企業からのAIエンジニアの需要はますます高くなっています。
もしAI技術者を目指すなら、年収、将来性、仕事内容については事前に把握しておくべきでしょう。また、AI技術者になるためには何が必要なのかについても知っておきたいところです。
この記事では、AI技術者に必要とされるスキルや学習方法などの基本的な知識を紹介します。
AI技術者になる前に知っておくべき基礎知識
AI技術者は多くの最先端知識を必要とされる職業のため、簡単になることはできません。ここでは初心者がAI技術者を目指す前に知っておくべき、AI技術者の将来性や年収、必要とされる技術について解説します。
AI技術者とは
AI技術者とは、AI(人工知能)の開発やAIに蓄積されたデータの解析を行う技術者のことを指します。ディープラーニング(深層学習)の技術を駆使して、コンピューターに人間の思考と近い処理を実行させることで様々な問題を解決します。仕事や職業としての定義は定まっておらず、AIエンジニアと呼ばれていない人が人工知能に関する領域で仕事をしていることも少なくありません。
機械学習エンジニアとも呼ばれる
機械学習エンジニアとは、AIを機能させるのに重要な機械学習アルゴリズムを開発できるエンジニアのことです。機械学習エンジニアという呼び名は、英語の「Machine Learning Engineer」を直訳したものです。
日本ではあまり聞きなれない職種ですが、海外の求人サイトにはITエンジニアの一種として「Machine Learning Engineer」はカテゴリー分けされており、すでに一般的なものとなっています。
機械学習エンジニアの仕事はAIのモデルを作るのが主です。AIモデルの例として、画像認識によって工場の不良品を判別するAIや、自然言語処理によってユーザーの質問を解析し最善の自動応答をするチャットボットなどさまざまなモデルが挙げられます。
顧客の持っている課題に対してディープラーニングなど適切な学習モデルを選定してAIモデルを構築していきます。従来、人手でやっていたような単純な作業をAIによって手助けをしたり、代替したりします。
AI技術者になるために必要な資格
AI技術者は市場のニーズに対して数が少なく、とても貴重な職業です。同時に高い専門性が求められる職業であることも間違いありません。専門性が高い職業のため、医者や会計士のような資格取得が必須なのではと思われがちですが、現在はAI技術者に関連する国家資格はありません。
AI技術者に特化した民間資格としては、一般社団法人ディープラーニング協会が行っている「G検定」「E検定」が挙げられます。AI技術者を名乗るために資格は必須ではありませんが、学習を通して自分の実力を高めることができます。資格はあくまでひとつの知識を示すものであり、必須ではありません。しかし、持っていないよりは持っておいた方が、自己アピールとして有効です。
G検定とE検定は国の支援を受けていない民間資格ですが、トヨタ自動車や三井住友銀行などの大企業がディープラーニング協会の賛助会員になっています。今後AI資格のベースになることは間違いないでしょう。
G検定は、AIについて全般的な内容を問われるG(ジェネラリスト)試験で、E検定はAIを構築できるエンジニア向けに特化したE(エンジニア)試験です。
G試験はAIエンジニアやデータサイエンティストを目指すなら取得を目指したい資格です。
出題範囲が人工知能の技術的動向や、ディープラーニングの手法、さらには法務や倫理など非常に幅が広く、しかも試験時間が2時間なのに対し、必要回答数が200問(すべて選択式)近くもあります。一問ごとの難易度はそこまで高くはないようですが、一夜漬けでなんとかなるような資格でもありません。
ちなみに、自宅からも受験可能なオンライン試験なので、参考書片手に受けることも可能ですが、一問あたりの持ち時間が30秒しかないので参考書で調べて回答するのは難しいでしょう。過去実績を見ると、総受験者数1,448名に対して合格者数823名なので、合格率は高いように見えますが、受験者の多くがAIに関する有識者なので、実際の難易度は高めであると想定されます。
E検定はG検定とは異なり、誰でも受けることはできず受験資格が必要になります。
受験するためには、ディープラーニング協会認定のプログラムへの参加と修了が必須です。ディープラーニング協会認定のプログラムは、会員企業向けのAI構築演習です。ハンズオンのものもあれば、オンラインのものもあり、いずれのプログラムもAIの構築まで行います。
G検定がオンラインでも受けられるのに対してE検定は会場で行われます。こちらも選択式ですが、G検定に比べて非常に高い難易度が設定されています。
AI技術者の年収
比較的新しい職種のためAIエンジニアの相場は完全には決まっていませんが、AI技術者の平均年収は2016年度時点で666万円と、サラリーマンの平均年収よりも240万円ほど高い相場となっています。
年収は低くても500万円、高い企業では1,500万円以上が期待できるとされています。AI技術を必要としている企業のほとんどは大手企業なので、おのずと年収も平均値も高くなります。
現在、AIエンジニアは年齢別だと50~54歳あたりの年収が最も高いとされており、50代は低くとも1,090万円の年収です。全体的にかなり高い水準が平均値となっていることからもいかに高収入な職業であるかが分かります。自分の技術と実績次第では、さらに高い年収も実現もできるでしょう。
AI技術者の将来性
AIに関する話題はビジネスシーンにおいて日常的に耳にするようになってきました。ではAI技術者の将来性はどうでしょうか。
AIに関する社会のニーズは拡大しています。まだビジネスにおいて実用化段階に至っていないAI技術が控えていることを考えると、今後AI技術者はさらに多くの分野で必要となってくると予想され、将来性は期待できるでしょう。
AI技術者が活躍する場面はAI技術の開発や活用だけではありません。企業の内部の経営者や従業員に対して、AI技術の知識を浸透させる役割としてもAI技術者の存在は欠かせなくなってくるでしょう。
AIエンジニアの仕事内容
AIエンジニアとは、最先端技術である人工知能(AI)の開発に携わる技術者です。
要素技術の研究・開発に取り組むエンジニアを指すこともあれば、AIを使ったデータの解析やシステムの開発・実装を仕事とするエンジニアを、ソフトウェアエンジニアのなかでも特に「AIエンジニア」と呼ぶこともあり、仕事や職業としての定義には幅があります。AIエンジニアが行う仕事の例には、AI技術の研究、海外論文などのリサーチ、学習モデル、アルゴリズムの開発、AIを使用したデータ解析・システム開発、精度向上のためのチューニング、学習用データの構造化・整理、などが挙げられます。
AIエンジニアに関連した職業として、データサイエンティストや機械学習エンジニアという名前の職種を聞くことがあります。いずれも機械学習やデータサイエンスに関わる職業です。それらの肩書や職種の多くは企業が求人の都合上決めたものも含まれます。そのため、名前は違えども実際には同じ仕事内容を指すことも多いです。
求人票などで使用される傾向として、データサイエンティストはビッグデータ分析やコンサルティングなどのアナリティクス分野の求人に使用される傾向にあります。
機械学習はAI技術のひとつの分野であることから、AIエンジニアは機械学習エンジニアを含む概念です。両方ともエンジニアという名前がつくため、データサイエンティストよりもエンジニア寄りの業務に就く傾向にあります。
AI技術は日々進歩しているため、常に新たな知識を得ていく必要があります。従来の成功例をそのまま実装するスタンスでは無く、現状のビジネスに合わせたシステムを実装する必要があります。
クライアントがどのような課題を持っているのか、どのようにAIで解決することができるのか、そもそもAI技術を用いるべきなのか、など様々な視点からコンサルテーションする必要があります。そのためには、AIに関する専門的な知識や技術だけでなく、ビジネスへの理解が必要になることもあります。
そのため、クライアントや他のエンジニアなどとの円滑なコミュニケーション能力が求められます。Webサービスや業務用アプリケーションなど、ほとんどの開発プロジェクトでは、モデルを作るAIエンジニアのほかに、データエンジニアやWeb系エンジニアと協力することになります。
AIエンジニアになるための学習方法
AIエンジニアはとても将来性のある職業です。ただ仕事をするためには専門的な知識やスキルが必要です。
初心者がAIエンジニアを目指す場合、どのように勉強すると良いのでしょうか。ここではAI学習の効率的な方法を紹介していきます。
スクールのAI講座に通う
まず初めに、スクールのAI講座にてAIに関する専門的な知識を学ぶ方法です。現在はオンラインで学べるスクールも増えており、いつでもどこでも本格的にAIを学ぶことが可能になりました。
スクールに通うことのメリットは他の人と一緒に学習ができることです。勉強で分からないことがあったとしても、周囲に相談して解決ができます。モチベーションが下がった時でも自分の背中を押してくれるでしょう。
また、カリキュラムが設定されているので、知識を漏れなく体系的に身につけられるのもメリットです。入門編であれば無料で講座を受けることができるスクールもあるので、探してみると良いでしょう。
AI分野を絞って学習する
ディープラーニングや機械学習などAIに関する知識はとても範囲が広いので、AI技術が1冊にまとまっている本はありません。また、画像処理や音声認識などのAIが活用できる領域についても様々な分野があります。よって、最初はある程度分野を絞って学習に取り掛かることをおすすめします。自分がいま興味がある分野や将来的に関わりたい業界を決めてから学びましょう。
AIプログラミング学習サービスを利用する
オンライン学習サービスを利用すれば、AIの基礎から実践まで学ぶことができます。オンラインでの学習サービスは時間と場所を選ばないのが利点です。今の仕事と平行して勉強することもできるので、副業としてのスキル習得も可能です。
ただし、難しいAI技術をたった一人で独学するのはなかなか大変なことです。勉強会やイベントに参加して、同じような立場のエンジニアと交流しながら情報収集するのも有効です。最初は分からないことも多いかもしれませんが、一緒に学べる仲間を見つけて、実践でチャレンジを積んでいくのがAIエンジニアへの道を拓く近道です。
AIエンジニアを目指す人向けの書籍で学習する
最近では「ディープラーニング」「機械学習」「ニューラルネットワーク」について学べる書籍が増えてきました。また、現在どれくらいAIが進化しているかを解説する書籍も多く出版されています。
ここではAIエンジニアになるために必要な知識が収録されている書籍を紹介します。
AIエンジニアを目指す人向けの書籍 |
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Python3入門ノート
この書籍では、Pythonの基本文法や機械学習プログラミングの基礎を学べます。プログラミングを上達する近道はとにかくコードを書くことです。この書籍には538本のサンプルコードと154本のPythonファイルが掲載されているので、コードを書きながら学習を進められます。Pythonの基礎をしっかり学び、その応用として機械学習プログラミングを学ぶ流れが自然と身に付きます。
やさしく学ぶ 機械学習を理解するための数学のきほん ~アヤノ&ミオと一緒に学ぶ 機械学習の理論と数学、実装まで~
この書籍は、構成が会話形式なので非常に読みやすく、機械学習の数式についての基本から学べる点が特長です。また、そもそも機械学習がどうして注目されているのかや、機械学習で実現できることとできないことについての知識も得られます。
とくに機械学習の数式に関しては、詳細に書かれています。高校生の頃に学んだような数学ですが、とても丁寧に説明してくれています。例えば、回帰や分類の具体的な題材について、その解決方法を数式の形で表すとどうなるのか、実際にプログラムの形にした場合はどうなるのか、細かく説明しています。
おうちで学べる人工知能のきほん
この書籍では、人工知能の基礎知識、人工知能の言語処理、対話についてわかりやすく解説しています。
私たちの身近にあるものを例に挙げて、人工知能の仕組みと活用方法について説明してくれています。自分のビジネス分野に人工知能を導入したい人、人工知能を仕組みから学びなおしたいエンジニア、他の人工知能の入門書を読んで挫折した人におすすめの書籍です。
他の入門書などを読んでもイマイチ理解ができなかった時の学び直しにも良いでしょう。これから人工知能に関連した開発を行いたいエンジニアはもちろん、一般のビジネスマンにも最適な入門書です。
これだけは知っておきたいAI(人工知能)ビジネス入門
この書籍では、ディープラーニング、IoT(Internet of Things)、ビッグデータ、シンギュラリティなどの用語について解説しています。AIの入門書といえる内容であり、初心者でも気軽に読むことができます。
1つの事柄について見開きページ全体にシンプルな言葉と絵で説明しているので、とても読みやすい内容になっています。AIがどのように進化してきたのかを、過去から順を追って解説しています。技術進歩の経緯を辿るという内容になっているので、AIの歴史を知ることができます。成り立ちを楽しく学ぶことで、AIについての理解をより一層深められるでしょう。
AI分野で活躍できるエンジニアになろう
業務を効率化してくれるAI技術は、今後ますます需要が高まることが予想されます。せっかくITエンジニアを目指すのであれば、より将来性のあるAI分野で活躍できるエンジニアを目指しましょう。
現在は書籍やオンラインスクールなど様々な学習方法があります。自分に合った学習方法を選んでAIの知識を身に付けましょう。