2011/4/20 Release

アノヒトに聞きました

浅葉克己(あさば・かつみ)
1940年神奈川県生まれ。桑沢デザイン研究所、ライトパブリシティを経て、1975年浅葉克己デザイン室を設立。サントリー「夢街道」、西武百貨店「おいしい生活」、武田薬品「アリナミンA」など、数々の広告を手がける。民主党ロゴマークを制作。日本アカデミー賞、紫綬褒章など受賞多数。卓球六段。2008年に21_21 DESIGN SIGHT「祈りの痕跡。」展を開催。同展の空間デザインと出品作品「浅葉克己日記」で2009年ADCグランプリを受賞。ICD国際カラーデザイン協会会長。
浅葉克己デザイン室ホームページはこちら


「アサバが参加していないパーティーは一流ではない」
という噂が出るくらい、
あらゆるパーティーに顔を出しています。


来る仕事は断らないのですか?

「僕は1回も断ったこと、ないんじゃないかな。
そのへんはすごく楽天的です。」


浅葉さん

編集部 浅葉さんは日々何時に寝て、何時に起きますか。
浅葉 僕は寝ないんですよ。寝ると負けるからね。
寝ないでがんばる。朝となく、夜となく。
編集部 眠らないくらい人生が楽しい?
浅葉 そうね。「書」を書いているとね、
あれもやらなきゃならない、これもやらなきゃならないと、
どんどんアイデアが出てきてしまうんです。
アートディレクションってけっこう組み合わせの仕事で、
「この人間とこの人間を合わせたら面白い」
というのは無限にありますから。
編集部 人と出会うコツはありますか。
浅葉 それはあらゆるパーティーに参加することでしょう。
パーティーってけっこう体力がいりますけど、
僕はありとあらゆるパーティーに参加してきました。
「アサバが参加していないパーティーは一流ではない」
という噂も出ているくらいでね。
30年間あらゆるパーティーに顔を出しているんじゃないかな。
展覧会、個展のパーティーに足を運ぶのもまた、体力勝負ですよ。
編集部 インターネットはツールとしてよく使いますか。
浅葉 使いますが、インターネットは
これからもっとやらなければならないと思っています。
インターネットからは「ノイズ」を感じます。
ツイッターをやっている若い人がいっぱいいますよね。
満開の桜の下で宴会をやるじゃないですか。
そうすると誰かがツイッターで「浅葉克己がいるよ」とかね。
編集部 発見されてしまう(笑)。
ノイズから受けるインスピレーションもありますよね。
浅葉 それはやっぱりありますよね。
ところで中国では携帯電話の普及スピードがすごく速かった。
と言うのも、あそこは噂の国なんですね。
ツイッターがない時代でもなにかが起こると
1日の間に国民の1/4くらいに伝わってしまうんです。
4日もあればもう全員が知っている。
噂のスピードがすごく速いんですよね。
だから中国人は、
携帯がうれしくてしょうがないんじゃないですかね。
編集部 携帯で、国民的井戸端会議が始まるわけですね。
浅葉 そう言えば、ニュージーランドの男の人たちは
井戸端会議が長いって知っていますか?
仕事があるのに、すぐに井戸端会議が始まっちゃう。
こっちが「早く行こうよ」と急かしても、
「無理だよ。もう井戸端会議が始まっちゃったから」とか言って。
欲がなくてとてもいい人たちなのですが、不思議の国です。
浅葉さん
編集部 仕事の厳しさというものを、
どのようにとらえて進んでいけばいいのでしょうか。
浅葉 仕事に厳しさって、あまり感じたことがないです。
「じゃあ、やろうね」「じゃあ、行こうね」みたいな感じで
いつも始まっちゃう。
編集部 来る仕事は断らないというスタンスですか。
浅葉 断らない。 先輩に伊坂芳太郎さんという
天才的なイラストレーターがいらして、
「浅葉くん、仕事は断っちゃ駄目だよ」と教えてくれました。
「向こうの人もすごく選んで、仕事をくれるわけだから」と。
だから僕は1回も断ったこと、ないんじゃないかな。
そのへんはすごく楽天的です。

世界をまわっていると面白いんですよね。
もちろんそれぞれ目的の仕事があるわけですが、
その前後左右には、別のいろいろなものが転がっているから。
編集部 これからの時代、
デザインはどのような役割を果たしていくと思いますか。
浅葉 デザインはずいぶんと国際交流に役立っていると思います。
今、香港、台湾、マカオ、中国、日本と、
漢字を持つ国と地域を「書」で結ぼうという
活動を進めているところです。
書道を英語にすると「インク・アンド・デザイン」と言うんですよ。
ちょっとかっこいいでしょう?
インク・アンド・デザインを核にしてアジアを結んじゃう。

僕が日本の代表を務めているAGI(国際グラフィック連盟)には、
世界中のデザイナーが集まっています。
国によってまったく違うことを考えているデザイナーがいて、
「お前、なにを考えているんだよ!」という感じで驚かされるのは
すごく面白いですよね
浅葉さん
編集部 子どものころから続けられている
卓球の魅力を教えてください。
浅葉 「来たものを打てばいい」というところ。
編集部 (笑)。
浅葉 余計なことをしなくていいですから。
でもね、それが人生と同じで実は難しい。
東京キングコングという卓球チームを作って、
もう36年になります。
今は「ひとりピンポン外交」の活動をずっとやっていて。
新潟県の長岡では、雪の中の卓球大会をやりました。
編集部 カラフルな卓球台やピンポン玉も、
浅葉さんのアイデアから生まれたとか。
浅葉 卓球台をブルーにして、
ブルーに合う色はイエローでしょうということでね。
公式球は白か黄色の2色になったんですよ
編集部 テレビで観ていても、
色によって卓球の印象がずいぶんと変わったと感じます。
ところで浅葉さんの好きな色はなんですか。
浅葉 僕はブルーが好きです。
それは「冬の海の色」なんです。
金沢文庫から京浜急行に乗っていると、
枯れた山の向こうに海が見える。その色がものすごく好きでね。
濃いブルーとベージュの組み合わせが好きです。
浅葉さんの作業デスクにあった青色の色鉛筆
編集部 仕事における色との関わりについて教えてください。
浅葉 僕は色を大事にします。
あまり多くを使わず、効果的に使うのが昔から好きです。
モノクロの中にぱっとあるような。
色でごまかさない。
色をいっぱい使えばきれいに見えちゃうけど、
そうではなくて色をすごく大切に使って、
「色を効かせる」というのが好きなんですよね。
たとえば書でも、
赤がぽんとあるだけで決まっちゃうでしょう?
赤がないとつまらない。つるっとしちゃう。
編集部 国際カラーデザイン協会の認定証も、素敵なデザインですね。
浅葉 級によって2色の組み合わせで表現されていて、
パターンは無限にあります。
そう言えば、イベントで指揮者もよくやったけど、
僕は音符が読めないから
色で表現した譜面をつくったこともありました。
編集部 子どものころに見た色、若いころに見た色、
キャリアを積んでから見た色。
それぞれに印象は変わってきましたか。
浅葉 それはありますよね。
いろいろな国に行くようになって、
国によって全部色が違うんですよね。
ニューヨークにはなんとなくニューヨークっぽい色があるし、
イタリアに行けばイタリアの色があるし。パリへ行ってもあるし。
やはり都市の色ってあるんですね。不思議ですよね。
それを感じるのがけっこう気持ちいいです。
編集部 赤のスニーカーをよく履かれているイメージがありますが、
験を担がれていたりするのでしょうか。
浅葉 あれはね、僕がやってきた仕事では、
赤いキャップの商品が多かったんですね。
それで「赤ってやっぱり強いな」と思って。
北極でウイスキーの瓶の撮影をする。
ぽっと置くと、赤がぱっと目立つしね。「ああ、いいな」と思って。
赤い靴を履くと元気が出ると言うので、全部赤い靴になっちゃった。
葬式のとき困るなと思って。赤い靴はさすがに履いていけないからさ。
だから一足は黒い靴を持っています。
浅葉さん
編集部 最後に、キャリアアップを目指して学んでいる女性たちに
メッセージをお願いします。
浅葉 80年代に入るちょっと前、1979年ですか、
「女の時代」という西武百貨店の広告を手がけました。
そして今、ほんとうにそういう時代になったと実感しています。
女性の持つパワーはすごいし、やっぱり強いですよね。
みなさんもぜひ、がんばってほしいと思います。
編集部 刺激的なお話の数々をお聞かせいただきました。
どうもありがとうございました。

「来たものを打てばいい。だけどそれが一番難しい」、
来るものを拒まず、新しい地平を広げ続けること。
デザインによる国際交流のかたちを創出する浅葉さんに、
クリエイティブな生き方について学ばせていただきました。


次回も、お楽しみに!

                                おわり


●お知らせ
カラーデザイン検定 浅葉さんが会長をつとめるICD国際カラーデザイン協会が実施している
「第四回カラーデザイン検定」の受験申込み受付中!
合格者には浅葉さんデザインの認定証が授与されます。

カラーデザイン検定 試験日:2011年7月3日(日)
受験申込み期間:2011年4月11日(月)〜5月24日(火)
実施級:2級 / 3級
合格発表:2011年8月19日(金)
カラーデザイン検定とは?
世界標準のカラーシステム「PANTONER」に準拠。現役クリエイター達が愛用する「PANTONER」で学ぶことによって、仕事に直結するスキルの証明となるだけでなく、学んだ内容が即座に現場で応用可能な検定試験。


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