2010/11/17 Release

アノヒトに聞きました

bjリーグコミッショナー代表取締役 河内敏光(かわち・としみつ)
1954 年東京生まれ。明治大学卒業後、三井生命に入社しバスケットボール部で選手として活躍。その間、全日本男子代表メンバーにも選ばれる。現役引退後は三井生命の監督として采配をふるう一方、男子全日本代表チームの監督も務める。三井生命バスケットボール部の休部を機に退職。新潟アルビレックスのGM等を経て、2004年プロバスケットボールリーグ「bjリーグ」のコミッショナーに就任。リーグの運営に携わる。 bjリーグ公式サイト>>



夢なんてね、変わっていくものなんです。
私の夢もどんどん変わっていきましたからね。


厳しい状況にある若者に、メッセージを贈るとしたら?

「自分の失敗を理解するためには、
とにかく行動すること。
行動しなければ、絶対に理解できない。」


河内さん

河内敏光さんの人生の中心にあるのは、
ずっとバスケットボールでした。
心から愛するバスケットボールができなくなること、
それは自分の存在そのものを揺るがす大きな壁でした。
そしてなにより、日本のバスケットボールの未来を切り拓きたい。
河内さんが選んだ道は、誰も通ったことのない新しい道でした。
開拓者、河内さんが自ら行動することで得てきたもの――。

編集部 仕事に対して、どのような意識を持って取り組んでいますか。
河 内 私は経験を通じて、
「これからの世の中はなにが起こるかわからない」
と実感することができました。
それならば「自分の強み」がなんなのかを見極め、
「これだけは人に負けない」というものを
持つべきだと思っています。

私の場合、たまたまバスケットボールが一番得意だし、
お金を払ってでもNBAの試合をアメリカまで観に行きたい。
日本のbjリーグの試合にお金を払ってでも行きたい。
仕事としてお金をいただいて、その現場に行けるのですから、
こんなに素晴らしいことはないと感謝しています。
編集部 ほんとうにそうですよね。
河 内 「大変だね」とよく他人から言われます。
それは大変ですよ。大変じゃなかったら私より先に、
バスケットボールの大先輩がプロリーグを
とっくに立ち上げていたでしょう。
大変であることをわかった上で立ち上げているから、
確かに大変だけれども、実はべつに大変ではない。
矛盾した言い方だけど。
bjリーグ
編集部 夢をかなえるには、どうしたらいいのでしょうか。
河 内 これはよく、子どもたちにも言っていることです。
私が中学生のとき、学校のチームはあまり強くなかった。
代々木第二体育館という
高校野球で言えば甲子園のような場所で、
バスケットボールがやりたい。
それがそのころの私の夢でした。
それをかなえるためにはどうすればいいのかを考えて、
バスケットボールが強い高校に進学したのです。
そうしたら夢がかなった。

大人たちは若い人たちに対して、「はやく夢を持て」と言う。
そして、最後までその夢に向かっていかなければならない
という気持ちにさせてしまいます。
今の若い人たちはいろいろな情報が入ってくるから、
一生持ち続けられる夢なんて、そんな簡単に設定できないですよ。
夢なんてね、変わっていくものなんです。
そこを若い人にわかってもらいたい。
私の夢なんて、どんどん変わっていきましたからね。
編集部 今の夢はなんですか。
河 内 日本のスポーツ界で、
屋内競技団体だけがメジャースポーツになっていません。
日本にはいいアリーナがないというのが大きな理由です。
マイナー球技団体同士がそれぞれの地域で
一番いい体育館を取り合っている状態です。
「なにをやってるんですか」と言いたくなる話ですよね。

だからbjリーグが成功したあかつきには、
日本にアリーナをつくっていきたい。
それが今の私の夢です。
アリーナをつくることによって、
あらゆる屋内競技団体においてプロ化の可能性が出てきます。
それはすなわち、スポーツをする子どもたちにとっての
選択肢を増やしていくということです。
それは大人たちがやらなければならない仕事の一つでしょう。
編集部 その夢はいつまでに果たしましょうか。
河 内 私は5年スパンで自分の生涯設計を組み立てています。
bjリーグを立ち上げたのが50歳のとき。
今年56歳になりましたから、そうですね、
この夢をかなえるために3年後をめどに
努力していきたいと思います。
その後は、若い人に譲っていければいいですね。
組織というものは、新しい人、若い人が入ってきて
はじめて活性化するものですから。
バスケットボールには河内さんの名前が入っている
バスケットボールには、実は河内さんの名前が入っているんです。
まさに、河内さんが夢を叶えた証と言えるかもしれません。

編集部 バスケットボールは中学校の花形の部活でした。
キャプテンは女子生徒のあこがれだったりして。
河 内 体育館の中でやるから、泥まみれにならない。
編集部 さわやか(笑)。
「バスケットボールをずっとやり続けたい」と思っている人は、
たくさんいるはずですよね。
河 内 私はバスケットボールが大好きな人たちが
「続けてきてよかった」と思える、
魅力のあるプロリーグをつくりたいのです。
今、大学4年生でバスケットボールをやっている人は
2400人ほどいます。
ところが景気に左右されて企業の採用がなくなると、
大学4年生のバスケットボール選手を
受け入れる先がなくなってしまうわけです。
編集部 バスケットボールができなくなってしまう。
その意味でも、やはりプロリーグが必要なんですね。
河 内 必要だと、私は思う。
bjリーグ
編集部 就職氷河期と言われる時代が続いています。
厳しい状況にある若い人たちにメッセージをお願いします。
河 内 どうして自分が就職試験に落ちたのか。
その理由をしっかり検証して、
理解する必要があるのではないでしょうか。
そのためには、行動すること。
自分が行動しなければ絶対に理解できない。

bjリーグを立ち上げるにあたって、
日本バスケットボール協会の傘下に入れていただくために、
私は当時の会長のご自宅に朝5時に行って、
玄関前で待っていました。どうしても会ってもらいたかったから。
そうしたら近所の人に「あやしい人がいる」と通報されてしまって、
私のところに警察官が来ました。
事情をきちんと説明したら、
警察官が会長の家に入っていって説明してくれたんです。
会長は出てきてくれましたよ。

NBAのデビッド・スターンというコミッショナーにも、
自分で直接NBAのホームページからメールして、
ニューヨークまで会いに行きました。
そうしたら「よく来たな」と言ってくれて、
2時間話を聞いてくれました。
もちろん事前にbjリーグについて調べていて、
私があやしい者ではないことを確かめていましたが。
トップの人というのは、情熱を持って会いに行けば
とりあえず会ってくれるものです。
編集部 「可能性があるな」と感じたからこそ、
会ってくれたのでしょうね。
河 内 デビッド・スターンに
bjリーグを立ち上げた理由を説明したら理解してくれて、
「どんな形で協力すればいいのか」と訊かれました。
だから私は「NBAのオールスターゲームに招待してほしい」
とお願いしました。
オールスターゲームには、
全世界のリーグのトップがみんな集まってきます。
世界をまわらずに、
bjリーグのプレゼンテーションができると考えたのです。
編集部 いかに行動力が大切か。とてもよくわかるエピソードです。
河 内 とにかく行ってみるんですよ。
それで失敗したら、次のチャンスのときに
前の失敗を改めていけばいいじゃないですか。
編集部 最後の質問です。
転職について悩んでいるとき、どのように考えればいいのでしょう。
河 内 その答は、すごく簡単だと思っています。
たとえば今の会社にずっといるべきか、
それとも別の仕事をやりたいかと悩んでいる人は、
結局、新しいことにチャレンジしたいと思っているんですね。
あとは自分が決断するかどうかだけですよ。

悩んでいるならチャレンジしなさい。
それが私からのアドバイスです。
すでに答は出ているのですから、
新しいことに一歩踏み出すべきだと思います。
編集部 一つずつ夢をかなえながら
前へ前へと進んでいく生き方のお話は、
若い人たちの勇気にもつながると思います。
どうもありがとうございました。

誰も挑もうとしなかった夢に向かっていった河内さん。
目の前にある壁を一つずつ乗り越えていくことだけが、
大きな夢にたどり着く方法だと教わった気がします。
「大変だけど、大変じゃない」。
まさに人生を楽しむ人の言葉です。



                                 おわり


●お知らせ
日本初のプロバスケットボールリーグ、bjリーグが開幕中!!
6シーズン目となる2010-2011シーズンは秋田ノーザンハピネッツ、島根スサノオマジック、宮崎シャイニングサンズを加え16チームで戦います。
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