2011/6/20 Release

アノヒトに聞きました

小川純子(おがわ・じゅんこ)
いて座。A型。1987年から雑誌編集に携わる。『ザテレビジョン』『ミセスザテレビジョン しってる?』『月刊ザテレビジョン』『ウォーカーキッズ』『DVDでーた』を経て、2010年3月より『花時間』編集長に就任。
花時間公式サイト「花時間 web garden」
エンターブレイン公式サイト


花の背景に「人」が透けているか。
そのことをいちばん大切にしています。


もともと花は好きだったのですか?

「ずっと『人』が好きで仕事を続けてきたので、
『花、やれるかな』と正直迷っていたんです。
自分の引き出しがここにはまったくないなって。」



「花時間」2011年夏号 価格1450円(税込)

ベテラン編集者の小川純子さんは、
テレビや映画などの情報誌をつくり続けてきました。
出会った「人」の魅力に触れ、
そこで感じた思いが誌面に反映される――。
それが小川さんの雑誌のつくり方。
知らなかった花の世界のお仕事を任されたとき、
その迷いの先にあったのは‥‥


編集部 編集部 小川さんは現在、『花時間』の編集長として活躍されています。
編集者としてのキャリアは何年になりますか。
小川 編集の仕事を始めてから、約20年です。
角川グループに入って最初に配属された
『ザテレビジョン』の編集部で、
さまざまなセクションを経験しました。
編集部 はじめて編集長を任されたのは?
小川 『ミセスザテレビジョン しってる?』という雑誌が最初でした。
当時たくさんあった、主婦向けHow To番組をメインに紹介して、
合わせて料理レシピや収納術、節約術などを特集する雑誌です。

編集者のときは自分がプロデュースしたページを、
読者や上司からほめてもらえることがうれしくて、
その言葉を目標に仕事をしてきました。
ですから「編集長をやれ」と言われたときはすごく困りました。
やはり編集者と編集長では職種が違っていて、
なにを目標にすればいいのかわからなくなってしまった感じで。
編集部 違いましたか。
小川 はい。まったく違いましたね。
その雑誌が世に出ることに対して
それこそすべての責任を負うという仕事ですから。
編集長になりたてのころは、
ほんとうにストレスでハゲちゃいそうなくらい(笑)。

どうすれば売れるんだろうということを
四六時中考えている。
ミセス誌だったので町を歩いていても
奥さんの会話ばっかり耳に入ってくるんですよ。
「本屋さんに行くのが怖い」という時期もあって。
本屋さんに行くと自分の雑誌が並んでいる。
その減り具合が気になって仕方がないわけです。
編集部 平積みの山が高かったり、低かったり。
小川 それでね、同時期に編集長になった人と話してみたら、
まったく同じ悩みを抱えていたんです。
「編集長の悩みは、編集長にしかわからない」と、
苦しみを分かち合い、励まし合って、
ようやくここまでやってきたという感じでしょうか。
編集部 『花時間』の編集長になられて1年ということですが、
季刊誌ならではの難しさってありますか。
小川 まず、誌面からほんとうに季節感を出さなければなりません。
さらに、2010年の夏と2011年の夏が同じではだめで、
今年の花の新しいトレンドも伝えなければなりません。
バラひとつ取っても新種が毎年たくさん出てきますし、
フラワーアレンジメントの先生方の提案も変わります。
それを追いかけ続けるのは、大変と言えば大変です。
編集部 発売のどれくらい前から、
企画は立ち上がっているのでしょうか。
小川 1年以上前からですね。
編集部 1年! ‥‥そうか、季節のものだから撮影しておかないと
なくなってしまう花もあるということですか?
小川 今年のトレンドを伝えることと矛盾するようですが、
どうしても1年前の同じ季節に撮影しておく必要がある花も、
中にはありますから。
編集部 じゃあ今は、来年の夏のことを考えているのですか。
小川 そうそう。ヒマワリ、ヒマワリ(笑)。
himawari
編集部 テレビなど芸能やメディアの情報を伝える仕事から、
畑違いの花の世界へ移られたわけですが、
もともと花は好きだったのですか。
小川 実は私、花のことをまったく知らなかったんです。
『花時間』を担当することになって
「自分の引き出しがここにはまったくないんですけど、
どうしましょう」と。

前任の編集長が長年『花時間』をつくってきた方で
プレッシャーもあったのですが、
「まっさらな気持ちで『花時間』と向き合ってほしい。
だから君にお願いしたんだ」と上司から言われて。
ベテラン編集者としての引き出しを花に向けてみよう!
そんなふうにポジティブに受け止めることにしました。
編集部 今までの『花時間』を変えてやろう、
という気持ちはありますか。
小川 いえいえ、そんなおこがましいことは‥‥。
ただもちろん、編集部には花の世界のキャリアを持つ
頼れるスタッフたちがいて、
どういう『花時間』にしていくべきなのか、論議を重ねてきました。

これまでそれぞれの媒体で、
私は編集者として「人」を切り取ってやってきました。
そして『花時間』でも、
「フラワーアレンジメントを通じて『人』が透けているか」
をいちばん大切なことにしていきたいと思いました。

ひとつの花が活けられるまでを物語にして、
文脈や写真で伝わるようにしなければならない。
そのために花の背景にいる「人」の部分を
これまで以上にたくさん出していこうと考えています。
編集部 常に「人」がお仕事のベースにあるのですね。
小川 ある植物学の先生にかけていただいた言葉も大きいですね。
ずっと「人」が好きで仕事を続けてきたので、
「花、やれるかな」と正直迷っていたんです。
そうしたらその先生が
「だいじょうぶ。花が好きな人は、間違いなく人が好きだよ」
とおっしゃってくださって。
「フラワーアレンジメントを通じて、人が透けて見えるから」
と言われて、ああ、確かにそうだなと気づかされたんですね。

生産者さんも、花屋さんも、フラワーアレンジメントの先生も
それぞれ花に思いを込めて仕事をされている「人」です。
その人たちからその思いを引き出せばいいんだって。
編集部 そうした編集方針が活かされている、
象徴的な企画を教えていただけますか。
小川 最新の夏号(2011年6月7日発売)では、
いけばな草月流4代目家元、
勅使河原茜さんにご登場いただいています。
今年、家元襲名10年という節目を迎えられ、
花に向かいあってきた思いや、
創始者である勅使河原蒼風さんのいけばなについて、
あらためて語っていただきました。

土門拳さんが撮られた勅使河原蒼風さんによる作品の写真、
イサム・ノグチさんが創られた
草月会館の石庭で撮影した写真があったりと、
草月流の歴史までを辿った、奥深い内容になっています。
雑誌「花時間」と書籍「花図鑑」
編集部 FADA(*)とのコラボレーションで、
「これだけは知っておきたいフラワーアレンジ
基本百科 花図鑑&用語辞典」
をつくられましたね。
小川 『花時間』で出している『花屋さんの花図鑑』をベースにした、
FADAさんで勉強する人たちに向けた新しい花図鑑です。
写真を大きく見やすくしたのをはじめ、
花の用語集や基本的な技術も入っています。
これ1冊読めば、かなりの花博士になれると思いますよ。

それからね、教室の机の上でページを開いても閉じないように
本の綴じ方にも工夫を凝らしてみたんです。
編集部 ほんとだ!
これならレッスン中に見たいページを開きながら、
アレンジメントの作業もできますね。
FADAに期待するところを教えてください。
小川 新しい才能をどんどん発掘していってほしいですね。
未来に向けて、花の仕事に対する情熱を持って
レッスンに参加されている生徒さんが多いと思います。
FADAさんから出てくる才能あふれる方々が、
未来の『花時間』の誌面を飾るようになってください!
  (*)FADA:FLOWER アート&デザイン協会
付録:小川さんからの一言メッセージ

「人」との出会いとそこにある感動。
つくる媒体が変わっても、
信じるお仕事のベースがぶれることはありません。
小川さんのお話、後編もお楽しみに。



                                つづく

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