2012/03/21 Release

アノヒトに聞きました

小笠原 弥生(おがさわら・やよい)
有限会社ジーン ラ ポート代表取締役。ジーン ラ ポート ネイルスクール代表。NPO法人日本ネイリスト協会常任本部認定講師ほか多数の役職を務める日本を代表するネイリスト。ヒューマンアカデミーのネイルアドバイザー。1984年大阪、東京、ロサンゼルスでネイル技術を習得。名古屋と東京にネイルサロン、スクールを開く。ネイルイベント、セミナーを各地で開催。日本ネイリスト協会の技能検定試験官、国内外のコンテストで審査員を務める。自身のプロデュースブランド“Ryusa”商品開発販売、ネイル教則本『ジェルネイル・バイブル』『エアブラシ・バイブル』の執筆など幅広く活躍。ジーン ラ ポート公式サイト:http://www.jeanlaport.com


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ネイリストはお客さまの大切な体をケアしています。
それは知識があるからこそ、できることなのです。


女性の働き方についてどのように考えますか?

「自分に合った環境を探して、
 自分にとって働きやすい形を
見つけることが大切です。」


小笠原弥生さん

短大時代に出会ったネイルの世界に、
迷うことなく飛び込んだ小笠原弥生さん。
スクールやセミナーを通じて、
ネイリストを目指す多くの人たちと接してきました。
豊かな経験から語られる、
「働き方」をめぐるアドバイス。
ヒントがたくさん隠れていますよ。


編集部 お仕事で大変なところを教えてください。
小笠原 私は13年間サロンワークの仕事をした後、
今はスクールの仕事をしています。
教えるという立場で生徒さんを見たときに、
「自分で勉強する」という意識が薄れてきている気がします。
「行けば教えてもらえる」という受け身の生徒さんが多いようです。
その姿勢が、ネイルサロンに就職してからも
出てしまう傾向が見られるように思います。

「なぜ就職したいの?」と聞くと、
「教えてもらえるから」と答える人がいます。
もちろん技術を教えてもらいながら
お給料をいただけるはずもありません。
今のようにネイリストが増えた状況では、
ネイルサロンのオーナーは即戦力が欲しいのです。

また、仕事をしながら、
次々に新しくなる商材に合わせて
自分の技術もどんどん磨いていかなければ、
対応しきれない部分がたくさん出てきてしまいます。
編集部 プロになってからもずっと勉強ですね。
小笠原 ネイリストはお客さまの大切な体をケアしています。
それは知識があるからこそ、できることなのです。
お客さまの爪を切らせていただくためには、
知識を追い続けなければなりません。
その勉強を怠らない人は、将来きっと伸びると思います。
編集部 アートの部分が美しいので、
お仕事自体も華やかに感じてしまいがちですが、
地道な面も多いのですね。
小笠原 そうです。
プラスの部分のアートはとても美しいのですが、
たとえばお手入れは、角質化したものや不用なものを取り除きます。
削った爪の長さを整えた後のダストも出ます。
ネイリストは、爪を美しくするための裏方の仕事です。

プロになればどうやって売り上げを上げていくか、
技術や物販などについても考えていく必要があります。
「自分が楽しいから」だけでは通用しない世界です。
編集部 ルーチンワークだけをこなすという姿勢では
もったいないですよね。
せっかくクリエイティブな部分もあるお仕事なのですから。
小笠原 ところで日本のネイリストは器用で、
しっかり勉強されてきた人も多いので、
どうしても高い技術をお客さまに提供しようとするんですね。
だけどお客さまは、安くて早いほうがいいわけです。
職人としてのプライドと提供するもののギャップを埋めながら、
時間単位でお仕事をまわしていかないと
必要な利益を出すことができません。
編集部 ネイルアートのマーケットの現状について、
どのように見ていらっしゃいますか。
小笠原 今、ネイルアートはジェルの時代です。
ネイルサロンの95%くらいはジェルかもしれません。
ジェルって意外と簡単そうに見えるので、
「自分でもできるのでは?」と思われる人がとても多いんです。
エステと違ってネイルの場合、
お客さまはネイリストの動きをずっと見ていることができます。
考えてみれば、
マンツーマンのワンデーレッスンをしているのと同じです。

確かにプロのクオリティを求めない限り、
ジェルは誰でもすぐにできるようになるでしょう。
それによってプロとアマの境目が
ほとんどなくなってきているというのが現状です。

だからこそネイリストはプロの技術と知識を求め、
自分自身を高めていかなければ、
これから先、ますます厳しくなっていくでしょう。
技術だけでなく、接客の面も重要です。
人間性で選んでもらえるネイリストになることが
求められるのです。
編集部 海外でのお仕事はいかがでしょうか。
小笠原 アジアはもちろん、
世界各国に仕事を広げていけたらいいですね。
日本とは考え方が違う部分がたくさんありますが、
チャレンジを続けていきたいと思います。
3年ほど前から、アジアに自腹で足を運んでいました。
できるだけ顔を売って、親近感を持っていただくところから
お付き合いを始める必要があると考えたからです。

今アジアで私の本の翻訳版が出版されています。
中国や台湾での展示会で
デモンストレーションやセミナーのお仕事を
させていただく機会もあります。
台湾の人たちは
日本のネイルアートについてよく知っているのですが、
ネイルの理論についてはあまり知識がありません。
その部分をこれからもっと教えていきたいと思っています。
本の翻訳版

編集部 女性の働き方についてどのように考えますか。
小笠原 女性には結婚、出産があります。
検定試験は年2回など時期が決まっていますから、
結婚や出産のタイミングに重なってしまうこともあります。
「合格したら子どもを産みたい」と思っても、
計画通りには合格できないかもしれません。
ネイリストは土日も働かなければならない職業です。
結婚生活との両立は難しい面もあるでしょう。

ですから自分に合った環境を探して、
いちばんやりやすい働き方を見つけることが大切だと思います。
子育てをしながらネイルサロンで働くのは難しいかもしれません。
そこでたとえば美容室と契約して、
週2回だけ働くことができる環境をつくってみる。
「どこかで働く」ではなく、
自分でアクションを起こして「働く場所をつくる」という発想に
切り替えてみてはいかがでしょうか。

ネイリストは持ち運ぶ道具も比較的少ないですし、
小さな資本でもやっていけます。
今、多くのお客さまは豪華なサロンを求めているのではなく、
自分のことを考えて技術を提供してくれる人を
求めているのだと思います。

ネイルサロンに就職するだけが道ではない。
考え方を少し変えてみると、
おそらく仕事はとてもやりやすくなるはずです。
「自分にはできないかも」と思う人も多いことでしょう。
でもよく考えてみれば、ネイルサロンで働いていても
お客さまと接しているときは先輩もオーナーも助けてくれません。
自分で接していくしかないんです。
極端に言ってしまえば、いずれにしても自分しかないんです。
編集部 組織の中にいるよりも、
一人で仕事をするほうが性に合っている人もいるでしょう。
小笠原 サロンの雰囲気もあります。
来店するお客さまが自分のキャラクターと合わなければ、
デザインするのがつらく感じるかもしれません。
たとえばロックなテイストを好むネイリストが、
超カワイイ系のネイルサロンに勤めてしまったら大変ですよね。

自分のキャラクターを知ることから始めて、
自分の環境と技術をプラスしてチャレンジする。
それがいちばんいい形だと思います。
編集部 楽しい人生が送れる確率が増えるかもしれません。
小笠原 私自身がそうやってきて、人生楽しかったので。
台湾でのデモンストレーションの作品

台湾でのデモンストレーションの作品

編集部 「天職」とはどういうものでしょうか。
小笠原 「天職とはなにか」と考えたことがないくらい、
私にとってネイリストは天職だと思っています。

24時間体制でいられるものが、天職だと思います。
朝起きて仕事をするのが嫌ではないし、
どこかへ出かけても、
「これはなにかに使える」「このデザインいただき!」
といつも仕事に結びつけて考えています。

24時間その仕事に向き合える。
向き合っていても苦しくない、つらくない。
楽しくて、自然なこと。
私の中ではそれが天職だと思います。
編集部 ヒューマンアカデミーで学ばれている方々に、
メッセージをお願いします。
小笠原 その場所から卒業してからも、
「学ぶ」ということはずっと続いていきます。
「知りたい」という意識を忘れてしまうと、
「学ぶ」から離れて自分勝手な思い込みで突き進んでしまい、
きっと間違えてしまうと思います。

卒業後に就職してどんなに偉くなったとしても、
学ぶ姿勢は忘れるべきではありません。
「知りたい」という素直な欲求を忘れてしまうと、
聞こえてくるはずのものも聞こえなくなってしまいます。
ですから、いつでも素直であってほしいと思います。
編集部 どんなお仕事でも、素直な人が伸びていきますよね。
小笠原 ほんとうに伸びていきます。
きっと好きだからこそ、素直でいられるのだと思うんです。
編集部 「向上したい」と思えば、
先輩のよいところを吸収しようと素直に思えるでしょう。
そうやって歩いて行った道が、
最終的に天職になるのかもしれませんね。
小笠原 はい。そうかもしれません。

付録:一言メッセージ


「好きだからこそ、素直でいられる」
楽しくて、自然なこと、それが天職だとすれば、
いつだって素直な気持ちで向上していくことができるはず。
力強く、やさしい小笠原さんのアドバイスでした。
次回もお楽しみに!


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