世界から見た日本の労働時間と有給取得率
日本では、2019年4月に「働き方改革関連法」が施行され、段階的に実施が進んできています。現在勤めている人の中にも「働き方改革で社内規定が変わった」「何らかの通達があった」という人もいるのではないでしょうか。各企業内で働き方改革が進みつつあるなか、世界から日本の働き方はどのように見えているのか、以下で確認していきましょう。
海外に比べて日本の労働時間は少ない?
OECD(経済協力開発機構) の統計によると、2018年の日本の年間労働時間は1680時間となっており、世界主要国中22位となっています。
これは3位の韓国、4位のロシア、11位のアメリカよりも低い数字で、世界平均の1734時間よりも少ない労働時間となっています。
とはいえ、サービス残業は統計には含まれないうえ、時短勤務やアルバイトといった給与所得者の労働時間も含んでいると考えた場合、単純に「日本の労働時間は少ない」とはいえない状況も予想されます。
有休取得率が最下位の日本
総合旅行サイト「エクスペディア・ジャパン」が毎年実施している「有給休暇・国際比較調査」によると、2018年の日本人の有給休暇取得率は3年連続で19ヵ国中最下位であったことがわかっています。
有給取得率も3年連続50%と横ばいで、日本に次いで取得率の低いオーストラリアの70%にも大きく差がついた状態とです。
他の調査では「有休を取ることに罪悪感がある」「有休休暇を多く取る権利があるとは思わない」「そもそも休みが少ないともあまり思っていない」といった日本人の考え方が垣間見える結果も出ており、法改正が始まったばかりの中で、戸惑いつつも「真面目で周囲に気を遣いながら働く日本人」といったイメージがこれらの調査から浮かび上がってくるでしょう。
各国で進む法改正
日本だけでなく、世界各国でも、労働環境改善に向けてさまざまな法改正がなされています。以下でその一部取り組みについても見てみましょう。
【ドイツ】労働時間が少ない代表国
ドイツは労働時間が少ない国として有名で、先のOECD統計でも、2018年の労働時間は1363時間で
ドイツでは有休と病欠は別扱いとなっており、病欠に有休を充てる、といったことはおこなわれません。医師の診断書があれば病欠であっても休んでいる間は給与が支払われ、それが最長で6週間まで認められます。
また、また、1日10時間を超えて働くことは法律で禁止されており、残業した時間を貯蓄のように貯めることができる「労働時間口座」という制度が設けられています。ここで貯めた残業時間を有給休暇としてまとめて取得できるなど、労働時間の削減と有給休暇の取得がしやすい制度づくりがかなり充実しています。
【スウェーデン】育休が手厚い国
女性の社会進出や、社会保障の充実が成功している国として取り上げられることも多いスウェーデン。働き方に関する取り組みには「親休暇法」が挙げられます。親休暇法では、子供が基礎学校の1年目(または8歳)になるまで、合計480日間(約1年4ヵ月)の有給休暇を親が取得できることになっています。
育児休業期間中、390日は給与の8割が保障され、一人あたり60~90日は両親の間で休みを譲れないことになっているので、育児休暇を取得する男性も3割を超えているのだとか。
実は日本も育休は最長1年6ヵ月取得可能で、必要な場合は更に2歳まで延長することもできます。8歳までの間に必要なタイミングで取得できない点や保障される給与の額(67~50%)に違いはありますが、大きな障壁は「何となく取りづらい」という日本の雰囲気なのかもしれません。
【フランス】業務時間外の仕事用電子機器は電源OFF
フランスでは、2017年1月から業務時間外に仕事用の電子機器の電源を切る権利について、法律でさだめることとなりました。時間外に仕事のメールを受信したり、勤務時間外に返信したりすることを防ぎ、雇用者のプライベートを守る目的で制定されたものです。
さらに、2002年からは法定労働時間を週35時間にさだめた「週35時間労働制」が制定されました。日本の週40時間より5時間も少なく、労働時間の長期化抑制に力を入れていることがわかります。
このほかにも、フランスには「マティス法」と呼ばれる法律があり、自分の年休を病気や障害を抱えた子供を持つ同僚へ寄付できるといった制度があります。
【その他の国】ほかにもある!各国の働き方改革
上記のような取り組みのほか、シンガポールでも年休とは別に年間14~60日の病休が取得できます。勤務時間外のメール禁止を法律でさだめる動きはアメリカのニューヨーク州でも審議されており、ブラジルはフランス、ドイツに並び有給休暇の取得率が100%で、1年に取得できる年休は30日、分けて休む場合でも、1回の休暇取得が14日より少なくならないよう法整備されています。
日本だけでなく、世界主要国でもほとんどが働き方について改正する取り組みをしており、残業の規制や有休の取得を促進しているようです。データには出てこない事情やお国柄の違いなど一概にはいえない部分もありそうですが、日本も将来的によりよい働き方を実現するための参考にしたいところですね。
まとめ
「働き過ぎ」というイメージのある日本ですが、OECD統計では世界主要国中22位、世界平均よりも低い労働時間であることがわかっています。有給休暇や育児休暇の取得率が悪い点と、「休暇を取ることへの罪悪感」の強さが払しょくされれば、将来的にさらに働きやすくなる可能性もあるでしょう。
日本だけでなく、世界的にも働き方に対する改正や取り組みは積極的におこなわれており、今後の動きにも注目したいところです。