●お話を伺った人:
中村貴之(なかむら・たかゆき)さん
一般財団法人 つくば市国際交流協会 職員
●聞き手:
井上里鶴(いのうえ・りず)さん
つくば市には1万人近くの外国人が在住しており、つくば市国際交流協会では外国人支援や交流事業を通して、市民と在住者の国籍を超えた人的ネットワーク構築を行っています。
今回は、つくば市国際交流協会にて主に子どもへの支援を担当されている中村貴之(なかむら・たかゆき)さんに、活動内容や今後の展望などを伺いました。
現在ご担当されている業務について教えてください。
私は主に子どもの支援を行っているのですが、最近特に力を入れているのは「小・中学生の日本語支援」「高校進学ガイダンス」の2つです。
学校に入った子どもたちは、学期中は校内で日本語担当の先生と一緒に学ぶことができるのですが、夏休みなどの長期休みでは学校がないので、日本語を学ぶ場所がありません。
日本語を使わない期間が長くなってしまうと日本語が定着しないので、勉強する機会を設ける活動をしています。ただ、勉強といっても日本語の習得には個人差がありますので、個別の課題をクリアしていくためのフィードバックなども行っています。また、こどもの支援は私たちだけではできませんので、大学やNPO、行政などと連携する仕組みづくりを模索しています。
また、最近は高校進学を希望する外国人も増えてきているのですが、母国と同じように進学できると思っている人が多いのが現状です。実際には、日本の受験と母国の受験とでは大きく異なる部分も多く、お金もかかります。そのため、「どのような勉強が必要か」「学校でのクラブ活動にはどのようなものがあるか」「どれくらいのお金がかかるか」といった点をアナウンスする活動にも力を入れています。
子ども以外の部分では、月に1回開催している「世界お茶のみ話」というイベントにも力を入れています。このイベントは、参加者の母国のお茶を飲みながら歴史や文化、生活習慣などを紹介していただきながらコミュニケーションを図っていくというものです。
「外国人から日本はどう見えているのか」「母国の課題をどう捉えているのか」などを知る機会にもなり、毎月40名近くの方々が参加しています。
医療分野でも行われている業務があると伺いました。
担当ではありませんが、医療通訳ボランティアの派遣を行っています。
日本語の分からない患者さんがいる場合に、必ずしも病院の先生が患者の母語や英語を話せるとは限りません。でも、外国人からすれば、理解に苦しむ日本語で説明されると余計に不安が大きくなると思うんです。やはり、母語で説明を受けられたほうが安心できるはずですから。
そういった部分をサポートするために、日本語、英語、中国語、スペイン語、ポルトガル語の5ヶ国語で医療通訳ボランティアを派遣しています。病院からの要請によって、ボランティアの養成講座を受け、一定の条件を満たした通訳を派遣し、適切な治療を受けられるよう言語によるサポートするという流れですね。
今後挑戦したいこと、目標などがあれば教えてください。
担当している業務を進める中で、「支援を求める人が増えてきている」ということを痛感しています。もちろん、交流をすることが相互理解につながると思うのですが、ある程度の余裕がある人でなければ交流の場まで足を運ばないというのが実際のところではないかと思います。
私自身は、いかに支援を行い、次のステップへと誘導できるかどうかが大切だと思っていますので、外国人の本音を聞き出す環境を整えて、より多くの方を支援していきたいなと思っています。
また、義務教育に関わる子どもたちが一人も埋もれることなく、適切な支援を受けられるような体制づくりをしていきたいですね。ただ、これは私たちだけで行えるものではないので、大学やNPO、自治体の方々と上手く連携して、「どうすれば支援を充実させられるか」という部分を整備していけたらと考えています。
医療通訳においては、患者さんが市を飛び越えて動くこともあるので、隣接する市町村と魚の「鱗(うろこ)」のように重なり合う支援ができれば理想的だなと思います。