2012/1/20 Release

アノヒトに聞きました

MireyHIROKI/ミレイヒロキ
ミレイとヒロキの2人の人間でありながら1人の芸術家、ミレイヒロキとして活動。クレヨンを画材とした独自のタッチにより高い評価を得る。LOVE&PEACEプロジェクトを立ち上げ「環境・心」などをテーマに作品を制作。ミッキーマウス生誕75周年のための絵画制作、イサムノグチ「AKARI」とのコラボレーションなど。2007年からは表参道ヒルズ、渋谷交差点、京都鴨川、赤坂サカス、大阪梅田、東京タワーなど日本各地をキャンバスに大規模な作品「100UMBRELLAS」を発表。2010年ニューヨーク・セントラルパークで行われたJAPAN DAY 2010公式アーティスト。
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「自分の花が必要とされる場所はどこなのか」
を探していくことも重要です。


芸術とビジネスの境目を意識することはありますか?

「作品がアタッシュケースを持って
営業してはくれません。
作品のために動くのは、創り手自身です。」


ミレイヒロキさん
©MireyHIROKI

ミレイヒロキさんは、
芸術とビジネスの狭間をサバイバルしてきました。
世界中のアーティストが集まるシーンで、
すべてに勝るインパクトを生み出す力。
自分の作品がどこで必要とされているのかを見抜く勘。
「LOVE&PEACE」を伝えるクレージーな情熱。
思いを論理的に組み立てる方法とは?


編集部 東日本大震災を境に、
芸術表現の変化はありましたか。
ミレイ
ヒロキ
(以下MH)
震災前も震災後もアプローチの仕方は基本的に変わっていません。
ただ震災が起きたときに「芸術の力って何だろう?」と、
私たち自身の心が倒れてしまいそうな部分はありました。
「私たちに何ができるか」という葛藤はすごくあったし、
仲間と集まって打ち合わせもしました。
そこで大先輩からある言葉を聞いたんですね。
「戦後の闇市でいちばん売れたのは花だった」と。

その言葉から日本人の美意識を
あらためて感じるところがあったんです。
闇市で花を買う。
たとえ買えなくても、野に咲く花を摘んで玄関に置く。
かつて自然の花によって
心を未来に向けていこうとした日本人がいる。
そして大先輩は言いました。
「お前たちがこれまでにやってきたことを、
今こそ勇気を持って押し出していくべきではないのか」と。
それで一歩前に踏み出すことができました。

いつもそうなんですけど自分たちが動こうとした瞬間、
あらかじめ待っていたかのように
さまざまな支援団体のリーダーチームから
「こういうところに花のアイコンがほしい」
とさまざまなお話をいただきました。
被災地に向けて作品をつくり、届ける。
花を使ったアートワークをできる限りやってきました。
編集部 FLOWERアート&デザイン協会(FADA)には、
「花を使った表現を追求したい」と思っている方が
たくさんいらっしゃいます。
その方々と今後コラボレーションしていく可能性はありますか。
MH 可能性はあると思います。
FADAのみなさんには「どこに花が必要なのか」を、
どんどん自分で見つけていってほしいですね。
花を学んで自らの形ができたとき、
「自分の花が必要とされる場所はどこなのか」を
探していくことも重要です。

自分の作品が届く場所を、自分なりに探す。
その動きこそが大切なんです。
生の花を切って、
それを別の場所で美しく変えていく。
せっかく花という素敵な表現を学んでいるのですから、
どんどん前に出ていって
自分がやっている楽しいことを
まわりの人たちにも広めていってもらいたいと思います。
ヒロキ

編集部 芸術とビジネスの境目を意識することはありますか。
MH あります。
ただ、私たちが最初から
セルフマネジメントをできていたかと言えば
そんなことはありませんでした。
でもね、自分たちが作品を創るじゃないですか。
そうしたら作品が「おはようございます」と言って、
ロボットみたいにぴぴぴって手足が出てきてね、
アタッシュケースを持って営業してくれるのか?
そんなことはありえないわけです。

作品のために誰が動くかといえば、
それを創った私たち自身です。
せめて最初の一歩は、
アーティスト自身が作品を世に出すために
動いてみることが重要だと考えています。
編集部 動いてみること。それがポイントなんですね。
MH その考え方ははじめからあったものではなく、
これまでにサバイバルしながら考えた中で
生まれてきたものです。
今は「作品のために、自分たちになにができるか」を、
大きなテーマとして考えています。
それが私たちのビジネスに対するスタンスです。

近ごろ現代アートの世界においては、
作品ですべてを語るのではなく、
ある程度コンセプト的な要素を伝えることが
とても重要になってきています。
作品に対するアーティストの説明責任を
果たさなければならないのです。
説明も含めた行為自体が、
現代アートの表現の主流になりつつあります。

私たちはアメリカでプレゼンテーションをやってきました。
企画書のつくり方も学びました。
それはアートにとってものすごく役に立っています。
ソーシャルネットワークが広がる時代における
アートの使い方についても、
アナログとして生で描いた絵の落とし方があって、
それはとても新鮮なものとして人々の目に映ります。
描きたての花の色って、
その場にあるものを
ばーんと全部持っていってしまう強い力があるんですね。
先日、料理人として海外で活躍している友人が
「やっぱりミレイヒロキの線は太い」と言うんですね。
「それはなぜか。世界で勝負してきているからだ」と。
面白い視点でものごとを見てくるなと思ったんですね。

私たちはずっと世界で勝負してきています。
世界を見渡すと、すさまじい力を持っている人たちが
山ほど集まってくるんですよ。
突拍子もない連中がごろごろしている。
その中で自分たちになにができるかを考えたら、
赤、緑、黄、黒、ピンク、紫の6色とアクリル、筆だけを用意して、
世界中のアーティストが集まっている中で
すべてを持っていくだけのインパクトを出さなければなりません。
200メートル離れたところからでも目立つ、そんな花を描くんです。
編集部 アートは勝ち負けでもあるんですね。
MH よく「アートサーキット」という言葉が使われるのですが、
位置について、よーいどんでスタートしたときに、
キャンバスに向かって考えているだけでは通用しません。
今は世の中全体がオーバードーズしているというか、
どんなものごとに対しても麻痺して感じなくなっていますからね。

その中でアナログな花を描く、そこにポップを入れる表現は、
社会の現場の人たちにすごく求められているんですね。
そこがとても重要だと思っています。
今という時代の中で、
私たちは「アート=カフェ」という感覚を発信しています。
チェーン店のカフェでカフェラテを飲むような感覚で、
アートを常に目の前に存在させていきたいのです。
ミレイ

ミレイヒロキがオープ二ングをプロデュースした代官山のモンキーギャラリーにて。
「Share Flowers」でコラボしたスペースデザイナー、新井良平さんと打合せをするヒロキさん。

編集部 これまでのお仕事の中で、
転機となったプロジェクトを一つ挙げるとしたら?
MH ミッキーマウスとのコラボレーションです。
2004年にミッキーマウスが生誕75周年を迎えたときに、
誕生日を祝う世界のセレブパーティーが行われました。
日本でも開催することになって、
ミレイヒロキも直接依頼を受けて絵を描くことになりました。
日本人アーティストが
ミッキーマウスとコラボレーションするのは、
それがはじめてのことでした。

はじめはやっぱり戸惑ったんですよ。
私たちの作品の中に、
ミッキーマウスという世界最強のアイコンを入れるのですから。
打ち合わせに行くと、
ウォルト・ディズニーさんの大きな写真が飾ってあって、
受付で待っている間、いつも見ていました。
あるとき彼の目にたどり着いて、気づいたんです。
「ディズニーさんもアーティストなんだ」ということに。
編集部 ウォルト・ディズニーさんがアーティストの目をしていたんですね。
MH そして、ミッキーマウスは
「世界中にLOVE&PEACEを発信するメッセンジャー」
だと気づいたんですね。
それで「LOVE&PEACE」をタイトルに、
「ミッキーマウスが世界中の人々に平和の願いを」
というコンセプトにしました。
ミッキーマウスの手から星がうわーっとまわっていて、
そこから夢を届けるという絵を描きました。

その仕事が大きなきっかけとなりました。
ゴムで飛ばす紙飛行機があるじゃないですか。
その作品を描いてから、
飛行機を「巻いて飛ばす、巻いて飛ばす」という状態になりました。
一回飛ばした瞬間から、次を巻いて飛ばしていく。
そんなサイクルに入ったんです。
勢いを止めない感覚で、いろいろなことを展開していきました。
そうしたらあっというまに10年経っちゃいましたね。
ミレイヒロキ

編集部 「天職」に出会うためには、なにが必要でしょうか。
MH 社会に出たときにいちばん重要なのは、
「勘を鈍らせるな」ということです。
勘を鈍らせてしまうと
すごく勘のいい人間が目の前に現れたとき、
相手の勘をつかみ取れない。
だから勘を鈍らせてはいけないのです。

「クレージーな人が文化を創っていく」と私たちは思っています。
突拍子のないことをするクレージーな人が現れたときに、
「まったく突拍子もないことをして‥‥」
と言ってあきれてしまったら、
それはこちらの勘が鈍っている証拠です。
勘が鈍っていなければ、
クレージーな人の話を聞いてみようと思うはずですからね。
編集部 チャレンジしたいことはありますか。
MH 「100UMBRELLAS」というインスタレーション作品で、
渋谷の交差点に傘の花を咲かせるまでに12年かかっています。
アイデアが出て、実現するまでに12年。
成し遂げられたから「12年かかった」と言えるわけで、
もしも実現していなかったら
きっと「ものごとって成し遂げられないんだな」と
思ってしまったことでしょう。
京都で「100UMBRELLAS」をやったときは、
三条大橋と四条大橋に傘の花をぶわーっと咲かせました。
最後にはカメラを止めて、自分自身がその光景眺めていました。
「あ、やればやれるんだ」と実感しながら。

成功している人が、
「絶対やめるな」「やり続けろ」って言うじゃないですか。
あの言葉ってけっこう意味があるんだなと。
残酷ですけど何年かかっても成し遂げられる人って、
ほんの一部だと思うんです。
未来の成功者になる一部の人に向かって、
その言葉は発信されているのだと思うんですよ。
全員に向かって言ってはいるんですけど、
本質的には一部の人にしか言っていない。
それをやっていかないと新しいものが生まれないから、
現在の成功者はどこかにいる未来の成功者に向かって
発信し続けているのだと思います。
編集部 芸術とミレイヒロキの関係を教えてください。
MH 芸術は万能です。どこへでも行けるし、すべてがフラットです。
芸術は血でつながってはいません。
前の時代から、いつのまにか芸術のバトンを受け渡されるんですね。
今、ミレイヒロキはバトンを受け渡してもらっていて、
この時代の中で作品を創っているのです。

私たちの芸術活動において
いちばん重要なのは「LOVE」、愛を伝えるということです。
愛をアートで伝えるほど難しいことはありませんが、
これからも「LOVE」を追求していきます。

付録:ヒロキさんからの一言メッセージ


「戦後の闇市でいちばん売れたのは花だった」――。
日本人としての美意識を心に抱きながら、
ミレイヒロキさんは「LOVE&PEACE」を世界に向けて発信しています。
人間が存在する限り、芸術のバトンは永遠に受け渡されていくのでしょう。
次回も、お楽しみに!


                                おわり


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