなじみの四谷怪談が題材の「東海道四谷怪談」、親子の人間模様を描いた「三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)」 などが挙げられます。
所作事
歌舞伎の舞踊を楽しむなら、長い白髪を振る舞踊で有名な「春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)」、豪華な小道具が見ごたえ抜群の「京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)」がおすすめです。
このほか、現代のアニメ作品とコラボした「スーパー歌舞伎」や、市川家のお家芸である「歌舞伎十八番」の「勧進帳(かんじんちょう)」、「暫(しばらく)」、「助六(すけろく)」なども人気があります。
歌舞伎を見るなら「歌舞伎座」で!「歌舞伎座」での楽しみ方
歌舞伎の基本的な知識がついたら、実際に歌舞伎鑑賞をしてみましょう。ここでは、「歌舞伎座」での歌舞伎を楽しむ際のポイントについて解説します。
初めての歌舞伎鑑賞でおすすめの席は「一幕見席」
通常、歌舞伎の公演は休憩を挟みながら1公演で3~4幕を鑑賞するものとなりますが、1幕だけ鑑賞できる「一幕見席(ひとまくみせき)」という席があります。
一幕見席は当日券のみの販売ながら、価格も1,000円台とリーズナブルな点が魅力です。歌舞伎座の幕見席上演スケジュールの中から、自分の好きな時間と演目を選んで入場できます。ただし、椅子に座って鑑賞できる椅子席は限定販売となっているため、当日券の購入の場合には長い行列ができることも多いので注意が必要です。
通常公演を鑑賞する場合には、一等桟敷や一等席・二等席、三階席などがありますが、一等桟敷席の価格は20,000円前後となっています。
幕間(小休憩)時には食事も飲酒も可能
歌舞伎の公演には「幕間」と呼ばれる小休憩の時間があり、この間に歌舞伎座内にある和食店で食事やアルコールを楽しむこともできます。お弁当やスイーツを買って席での飲食も可能です。
「イヤホンガイド」でどんなセリフも聞き逃さない
歌舞伎に慣れない間は、演目の内容をわかりやすく音声でガイドしてくれる「イヤホンガイド」もおすすめです。利用には事前予約が必要となるため、借りたい場合はチケット購入前に問い合わせてみるとよいでしょう。
ドレスコードなど特別な決まりはない
歌舞伎を見るときは、着物やフォーマルな服装で行くのでは」と思う人もいるようですが、歌舞伎鑑賞にドレスコードは特にありません。基本は普段着のままで大丈夫ですが、浮くのが心配ならシンプルでシックな楽な装いがよいでしょう。
まとめ
日本の代表的な伝統芸能である歌舞伎は、江戸時代に培われた海外でも人気のある芸能の1つです。屋号や見得といった独特の用語やスタイルがあり、演目にもいくつかのジャンルがありますが、基本的にはドレスコードもなく、1幕だけ見ることもできます。初心者でも歌舞伎は十分楽しめるので、機会があれば是非鑑賞してみてください。